平和な日常~春~

それから数日が過ぎて春休みが終わりを告げると、麻帆良の街は再び登校する生徒達の活気で溢れる朝を迎えることになる

春休み中は木乃香達で賑やかだった店も、彼女達の学校が始まると静かなものだった


「やっぱ客が来ないな」

客のほとんどが木乃香の知り合いの学生か占いで知り合った女子高生なため、学校が始まると途端に暇になっている

朝の時間はまだサラリーマンや近所の人が朝食を求めて来たからいいが、朝の時間を過ぎると客がゼロになっていた


「お札でも作るか」

暇な時間をどうするか悩む横島だったが、特にやる事が浮かばない

庭の手入れは必要なのだが、さすがに店内を空にする訳にもいかなかった

まあ横島の場合は庭に居ても客が来たかどうか分かるのだが、客商売として店内を空にするのもどうかと思うのだ

結局横島はお札の制作をして暇を潰す事にする


(霊能力が使われてない世界だなんてな……)

この世界に来て約一ヶ月だが、霊能力が使われてない世界に横島は複雑な思いだった


ここで少し説明すると、霊力とは魂の力である

それはこの世界でも変わりないのだが、霊力を直接扱う技術はほぼ途絶えたようであった

そして変わりにこの世界では《気》と《魔力》を扱う技術が横島の世界と比べて発達している

《霊力》と《気》の関係だが、根本では同じ力であり《霊力》は魂の力をそのまま使うのに対して、《気》は魂の力を肉体を通して使うのだ

次に《魔力》に関してだが、そもそも《魔力》とはこの次元の地球や宇宙の生命以外の生命力を《魔力》と呼ぶ

《霊力》と《気》が基本的な技術の違いがあるのに対して、《霊力》と《魔力》は基本的には呼び方が違うだけである

横島の世界にも大気や大地の霊力(魔力)を扱う技術はあるし、霊能者や神魔などは《魔力》が使えるし魔力により霊力を回復したりしていた


そして横島の魂の力についてだが、現時点では人・妖怪・神族・魔族の四種類の魂の力を使える

これらは全て魂からくる霊力に変わりはないが、質が全く違う力であり同じ力ではない

次に万物の生命力たる《魔力》は横島も使えるが、肉体を通した力である《気》は使えない

これは純粋に今の横島が肉体を持たない霊的生命体な為である


もう少し詳しく説明すると、人間界と魔界と神界もまた万物の生命力である《魔力》の質が違う

人間や妖怪は人間界の魔力がない世界では基本的には生きていけず、神魔もまた神魔それぞれの世界の魔力がなければ生きていけない

横島の世界では神魔の拠点より神魔両界から膨大な魔力が送られていた為、人間界で神魔は活動が出来たのだ

しかし人間界では神界と魔界の魔力濃度が薄いため、神魔がそれぞれに本来あるべき力の僅かしか使えない

なお人間界の魔力でも神魔は生命維持が可能だが、地球上は魔力濃度が低く神魔が生命維持する最低限の魔力が足りないのである


次にこの世界に関してだが、神界と魔界の《魔力》はゼロではないが横島の世界より更に薄く最低限しかない

従って同じ力を持つ神魔が居るとしても、この世界では横島の世界より更に実力を発揮出来なかった

横島に関しては実はこちらも複雑で、生命維持に人間界と神界と魔界の三種の魔力が必要となる

この世界は人間界の魔力はともかく神魔界の魔力が極端に薄いため、横島には常に異空間アジトより三種類の魔力が供給されている

横島は現在神魔妖人の複合生命体と言える存在なため、異空間アジトと土偶羅のバックアップが無ければ生命維持すら出来ない存在である


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