平和な日常~夏~2

そんな図書館探検も夜が明ける頃になると調査を終了し帰ることになるが、先程まで元気だったタマモも流石に限界だったのか眠っていた。


「流石に寝ちゃいましたね」

「夜更かしなんて始めてだからな」

荷物を纏めて帰り始める一同だったが、タマモは横島がおんぶして帰っている。

来る時は食べ物や飲み物などがあったので横島もリュックに荷物を背負っていたが、現在はタマモを背負うためにリュックはハルナに持ってもらっていた。

中身の荷物は木乃香達がそれぞれに分担して持っているが、実際ロープなどしかなく荷物が特に多い訳ではない。

ちなみに当然横島は荷物とタマモを一人で持っても余裕なのでそのつもりだったのだが、木乃香達が自発的に手伝ってくれたのである。


「そうやって見ると普通の子と変わらないわね」

「普通のって……」

「いい子過ぎるって、最近も話題になってたのよ。 初めの頃人とか見知りだったみたいだし……」

そのまま静かな寝息をたてるタマモを背負った横島と木乃香達は来た道を戻り地上に向かうが、ハルナは眠ってるタマモを見てようやく普通の子供なのだと感じたらしい。

木乃香達などのおかげで割と早く人に馴染んだタマモだが、最初の頃の人見知りな様子や横島が居ないと不安そうになった表情からいろいろ話題になっていたらしいのだ。

最近でもいい子だと評価する人は多いが、逆にいい子過ぎてよほど辛い過去だったのだろうと噂が広がっていたようである。


「優しい子なのですよ。 私達がテスト勉強をしていた時もずっと心配そうにしてましたから」

「あのアスナが仲良くなってるんやから凄い子なんや」

まあ様々な噂があるのは横島やタマモのみならず当然のことだが、タマモと親しい木乃香達は噂ほど辛い過去はないだろうと感じていた。

何よりタマモは本当に優しかったのだから……。

実際は木乃香達が優しく接した為にタマモが優しくなったのだが、木乃香達から見るとタマモは元々優しい子だったと感じるらしい。


「そういやアスナちゃん子供嫌いなんだっけか」

あの子供嫌いを自認していた明日菜が仲良くなった子供として、明日菜を知る者の間ではタマモがちょっとした話題になったりもしてるようである。

まあ最も明日菜の子供嫌いや年上が好みなことは、過去や記憶の絡みもあるので現状では横島でさえどこまでが本心かは不明だったが。


(封印された記憶か……)

タマモから明日菜の話題に変わり何故か盛り上がる木乃香達の話を聞きながらも、横島はふと封印された記憶のことを思い出してしまう。

それが正しいのか間違いなのかは横島には分からないし、はっきり言えば仕方なかったことも理解している。


(世界は救えなかったが、一人の女の子は救ったのかもな)

横島も普段はあまり考えないようにしているが、明日菜は赤き翼の面々が命を懸けて守って来た存在なのだ。

赤き翼の大戦以降の行動は必ずしも正しいとは横島には思えないが、それでも彼らが命を懸けて一人の女の子を守りきったことは素直に尊敬する部分だった。


(未来に託した想いか……)

正直横島は赤き翼の面々にあまりいいイメージがない。

だが彼らが何を想い戦い、未来に希望を託したかは理解してるつもりだった。

しかし現状の魔法世界を見ると必ずしも彼らの想いは世界に伝わってない。

横島は一人やるせない気持ちを心に秘めたまま木乃香達の話に加わっていく。


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