スケールの違う麻帆良の街に改めて圧倒されていた横島だったが、木乃香と明日菜に着いていくように出店やイベントを見物していく

途中出店でタコ焼きやクレープなどを買い食いをしながら歩くが、横島にとってそれは懐かしくもあり新鮮でもあった

花見や夏祭りで楽しんだかつての記憶は今でも鮮明に思い出せるが、それは遥か昔の事なのだから

楽しく幸せな時間は、横島に過ぎ去りし過去を思い出させるには十分だった



「やあ、アスナ君と木乃香君じゃないか。　花見かい？」

横島達が世界樹前広場に差し掛かる頃、一人の男性が明日菜と木乃香を呼び止めていた


「あっ！　はい、高畑先生も花見に来たんですか？」

「僕は見回りだよ。　たまにハメを外し過ぎちゃう子達が居るからね」

現れた男性は明日菜達の担任である高畑・Ｔ・タカミチである

突然の高畑に声をかけられた明日菜は、緊張でガチガチになりながらも笑顔を作って答えていく

その豹変ぶりに横島は明日菜の好きな相手が高畑なのだと悟る


「高畑先生はウチらの担任で、アスナの好きな人なんよ」

木乃香囁くように高畑の事を横島に教えるが、どうやら明日菜と高畑の邪魔をしないようにと考えてるらしい


「えっと、君は……？」

「横島忠夫です。　最近麻帆良に喫茶店を開いたんで、よかったらいらして下さい」

「僕は中等部で教師をしてる高畑・Ｔ・タカミチ。　そういえば君は宝くじが当たった占い師だね」

明日菜の為にと一歩引いている木乃香と一緒に居る横島に気付いた高畑から声をかけて、二人は軽く自己紹介するが実は横島も高畑も相手を知っている

横島は麻帆良の重要人物としての情報を得ており、高畑もまた横島を調べた一人であった

互いにそのような裏側を隠したままの挨拶である


「ええ、運がよかったですよ。　おかげで人並みの生活が出来そうです」

「よかったら先生も一緒にウチらと花見しませんか？」

挨拶のままに横島と軽く話す高畑に木乃香は一緒に花見を誘うが、見回りがあるからと断られてしまう

麻帆良学園の広域指導員でもある高畑は、流石にまつり期間はゆっくりしてられないらしい


（あれがここの世界では最強の部類の人間なんだな。　たいしたもんだ。　雪之丞の全盛期といい勝負か？）

高畑と別れた横島はその力量に驚きを感じている

それは神魔戦争初期に、人としての限界に挑んだ雪之丞といい勝負をする気がしたからだ

ただの憶測だしそれほど深く考えた結論ではないが、かなり実戦経験を積んでるのはわかるし敵対するなら決して油断できる相手ではなかった


「残念やったね～」

「突然高畑先生を誘わないでよ！　ビックリするじゃない！」

一方気を効かせて高畑を誘った木乃香は残念そうだが、明日菜は残念なようなホッとしたような複雑な表情である

高畑と一緒に花見をしたかったのはあるのだろうが、実際一緒に居ると緊張してしまうのだから


「確かに残念だったな。　一緒に来たら俺と木乃香ちゃんがはぐれて、二人っきりにしてやれたんだが」

「そうや。　ウチもそのつもりだったんえ～　もうちょっとやったのに～」

「ちょっと二人とも！　ってかなんで横島さんに高畑先生の事バレてるの！？」

木乃香の話に乗るように話を被せた横島だが、木乃香は始めからそれを狙っていたらしい

妙に息の合う横島と木乃香に明日菜は顔を赤くしながら抗議していた