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横島君のお店開店

三月も残り僅かとなったこの日、麻帆良では桜まつりが行われていた

世界樹前広場をメイン会場に桜が咲いてる複数の公園などで、出店やらイベントやらを行う麻帆良の春まつりである

麻帆良祭ほど規模は大きくないし派手でもないが、お祭り騒ぎの好きな麻帆良では春で一番大きなイベントとなっていた


「花見なんて何年ぶりだろうな~」

この日横島は、滅多に着ないようなカジュアルな服を着て街を歩いている

トレードマークのバンダナも服装に似合わないため外した姿は、横島らしくないほど普通にオシャレした姿だった


「うわっ!? 普通の服も持ってたんですね。 私てっきりいつものジーンズで来るものだと……」

「ほんまや。 ちょっと見違えたわ~」

近くの駅前に到着した横島を待っていたのは、こちらもいつもよりオシャレした明日菜と木乃香である

横島は昨日二人に桜まつりの見物を誘われたため、店を休みにして来たのだ


「いや~、流石に俺でも女の子に誘われてあの服装で来るほどバカじゃないわ~」

横島としては女の子に誘われた以上は最低限のオシャレはするのは当然だと思うのだが、二人にとっては予想外だったらしく驚き目を見開いている


「元はそんなに悪くないのよね。 美形じゃないけど二枚目には入りそうだし…… もしかして女ったらし?」

「そういえば、占いのお客さんの女の子と仲良くなるの早いな~」

生活感の欠如と行き当たりばったりの行動から、いい人だけどどっか変というイメージを先行さていた明日菜と木乃香は、横島の常識的な一面に驚きを隠せずコソコソと内緒話をしていた

態度や仕草が三枚目な横島は軽い調子からもあまり二枚目には感じなかったが、元々顔立ちは悪くないのだ

オシャレをして来た横島に意外と女ったらしなのかと疑問が浮かぶ



「賑やかだな~」

その後はとりあえず世界樹前広場の方に移動する三人だったが、世界樹前広場の付近は歩行者天国になって出店やイベントで混雑している


「うちの学校お金稼ぐの認めてるから、まつりのたびにイベントやら屋台を出す部活やサークル多いのよねー」

「超包子も同じなんよ。 超りんがお料理研究会と一緒にお店を出してるんや」

賑やかな露店や屋台を見ながら明日菜と木乃香は麻帆良のまつりの仕組みを説明していくが、出店やイベントの大半が生徒の独自の活動だという事実には横島も驚きを隠せない


「スゲーな。 花見と無関係なイベントが多いけど、こんだけ賑やかな桜まつりも珍しいよ」

世界樹前広場や歩行者天国の部分では出店以外にも各サークルのイベントが多く、それらの勧誘もまた多かった

時期が時期なだけに新規のメンバーの勧誘が盛んなようである


「そうなん? 麻帆良祭と違って春は規模が小さいんよ」

「はっ!?」

「麻帆良で一番大きなお祭りなんやけど、麻帆良学園の全校合同の文化祭なんや。 街一つがおっきなテーマパークみたいになるんよ」

他の桜まつりとは比べものにならないほど賑やかなのに、麻帆良では規模が小さい祭りだと聞き流石に横島も固まってしまう


「確かに桜まつりくらいだとよくやってるわよねー みんななんでもお祭りにしちゃうんだから」

驚き固まる横島に明日菜は苦笑いを浮かべて、麻帆良では割とよくある祭りだと告げる

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