平和な日常~夏~

一方の横島だが、結局その日はあまり客が来ないまま夕方を迎えていた

まあ近所の住人なんかは割と来るが、いつもの休日に来る学生はほとんど来なかったのだ

流石に麻帆良祭の翌日に喫茶店に来ようとは思わないのだろう

そんなもうすぐ日が暮れる頃、運送屋が明日菜がゲットした洗濯機を運んで来るのだが横島が知らない荷物が一緒に届いていた


「なんだこのソファーは……」

運ばれて来たのは真新しいソファーとテーブルの応接セットである

横島は帰り支度する運送屋に間違いかと確認するが、間違いなく住所は横島宅であり送り主はなんと茶々丸だった

運送屋は送り主が友人ならば問題ないからと帰ってしまい、横島は急遽茶々丸に連絡するのだが……


「ご迷惑でしたか? 実は麻帆良祭で頂いたのですが、マスターは色が気に入らないからと…… 以前に家具がないと聞きましたので勝手ながら送らせて頂きました」

横島が連絡すると茶々丸は直接説明に来たが、どうやら茶々丸が誰からか貰った物らしい

当初はエヴァの自宅に置こうかと考えたようだが、色が黒でエヴァが趣味じゃないからと拒否したようである

せっかくの貰い物を捨てる訳にもいかずに悩んだ茶々丸は、以前横島宅には家具がないと聞いたのを思い出して横島に譲ろうと考えたとのことだ


「いや、ありがたいんだけど事前に言ってくれればよかったのに」

「昨夜お話しようかと思ったのですがお忙しいようでしたので」

茶々丸がビックリさせようとサプライズでもしたのかと考える横島だったが、どうも話すタイミングが無かっただけらしい

昨夜のどんちゃん騒ぎで言うタイミングを逃してしまい、今日は休みに電話をするのは悪いと思い連絡出来なかったようだ


「じゃあ、貰っていいんか?」

「はい、お願いします」

茶々丸は意外に天然かと少し首を傾げる横島だったが、結局ソファーとテーブルは横島が貰うことになる

何か最近気味が悪いほど運がいいと横島自身でも不思議なほどなのだが、実は現在の横島は運に左右される存在ではない

そもそも魂の格が人間と全く違う横島は自身の運に左右されたというよりは、横島の影響を受けた少女達の運の影響を受けたと見るべきだろう

横島の影響で幸運を受けた少女達のおこぼれを貰ってるようなものなのだ

まあ横島は他者に影響を与えるのを嫌い能力もほとんど使ってないが、それでも横島が居るだけで運命が変わりつつある少女達が居るところを見ると少なからず影響はあるらしい

魂の存在感の桁が違うと言えばそれまでだが、元々何もしなくても周囲に影響を与えるのは昔からであり今もそれが変わらないだけなのかもしれないが


結局今の横島が平和な世界でどうなのか、横島自身もよく分からない部分が多い

ただ一つ言えるのは横島が新しい世界の一部として受け入れられてるということだろう

それは力や能力ではなく平穏を求める横島の心が受け入れられた理由なのかもしれない



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