麻帆良祭

麻帆良祭三日目の朝も雲一つない青空だった

雨が多い季節のはずの麻帆良祭だが、何故かこの三日目に雨が降った記録はない

麻帆良の人々は世界樹の加護だと言うが……


さてそんな三日目の横島は、いつもと同じように庭にいる猫達にご飯をあげることから始まる

麻帆良祭の影響で普段より多いのら猫達が庭に避難しているが、横島は彼らがケンカしないように言いつつご飯を配っていく

ついでに怪我や病気の猫が居ないか確認していくのだが、例によって端から見ると猫に遊ばれてるようにしか見えなかった

そんな朝の日課を終えると仮設店舗に向かい最後の仕込みをするが、この作業も今日で最後だと思うと少し寂しい気もしてしまう


「今日で終わりなのね」

「せっかく儲かってるのに……」

なんとなく寂しい気持ちがするのは横島だけでなく少女達も同じだった

苦労も多かったがその分売り上げとやり甲斐は去年の比較にならない

まあ中にはもう少しやればもっと儲かるのにと単純に収入を計算して残念がる者も多いが


「そういえば、麻帆良祭が終わったら限定メニュー終わりなの? よく聞かれるんだけど……」

僅かにしんみりとしかけた厨房をあえて空気を変えるように、報道部の朝倉和美は麻帆良祭後のことを口にしていた

実は麻帆良祭が始まった頃から、麻帆良祭後のことを尋ねられることが多かったらしい

2-Aのクラスメートであり報道部でもある朝倉の元には、少なくない問い合わせが行ってるようである


「なんで俺を見るんだ? 超包子と雪広グループで提供したらいいだろ」

話が麻帆良祭後に及ぶと少女達は一斉に横島を見るが、視線を集めた横島はさも当然のように超包子と雪広グループに丸投げしてしまう


「新作メニューはほとんどマスターのレシピだったはずヨ」

自分は全く関係ないといいたげな横島に少女達は何故か微妙に疲れたような空気になるが、超鈴音は単刀直入に新作メニューの権利は横島にあると告げて少女達はそうだと言わんばかりに頷く


「確かに俺が考えはしたけど、ほとんどよくあるレシピのアレンジだしな。 超包子と雪広グループで必要なら使っていいよ。 香辛料も必要ならレシピ渡すしな」

木乃香達は知っていることだが、横島は自分で売るつもりはなく全て超包子と雪広グループに任せるつもりである

現状でもカレーの詳しい香辛料やポテトの特製調味料などは横島しか知らないが、横島はそれしらも超包子と雪広グループに教えるつもりだったのだ


「しかし……」

横島はたいした物じゃないという感じだが、現状の話題性を考えればそれなりに収入源になることは確かである

麻帆良祭後に関しては雪広グループ側から交渉したいと頼まれているあやかも、流石にあまりにいい加減な横島に困惑してしまう


「こんな人なのですよ。 これ以上目立って麻帆良祭後に忙しくなり過ぎるのが嫌なのです」

「そういうことだから、後は任せた!」

あやかのみならず超や朝倉など良識のある者は横島の考えに判断を迷い木乃香や夕映達をみるが、夕映が横島の本音を代弁すると横島本人はそれを肯定して話を終わらせてしまった

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