麻帆良祭

食後に歩行者天国を軽く見て帰宅した横島だったが、屋台で買って来たやきとりを肴にビールを飲み始めていた

目の前ではさよがテレビを見てはしゃいでるが、相変わらず床に置かれたテレビな為に少し見にくそうである


「この部屋もそろそろ家具そろえなきゃあかんな」

「やっぱりちょっと寂しいですよね。 ソファーとか大きなテーブルとかあったらいいですよ!」

元々一人暮らしな為に横島本人はあまり気にしなかったが、毎日床に置かれたテレビを見るさよの姿は少しせつないものがあった

一方のさよだがあまりに殺風景な横島の部屋に、少し寂しく感じて微妙に気になっていたらしい

横島が家具の話を持ち出すとあれこれと必要な家具を口にしていく


「正直この家って広すぎるんだよな。 俺の場合一人なら六畳一間で十分だからさ」

一階の店を気に入って借りた家なのだが、正直二階と三階の住居部分は広すぎて使ってない部屋が多かった

部屋の掃除は定期的ハニワ兵に頼んでおり、横島は何にもしてない


「ああ、部屋空いてるからさよちゃん使いたかったら使ってもいいぞ」

「えっ……、でも私幽霊ですし……」

家具の話からついでにさよの部屋をと言い出す横島だったが、当のさよは少し困惑していた

自分の部屋という物が欲しくないかと言われると欲しい気もするが、そもそも幽霊の自分が部屋を使うかは疑問だったらしい


「プライベートな部屋は欲しいだろ。 どうせ空き部屋で使う予定もないしな。 麻帆良祭が終わったら最低限の家具なんかを揃えてやるよ」

さよは迷ったままだったが、横島は半ば強引にさよの部屋を用意する事を決める

現状では確かに必要ない部屋だが、将来的にはさよに身体を与え友達を増やしてやる事も考えていた

魔法協会との問題さえ解決すれば、横島の親戚にでもしてここに引っ越して来たことにすれば友達は増やせるのだ


(どちらにしろ長い付き合いになるだろうしな。 プライベートルームは必要になる)

二人に共通した点は寿命がないことだろう

さよの身体に関してはまだ何とも言えないため秘密にしてるが、それでもいずれプライベートルームは必ず必要になるはずだった


「本当にいいんですか?」

「そういえばさよちゃんは三階には行ったことなかったか。 部屋は二階だけじゃなく三階も空いてるんだよ」

半ば強引に決めた横島に対しさよは申し訳ないような気持ちであったが、部屋はまだまだ空いてるため全く問題はない


「なんでそんなに広い家を借りたんですか?」

「一階の店と建物が気に入ったから借りたんだよ。 庭も広い割には安かったからな。 ぶっちゃけ二階と三階はどうでもよかった」

相変わらずの調子で笑って部屋はたくさん余ってると言う横島だが、さよはそもそも何故一人でこんな家を借りたかずっと不思議に感じてたらしい

しかし横島はそこまで深く考えた訳ではなく、狭いよりは広い方が楽だろうと安易に考えていただけだった

お金に不自由しないだけにあまり深く考える必要がなかったとも言えるが……


「お家は考えて借りなきゃダメです!」

あまりにいい加減に見える横島にさよが思わずそれじゃダメだと感じてお説教を始めるが、横島は何故か楽しそうである

何はともあれ横島宅の夜はそうして更けてゆく



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