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麻帆良祭

「うん、美味い」

とりあえず飲み物を頼み乾杯したのだが、横島はワインを頼んで一気にグラスの半分以上を飲んでいた

普通の安いワインだったが、横島は特に気にした様子もなく美味しそうに飲んでいる


「本当に美味しそうに飲むわね」

「こういう姿は大人なんだと実感しますわ」

優雅さのカケラもない飲み方だったが、見てる方が食欲をそそるような飲みっぷりだった

千鶴とあやかはそんな姿の横島を見て、やはり大人なのだと改めて感じる

日頃の横島はどうしても高校生かよくて大学生にしか見えない態度なだけに、珍しく大人らしい姿だと言えよう


「ねえ、なんか思ってたより普通じゃない?」

そのままおしゃべりをしながら料理を待っていたのだが、運ばれて来た料理を食べた明日菜は僅かに微妙そうな表情で首を傾げていた

どうやら繁華街の目立つ場所のオシャレな店で、評判だと言っていた割には味が普通だと感じたようだ


「平均よりは上の味ヨ。 明日菜サンは意外と味にシビアだったみたいネ」

「そうですわね。 値段もお手頃ですしいい方かと」

明日菜の感想を聞き超とあやかも感想を述べるが、値段と味を考えれば割といい店だとの意見である

味に煩い千鶴や五月も同意しているが、意外にも木乃香や夕映やのどかは割と明日菜と同意見なようだった


「横島さんや超包子と比べるのは流石に可哀相ですわ。 明日菜さん達が普段気軽に食べてる物も喫茶店のレベルではないですし」

明日菜達の違和感の理由を察したあやかが苦笑いを浮かべて比べるのは間違いだと告げると、明日菜達は納得したように横島に視線を向ける

あまり自覚はなかったらしいが、彼女達の外食の基準がいつの間にか横島になっていたらしい

何か物足りないと感じたのも普段を考えれば仕方ないことだった


「うちはただの喫茶店だよ。 そもそも俺は料理人だなんて外で名乗ったことは一度もないしな」

あやかや超が持ち上げるというか真実を暴露することに、横島は笑顔でただの喫茶店だと言い張るが誰ひとりとして信じてなかったりする

そもそも横島は一体何者なのだろうと疑問がみんなに浮かぶが、横島はその間も明日菜達が微妙だと感じた料理をガツガツと美味しそうに食ておりそんな姿に疑いも薄れていく

確かに横島は凄い部分も多いが、それ以上に隙や欠点も多く見えていた

秘密の一つや二つはありそうだが、案外たいした秘密でないような雰囲気なのは横島の本来の性質からだろう

結局横島は凄いけど成功しない典型的な人間にしか見えなかった


「おっ、このソース面白いな。 今度真似してみようかな」

「いい加減なように見えて、相変わらず料理に関しては油断も隙もない人ネ」

ガツガツと食べていたかと思うと、突然一つの料理のソースが気になると言い出して真似しようと笑っている

そんな横島の姿に超も笑っているが、心の何処かで言葉にならない不安を僅かに感じていた


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