麻帆良祭

さて次の日になりプレオープン二日目だが、横島はこの日も夜明けと共に活動していた

庭の手入れや猫のご飯など朝の日課をしつつ今日の予定を考える


(あの二人は仕込みに来るだろうな。 茶々丸ちゃんも来るか?)

仕込みに来る人数次第で横島が行く時間が変わるのだが、恐らく昨日の三人は来るだろうと予測する

まあ横島としては時間があるなら朝の二時間ほど店を開けようかとも考えていたが、仕込みの時間などを考えると難しい


(食材こっちに運んで貰えばよかったな)

いっそのこと横島の店で仕込みをすれば一石二鳥なのだが、残念ながら食材は仮設店舗に運ばれるため店では仕込みが出来ないのだ


(中途半端にするよりは専念した方がいいか)

当初の予定では本番までは暇を見つけて店を開ける予定だったのだが、あれこれと忙しくすでに休んでる日が多かった

まあ麻帆良祭のイベントで仮設店舗を出すのは店で告知したし、準備期間から不定休になることも以前から告知はしていたので店は問題がない

中途半端にして仮設店舗に問題が起きても困るので、結局プレオープン期間もあちらに専念することに決める


「あの……、私が見えるんですか?」

「にゃ~」

一方さよはのら猫達には自分が見えてる事に気付き、驚愕の表情を浮かべていた


「そういえば猫さんを見たなんていつ以来でしょう?」

数十年も幽霊だったにも関わらず、猫には自分が見えていた事実にはずっと気付かなかったらしい

実際さよも猫を見たのはいつ以来か分からないほど、久しぶりに猫を見たようである


「横島さん! お友達が増えましたよ!」

のら猫達と会話して友達になったさよが嬉しそうに手を振る姿を、横島はホッとした様子で見ていた

霊感が強い動物は幽霊が見えて当然なのだが、今まではそんな機会がなかったらしい

もしかすると過去に猫や犬と友達になっていた可能性もあるが、あまりに何十年も前なら忘れてる可能性がある

それだけ一般の幽霊の記憶力は不安定なものなのだ


(俺と一緒に居ると霊体が安定していくだろうな。 力を使わなくても近くに長くいると影響を受けるだろう)

そんなさよの今後についてだが、横島の近くに居れば今後は霊体が急速に安定して行く可能性が高かい

基本的に日常生活で横島が何かの力を使うことはないが、それでも横島の魂や身体は特別だった

麻帆良の結界や蟠桃の影響も微妙にありそうだし、さよは今後ほっといても霊体が安定してかつてのおキヌのようになると横島は考えている


(霊体が安定すりゃ記憶も安定して忘れなくなるだろうな。 流石に人に見えるようになるには何十年もかかるだろうが)

今後さよの霊体は何もしなくても安定して、記憶に関しては今後は忘れにくくなる可能性が高い

流石に人に見えるようになるにはかなりの年月が必要だろうが、記憶が安定すれば楽しいことも悲しいことも思い出として残ることになる

さよにとっていい経験になることだが、幽霊故に人よりも悲しみや苦しみが残る可能性もあった


(友達になっちまった以上、最後まで責任持たなきゃダメだよな)

横島はさよが今後どう変わり、何を考えるのか楽しみな部分もあるが不安な部分もある

結局友達になった以上、さよが不幸にならないように見守る必要があるだろうと思っていた


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