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麻帆良祭

一方さよと帰宅していた横島だったが、途中で店の近くのスーパーに寄っていた

例によってカップ麺や冷凍食品なんかをカゴに入れて、酒のつまみでもないかと惣菜コーナーにを見に行く

時間的に割引になってる可能性があるからと惣菜を見ていると、見知った人物にばったり出くわしてしまう


「ぐっ……偶然ね~」

ばったり出くわした相手は刀子だった

持っていた買い物カゴを隠して何故か焦ったような表情を浮かべる刀子は、僅かに声が上擦っている


「どーも、今お帰りですか?」

「ええ、今日は割と早く終わったので……」

なんで刀子が焦った表情になるのか分からない横島だったが、あまり追求しない方がいいのだろうと普通に挨拶するがやはり彼女の表情は微妙だった


(ビールと割引になったお弁当が入ったカゴなんて見せれないわ)

横島は刀子が焦った理由に気付かないようだったが、刀子の買い物カゴには缶ビールと時間が過ぎて割引になった弁当しか入ってない

まあ横島は別に気にしないのだが、やはり料理もしない寂しい独身女と思われそうで嫌だったのだ


「カップラーメンとか食べるのね。 しかも冷凍食品まで」

「カップ麺とかレトルトの味が好きなんです。 それに男の一人暮らしだとこんなもんですよ」

自分のカゴを隠しつつ横島のカゴを覗く刀子だったが、カップ麺と冷凍食品が入ってることに驚きの声を上げる

どうも刀子は横島にマメなイメージがあったようで不思議そうにしてるが、横島は女に対してマメなのであって自分には適当な事実は気付いてないらしい


「そうだ、よかったら一緒に夕飯どうっすか?」

「えっ……!?」

話のついでに今から帰るならせっかくだから一緒にご飯でもと、いつもの調子で声をかけるが刀子は固まってしまう

横島は全く深く考えた言葉ではないが、刀子は一瞬にしていろいろと深く考えていく


(これってまさか…… まさか自宅で食事?)

始めて客としてではなく個人的に誘われた刀子は、いろいろ想像を飛躍させていた

一緒に食事と言ってもいろいろあるが、場所がスーパーなだけに横島の自宅で食事をするのかと考えてしまったのだ

一人暮らしの男性の家に行って食事をすれば、何が起きても不思議ではないと考えると流石に迷ってしまう

まずカゴに入った弁当やビールを隠す必要があるし、加えて突然迫られても準備が出来てない訳だし


「ああ、そういえば忙しいんでしたよね。 無神経ですんません。 じゃ、また店に来てくださいね」

刀子の表情が微妙だったことで、横島はすぐにダメだと感じて謝りその場を去っていく


「えっと……」

あまりにアッサリと意見を引っ込めた横島に、逆に刀子は行きたいとは言えずに見送るしか出来なかった


(普通もう一押しするでしょ!)

カゴの中の弁当とビールを見た刀子は、がっくりと肩を落として会計に向かう

あと一押ししてくれれば返事をしたのに、何故横島はアッサリと引いてしまったのかと残念で仕方ないようだ


「お待たせ。 知り合いが居たから食事に誘ったら微妙な表情されちゃったよ」

一足先に会計を済ませた横島はコブラで待っていたさよに先程のことを話すが、刀子の微妙な表情を断りだと判断していたようである

中途半端に表情を読んで迷いが見えた為に断りだと判断したのだが、相手の考えを読まないようにしている行動がアダとなっていた事に気付いてなかった


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