麻帆良祭
その頃学園長室には雪広清十郎の姿があった
仮設店舗を離れた後、彼は中等部の学園長室に向かったようだ
「突然来るのは珍しいな。 何かあったかのう?」
「いや孫の出し物を見に来ただけじゃよ」
ソファーに座り出されたお茶を飲む清十郎に近右衛門は何か問題でもあったのかと尋ねるが、どうやら仮設店舗のついてに寄っただけらしい
「麻帆良はいつ来てもいいのう。 ここに来れば平和の有り難みが分かる」
「危ういバランスの上に成り立つ平和じゃがな」
外から聞こえる生徒の笑い声に二人は思わず笑みを浮かべて語るが、和やかな空気とは対称的に言葉は少し重みが増していた
「向こうと揉めとるようじゃが大丈夫か?」
「大丈夫とは言い切れんが、なんとかするわい。 どうせワシが生きてる間に一定のケリを付けねばならんかった事じゃからのう」
「結局、今も昔も世の中は弱肉強食じゃな……」
お茶を片手にぽつりぽつりと会話を続ける二人だったが、抱える問題が多いのは変わらないようだ
どうやら清十郎はネギ絡みから始まった魔法協会とメガロとの問題が気になっていたようである
「中途半端な民主主義ほど怖いものはないと最近しみじみ感じるわい。 メガロも一応民主主義制の都市国家じゃからな。 それなのに市民は何も知らされず元老院は好き勝手しとる」
「まだ向こうの元老院の方が仕事をしてるだけマシじゃよ。 この国の政治家と纏めて交換してほしいわい」
いつの間にか辺りは微妙に重苦しい空気が支配していた
時折愚痴のような冗談を言っては笑っているが、それは楽しくて笑っている感じではない
多くの人の上に立つ者の苦労が滲み出てる感じだった
「そういえばあの男何者じゃ? なかなか面白そうな男のようだが」
「あの男? ああ横島君か。 どこかの隠れ里の末裔のようじゃがな。 イマイチはっきりせんかった。 何か過去がありそうな気もするが、害になるような男じゃないぞ」
「やはり裏の者か。 しかしあの若さであれだけの料理の腕前は凄いのう」
「おかげで木乃香の料理の腕前が上達しておる。 この前も美味い料理を作ってくれたわい」
二人の間にあった重苦しい空気を変えようとしたのか、清十郎は横島の話題を持ち出すが近右衛門は何故か孫の自慢をしてしまう
清十郎もまたそんな近右衛門に対抗するように孫の自慢をして、二人はいつの間にか孫の自慢合戦になっていく
「今日久しぶりに見たが、アスナちゃんも元気で明るい子に育ったのう」
「そうじゃな。 正直始めてアスナちゃんを見た時はどうなるかと思ったからのう」
そのまま互いの孫の自慢合戦が一段落すると、二人の話題は明日菜に変わっていた
麻帆良に来た当時を知る二人としては、今の明日菜を見ると本当によかったと実感している
明日菜の受け入れと育成には表に出ない苦労が多かったが、すくすくと元気に成長していく姿は二人にとって楽しみであった
「あのまま一生普通の人として幸せになってほしいもんじゃな」
自分達の年を考え明日菜の子供くらいは見れるかと楽しみにしつつ、一生平穏な暮らしが続くことを二人は祈らずにはいられなかった
仮設店舗を離れた後、彼は中等部の学園長室に向かったようだ
「突然来るのは珍しいな。 何かあったかのう?」
「いや孫の出し物を見に来ただけじゃよ」
ソファーに座り出されたお茶を飲む清十郎に近右衛門は何か問題でもあったのかと尋ねるが、どうやら仮設店舗のついてに寄っただけらしい
「麻帆良はいつ来てもいいのう。 ここに来れば平和の有り難みが分かる」
「危ういバランスの上に成り立つ平和じゃがな」
外から聞こえる生徒の笑い声に二人は思わず笑みを浮かべて語るが、和やかな空気とは対称的に言葉は少し重みが増していた
「向こうと揉めとるようじゃが大丈夫か?」
「大丈夫とは言い切れんが、なんとかするわい。 どうせワシが生きてる間に一定のケリを付けねばならんかった事じゃからのう」
「結局、今も昔も世の中は弱肉強食じゃな……」
お茶を片手にぽつりぽつりと会話を続ける二人だったが、抱える問題が多いのは変わらないようだ
どうやら清十郎はネギ絡みから始まった魔法協会とメガロとの問題が気になっていたようである
「中途半端な民主主義ほど怖いものはないと最近しみじみ感じるわい。 メガロも一応民主主義制の都市国家じゃからな。 それなのに市民は何も知らされず元老院は好き勝手しとる」
「まだ向こうの元老院の方が仕事をしてるだけマシじゃよ。 この国の政治家と纏めて交換してほしいわい」
いつの間にか辺りは微妙に重苦しい空気が支配していた
時折愚痴のような冗談を言っては笑っているが、それは楽しくて笑っている感じではない
多くの人の上に立つ者の苦労が滲み出てる感じだった
「そういえばあの男何者じゃ? なかなか面白そうな男のようだが」
「あの男? ああ横島君か。 どこかの隠れ里の末裔のようじゃがな。 イマイチはっきりせんかった。 何か過去がありそうな気もするが、害になるような男じゃないぞ」
「やはり裏の者か。 しかしあの若さであれだけの料理の腕前は凄いのう」
「おかげで木乃香の料理の腕前が上達しておる。 この前も美味い料理を作ってくれたわい」
二人の間にあった重苦しい空気を変えようとしたのか、清十郎は横島の話題を持ち出すが近右衛門は何故か孫の自慢をしてしまう
清十郎もまたそんな近右衛門に対抗するように孫の自慢をして、二人はいつの間にか孫の自慢合戦になっていく
「今日久しぶりに見たが、アスナちゃんも元気で明るい子に育ったのう」
「そうじゃな。 正直始めてアスナちゃんを見た時はどうなるかと思ったからのう」
そのまま互いの孫の自慢合戦が一段落すると、二人の話題は明日菜に変わっていた
麻帆良に来た当時を知る二人としては、今の明日菜を見ると本当によかったと実感している
明日菜の受け入れと育成には表に出ない苦労が多かったが、すくすくと元気に成長していく姿は二人にとって楽しみであった
「あのまま一生普通の人として幸せになってほしいもんじゃな」
自分達の年を考え明日菜の子供くらいは見れるかと楽しみにしつつ、一生平穏な暮らしが続くことを二人は祈らずにはいられなかった