二年目の春・8

「お肉だ! お・に・く!!」

「分かったって。 誰も取らないから、好きな物食べなさいよ」

その後、穂乃香とアナスタシアは三十分ほどで帰った後も、結局この日も日が暮れるまで作業した一同だが。

横島は最後まで残っていたメンバーを連れて、夕食にと焼き肉に来ていた。

あいにくと超高級学食の焼肉ではないが、激安の食べ放題でもないそれなりの焼肉といったところか。

支払いは当然大人の横島が持つことになる。

高畑に関しては一足先に広域指導員としての見回りの為に抜けていて、大人が横島しか居ないのが主な理由だ。


「はい。タマちゃん」

「ありがとう!」

みんなそれぞれ食べたい物を頼んで焼いていくが、幼いタマモだけは流石に一人では危ないので、木乃香が一緒に焼いてあげている。


「間に合うかしらね。」

「最後は徹夜しなきゃ無理じゃない? 何だかんだって、いっつもギリギリだもの。」

焼肉というのは個性が出るもので、一枚一枚丁寧に焼いてる者も居れば、何枚も焼きながら食べてる者もいる。

焼き加減も人それぞれで、みんなそれぞれ好きな焼き方で肉を楽しんでいた。


「料理の方は大丈夫なの?」

「器はプレオープンまでには間に合うネ。」

「ひつまぶし弁当の方は、明日には製造する雪広グループの方と会う予定ですよ」

現状で仮設店舗の準備に、料理の最終打ち合わせとやることはまだまだ多い。

今年は特にわんこひつまぶしを弁当にして販売する予定なので、そちらに味を教えたりするのも明日には予定されている。


「昔さ。 金のない時に見た焼肉の夢が未だに忘れられん。 焼肉屋に来たのに肉がないって探してる夢でな。」

一方横島は肉を焼きながら、ふと昔見た夢の話をして少女達に微妙な顔をされている。

横島をよく知らない少女からすると本当に金のない時があったのかなと疑問だし、よく知る少女達からするとやはり一体どんな人生だったのか興味があった。

普通に生きていたら魔法や魔王なんて出会うことは、まずないはずなのだ。

まあそれを言うなら少女達も同じであるが。


「マスターは麻帆良祭予定決めたの?」

「うん? 俺は予定入れるなって夕映ちゃんに言われてるからなぁ。 麻帆良カレーとか納涼祭絡みのイベントにも行かにゃならんし」

ただこの時ふと裕奈が横島の予定を尋ねるも、すでに予定を周りが押さえてることにクスクスと笑っていた。

木乃香達が今年は予定を騒がないので気になっていたらしいが、横島の予定自体を押さえたんだなと思うと、着々と周りから固められてると端から見たら思うらしい。

実際美砂なんかはその話題になると、裕奈に意味ありげな笑みを見せている。

横島本人が何処まで気付いているか不明だが、麻帆良祭なんかは即席カップルが急増するので横島なんかは意外に狙われていたりしたのだが。

これ以上女は増やさなくていいと、周囲を固めてる少女達は本気で思っていた。

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