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二年目の春・8

その夜、世界樹が目の前に見える世界樹前広場は、人払いの魔法にて無人になっていた。


「魔法陣は貴様が描くと言ってなかったか?」

「すぐ描くって」

その場に居るのは近右衛門・穂乃香・高畑・刀子・横島・アナスタシアの六人で、これから世界樹の告白強制成就を事実上の無効化するための儀式魔法を行う予定だったのだが肝心の魔法陣がない。

実は魔法陣は横島が描くと言っていたので誰も準備してなかったのだが、肝心の横島は焼肉屋でお酒を飲んでほろ酔いの状態なのだから、アナスタシアばかりか近右衛門もどうするのだろうと首を傾げている。


「それは?」

「まあ見てろって」

横島だし何とかするのだろうと心配しては居ないが、何かするのではと期待半分不安半分な一同の前で、横島はこの世界に来て二度目となる文珠を造り出す。

アナスタシアは自分の知らぬ文珠に興味を抱いたようだったが、横島は魔法陣の術式や形が描かれてる紙を見ながら、それを地面に文珠に【陣】という文字を込めて、一瞬で魔法陣を描いて見せていた。


「なんと。」

「一瞬でこれほどの魔法陣を描くとは……」

「俺の元々の切り札っすからね。 これは」

前回文珠を使ったのは体育祭の前に古くなったミニ四駆の部品を文珠で直した時であり、今回のように本来の使い方に近い目的で使ったのは本当に久々だった。

何人もの魂の欠片を受け入れ出来ることが増えた現在でも、切り札と言って過言ではない技であり、奇跡の根源とも言える文珠を横島はもう一つ造り出すと少し懐かしそうに見ている。


「オレの霊力を凝縮させた、力の結晶みたいなもんっすかね。 一つにつき文字を一つ込めると、文字とイメージに会わせた術が使えるんですよ。 とまあ説明はこのくらいにして始めましょうか。」

「横島君。 貴方ね。」

かつてとは違い平和な日常を生きる現在ではめっきり使う機会が無くなったが、近右衛門達は魔法理論や技術が全く通用しない文珠に呆気に取られて見ていた。

横島としてはみんなが聞きたそうにしていたから説明はしたものの、終わったからさあ儀式を始めようと言われても、周りはそこまで頭を切り替えられないでいる。


「貴様は一体切り札がいくつあるんだ?」

「切り札? そんなに多くないぞ。 十個はないだろうな。」

「それは切り札とは言わんだろう。」

「うーん。 俺は切り札のつもりなんだけど。」

近右衛門と穂乃香は知らないが横島は前に力の共鳴も切り札だと言っていたので、アナスタシアは横島の切り札というものが理解できないようだったが。

横島としては切り札や奥の手はあればあるほどいいという、GS見習い時代から基本的な考え方はあまり変わってない。

強くなったからといって考え方や戦い方を変える気は全くなかった。


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