二年目の春・8

「まだ決まってないんか。」

穂乃香と話した横島は夕方の前に店を閉めて仮設店舗にタマモと来ていたが、3ーAの少女達はまだどういう内装にするか揉めていた。

メインの料理を横島達に丸投げした分、内装や出し物全体には力を入れたい少女達の意気込みの現れとも言えるが。



「こっちを手伝って欲しいネ」

「了解。先にやれることやるか」

タマモを少女達の輪の中に入れた横島は立体映像の仕込みをしている超鈴音と葉加瀬の方を手伝うことになり、ワイワイガヤガヤと騒ぎながら話し合う少女達の声をBGMにして立体映像の投影機の設置と配線を隠したりするのを手伝っていく。


「いっそ立体映像でプロジェクションマッピングでも、やれば良かったか?」

「やり過ぎるとみんなの出し物じゃなくなるネ」

「それもそうか」

地味な作業をしながら横島も内装や外観をどうするか少し考えるが、やり過ぎると本当に誰の出し物か分からなくなるのが問題であった。

超鈴音が立体映像の仕込みをしてるのも、実際に立体映像を見た方がみんなのイメージがしやすいだろうという配慮があるからだろう。


「タマちゃんの絵、可愛いね!」

「やっぱりメルヘンが良くない?」

一方タマモは少女達に、レストランをイメージして描いた絵を見せて歩いていた。

タマモの絵では乗り物ではなく動物達と一緒にピクニックするような絵で描かれていて、それがまた少女達の意見に影響を与えることになる。


「乗り物は難しいから無しですね。」

「動物達と一緒に景色を見るってのもいいわね。」

「純粋過ぎて眩しいわ。」

要は綺麗な風景を立体映像で流すのだから、それをどう見るようにしようかということになるが、評価とか人の反応とかどうしても考えてしまう少女達からすると純粋にみんなとお店を作りたいと考えるタマモは少し眩しいほどだった。


「へ~。 こっちもいいわね。 森の中の切り株をお店にしたんだ?」

「うん!」

なお外観もタマモは幾つか描いていて、大きなクジラのお店とか木の切り株のお店とか何種類か描いている。

タマモとしては森のみんなで、旅行に行くイメージがあるようだった。


「なんかタマちゃんのアイデアが一番良さげ。」

「いっそタマちゃんのアイデアにする?」

「最年少プロデューサー?」

そのまま話は脱線しながら進むが、下手に固定観念なんかがないタマモのアイデアが一番面白そうだと少女達は、タマモをいっそプロデューサーにしてしまおうという話が持ち上がる。

当の本人はみんなと一緒に考えるんだとアイデアを絵にしただけなのだが。


「それじゃ、タマちゃんがプロデューサーに決定! 」

キョトンとするタマモを尻目に、少女達はタマモをプロデューサーに据える事を多数決で決定してしまう。

当然タマモはプロデューサーを知らないので木乃香にプロデューサーってなに?と聞いていたが。

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