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二年目の春・8

「このかちゃんのおかあさんだ!」

「あら、大きくなったわね。 元気だった?」

「うん!」

近右衛門と話をした穂乃香は関係者に挨拶を終えると、横島の店に顔を出していた。

前回会ったのは木乃香の誕生日だったので、約三ヶ月ぶりの再会にタマモは嬉しそうに駆けていく。


「もうすぐ閉店みたいだけど、忙しいのかしら?」

「忙しいというか、麻帆良祭の出し物の準備があるんですよ」

この日横島の店は午後三時には閉店予定で、3ーAの出し物の仮設店舗で話し合いと準備が行われる予定であった。

時間的に放課後はお客さんが多いので告知は早めにしていて、今日から麻帆良祭が終わるまでは店より出し物の準備に時間をかけることになる。


「このかちゃんとね、おみせつくるんだよ!」

タマモは穂乃香に対して本当の母親のように甘えると、スケッチブックに描いたお店のイメージ図を見せていく。

まあタマモが新しいお店というイメージから、勝手に描いただけのイメージ図なのだが。


「そう。 それは楽しみね~。」

「うん! わたしもだいくさんみたいにがんばるんだよ!」

見て見てと最近の写真なんかまでいろいろ持ってくるタマモの相手をしつつゆっくりする穂乃香であるが、一段落すると厨房でタマモを抱っこしながら横島と話をすることになる。


「クルト君のことなんだけど、神鳴流からテロリストを出すわけに行かないの。 協力してくれないかしら?」

「ああ、そういえば神鳴流を名乗ってるんでしたっけ?」

「ええ。 うちの人もようやく了解してくれたわ。」

「まあ、困りますよね。正式な門下生でないんでしたっけ?」

タマモは何の話か分からずキョトンとしてるが、口を挟むべきではないと空気を読んだらしくおとなしくしてる中で穂乃香は横島にクルトの件を頼んでいく。


「うちの人の私的な弟子であることは確かだし、本来ならうちの人が止めに行くべきなんだけど。」

「それはさすがに不味いっすね。」

「タカミチ君が危ういなら私も引き下がるわ。 でもタカミチ君が大丈夫なら……」

「いいですよ。 ただ学園長先生は?」

「今夜関係者を集めて話をしてからだって。」

横島はクルトの名前を聞くと少し嫌そうな顔をしたが、穂乃香の頼みを聞くに従って考え込むようになる。

今更遅い気もしないでもないが、捕まる前に工作をしなければもっと立場が悪くなるのは明らかだった。

現状でクルトの計画は力づくでも阻止するつもりなので、クルトがクーデターを計画したテロリストになる可能性は高いのだ。


「連合は不味いっすかね。 学園長先生を説得して帝国から情報を流すべきかも。」

「帝国から?」

「要はクルト・ゲーデルが正式な神鳴流でも、詠春さんが認めた後継者でもないって明らかにすればいいんですから。 連合は今ちょっとややこしいですからね。」

穂乃香の頼みはクルト・ゲーデルに止めを刺すことになりかねないが、横島は悠久の翼と連携すればクルト一派を更に解体出来るかもしれないと考えていた。

まあそう簡単な問題ではないが検討する価値はあるだろうと思い、土偶羅に具体策を検討させることにした。

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