麻帆良祭への道
数日後、午前中で店の営業を切り上げた横島は完成したばかりの店舗に来ていた
そこは敷地だけでもかなり広く五つほどの建物があるが、文化祭の店舗と言うよりは万博のパピリオンのような外観である
仮設店舗と言う事から横島としては簡単なプレハブの建物を想像していたが、実物はプレハブなのだろうがかなり立派な建物だった
まあ毎年参加する企業だけに資材などは使いまわしなのだろうが、それにしても雪広グループの本気度が伺える
「テレビで見てたけど大学部の方は凄まじいな」
ここまで横島は木乃香と一緒に来て居たが、大学部の集まる地区は麻帆良祭絡みの建設ラッシュが凄まじかった
横島の店がある辺りは住宅地や寮が中心であり、正直それほど派手な物はない
麻帆良学園内でも地域ごとに差はあるが、一番大型の出し物が多いのは大学部の地域だった
「みんな凝り性なんや。 うちも全部周りきれたことないわ」
途中面白そうなイベントがすでにやっているところもあったが、木乃香はそれらを見てまわるのが好きらしい
ただ入場料などがかかるイベントも多く、小学生時代はなかなか好きに見て歩けなかったようだ
「いや~、大学の辺りは流石に美人が多いな~ 時間あったらナンパしようかな」
美女とすれ違うたびに視線が動く横島は相変わらずだったが、木乃香は何故か少し複雑な気分になる
まあ横島が女好きを公言してるのは今に始まったことではないが、何か微妙に面白くない気持ちが僅かに込み上げてくるのだ
「しかし木乃香ちゃんも結構視線集めてたな~ 俺が居なかったらナンパされるんじゃねえか? 気をつけなきゃダメだぞ」
一方の横島だが、彼は美人以外にも木乃香に集まる視線も気にしていたようだ
特に警戒してる訳ではないのだが、気になるのは気になるらしい
「そうなん? うちナンパなんてされた事ないな~」
「気をつけなきゃダメだぞ。 《ちょっとお茶でも》なんて言われて本当にお茶で済ます奴なんて居ないからな」
自分がナンパされるなどとは全く頭にない木乃香に、横島は男の危険性を語っていく
身近な人間で一番危なそうなのが木乃香だと横島は以前から考えていた
あまりに警戒心がない木乃香には横島ですら心配になるらしい
「へー、そうなんや~」
「変な男に絡まれたらすぐに連絡しろよ。 間違っても着いて行っちゃダメだからな」
「ウチそんな子供やないえ~」
割と真剣に話す横島に木乃香は若干驚きつつも、そこまで無知じゃないと笑ってしまう
しかし横島は木乃香ならば騙されそうな気がしてならなかった
「まあ木乃香ちゃんを騙すような男は俺が許さんがな」
木乃香につられるように笑って答える横島に、木乃香自身は何故か喜びのような感情が込み上げてくる
例え冗談でも、そこまで言われて悪い気がするはずなどない
しかし木乃香は知らなかった
横島が決して冗談でそんな事を言うタイプではないということを……
そしてそれがどんな意味を持つのかということにも、気付くはずはなかったのである
そこは敷地だけでもかなり広く五つほどの建物があるが、文化祭の店舗と言うよりは万博のパピリオンのような外観である
仮設店舗と言う事から横島としては簡単なプレハブの建物を想像していたが、実物はプレハブなのだろうがかなり立派な建物だった
まあ毎年参加する企業だけに資材などは使いまわしなのだろうが、それにしても雪広グループの本気度が伺える
「テレビで見てたけど大学部の方は凄まじいな」
ここまで横島は木乃香と一緒に来て居たが、大学部の集まる地区は麻帆良祭絡みの建設ラッシュが凄まじかった
横島の店がある辺りは住宅地や寮が中心であり、正直それほど派手な物はない
麻帆良学園内でも地域ごとに差はあるが、一番大型の出し物が多いのは大学部の地域だった
「みんな凝り性なんや。 うちも全部周りきれたことないわ」
途中面白そうなイベントがすでにやっているところもあったが、木乃香はそれらを見てまわるのが好きらしい
ただ入場料などがかかるイベントも多く、小学生時代はなかなか好きに見て歩けなかったようだ
「いや~、大学の辺りは流石に美人が多いな~ 時間あったらナンパしようかな」
美女とすれ違うたびに視線が動く横島は相変わらずだったが、木乃香は何故か少し複雑な気分になる
まあ横島が女好きを公言してるのは今に始まったことではないが、何か微妙に面白くない気持ちが僅かに込み上げてくるのだ
「しかし木乃香ちゃんも結構視線集めてたな~ 俺が居なかったらナンパされるんじゃねえか? 気をつけなきゃダメだぞ」
一方の横島だが、彼は美人以外にも木乃香に集まる視線も気にしていたようだ
特に警戒してる訳ではないのだが、気になるのは気になるらしい
「そうなん? うちナンパなんてされた事ないな~」
「気をつけなきゃダメだぞ。 《ちょっとお茶でも》なんて言われて本当にお茶で済ます奴なんて居ないからな」
自分がナンパされるなどとは全く頭にない木乃香に、横島は男の危険性を語っていく
身近な人間で一番危なそうなのが木乃香だと横島は以前から考えていた
あまりに警戒心がない木乃香には横島ですら心配になるらしい
「へー、そうなんや~」
「変な男に絡まれたらすぐに連絡しろよ。 間違っても着いて行っちゃダメだからな」
「ウチそんな子供やないえ~」
割と真剣に話す横島に木乃香は若干驚きつつも、そこまで無知じゃないと笑ってしまう
しかし横島は木乃香ならば騙されそうな気がしてならなかった
「まあ木乃香ちゃんを騙すような男は俺が許さんがな」
木乃香につられるように笑って答える横島に、木乃香自身は何故か喜びのような感情が込み上げてくる
例え冗談でも、そこまで言われて悪い気がするはずなどない
しかし木乃香は知らなかった
横島が決して冗談でそんな事を言うタイプではないということを……
そしてそれがどんな意味を持つのかということにも、気付くはずはなかったのである