二年目の春・6

「あれ? どうして葛葉先生が?」

「田中先生は風邪でお休みなので今日の一時間目は自習になるのよ。 あんまり細かく言うつもりはないけど騒ぐのはダメよ。」

「やったー! 自習だ!!」

さてこの日の女子中等部であるが一時間目の教科を担当する教師が休んだために急遽自習になり、ちょうど空いていた刀子が監督するために3ーAの教室に来ていた。

以前にも説明したが刀子と3ーAは学校ではあまり接点がなく担当する学年も違えば教えている教科もなく、女子中等部の校舎自体も結構広いので木乃香達なんかは学校で会うこと自体珍しいほどである。


「先生のクラスは麻帆良祭の出し物決まりました?」

「まだ決まってないわね。 でもうちは多分普通よ。」

自習になるとほとんどの生徒はおしゃべりを始めていて、千雨なんかはヘッドフォンの音楽を聴きながら机に伏せるように寝る体勢に入るなどそれぞれ好きなことをしているが刀子の元には何人かの少女が集まり声をかけられていた。


「普通かぁ。」

「合コン喫茶なんて案は止めたけどね。」

「合コン喫茶!?」

「クッ! 彼氏も探してお金も儲かり一石二鳥なのね! やるわね!」

話題はやはり来月の麻帆良祭のことであり同じ中等部の出し物が気になるようだが、一般的には六月に入ってから決めるものなので刀子のクラスはまだ決まってないようだ。

何だかんだと理由はあれど麻帆良祭は結局は文化祭というお祭りであり、悪のりとも受け取れることをしようとするのは3ーAだけではないようである。

刀子のクラスの一部の生徒が彼氏探しとお金儲けで一石二鳥を狙って合コン喫茶なる怪しげな出し物にしようとするも、当然ながら止めたらしい。


「うちは……、無理か。」

合コン喫茶に衝撃を受けた裕奈はぜひうちもと言いかけるもクラスメートを見渡して無理だなとすぐに肩を落とす。

いつの間にか逆ハーレム状態の古菲を筆頭に千鶴やあやかに木乃香など学園でも有数のモテる少女は居るが、古菲は格闘バカだし他は横島との関係でとても合コンなんて参加しそうもない。

まあそれ以前に担任の高畑に確実に止められるのだが。


「学校の出し物で合コンなんて出来るわけないでしょう。」

「先生はマスターが居ればいいんだろうけどさ。 女子校だと出会いが。」

刀子も合コンをするなとは言わないが学校の行事でやろうとする麻帆良生のアグレッシブさには苦笑いしか出ないようであるが、この手の話をすると二言目には横島を恋人だと言われるのであまり深く追求は出来なかった。

横島との関係は現状では少女達との妥協の産物であり、多少の不満はあれど大きな不満はない。

ただ一番面倒なのはそんな端から見たら不思議な自分達の関係を聞かれることだった。

特に刀子の場合はいい年した大人なので、結婚を考えてるのかとかいろいろ頼んでも居ないことを聞きたがる大人が周りに居ない訳ではないのだ。

結局は適当に話をはぐらかしつつ少女達に静かに自習をするようにとごまかすしかなかった。

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