二年目の春・6

「タマちゃん、そろそろ帰ろか?」

「うん!」

一方木乃香とのどかと図書館島に来ていたタマモは動物図鑑や植物図鑑を飽きることなく見ていたが、夕方になったため帰るところだった。

帰り際に絵本を何冊か借りたタマモ達はオレンジ色に染まっていた西の空を眺めながら帰路に着いているが、タマモは木乃香とのどかに挟まれる形で手を繋いでいてご機嫌な様子である。


「綺麗な夕陽ですね。」

太陽はすでにかなり傾いていてもう時期沈む頃合いだ。

街の家や建物の隙間から時折見える夕陽は何時もに増してオレンジ色に見えている。

タマモはそんな夕陽を浴びて伸びる自身と木乃香とのどかの影を見ていると、何故か踏まないようにする歩き方を始めてしまい木乃香達を笑わせていた。

散歩が大好きなタマモは何処に行くわけでもなくこうして大好きな人と一緒に歩くだけで楽しくて仕方ないらしい。


「あっ、タマちゃんだ! お散歩?」

「ううん、としょかんにいってたんだよ!」

途中タマモ達はいろんな人によく声をかけられる。

女子中高生から始まり大学生や年配者まで幅広い層から声をかけられるが、相手は店の常連だったり納涼祭絡みで知り合った大学生だったりと関係も様々である。


「そうしてると仲がいい姉妹にも見えるな。」

「うん、ふたりはわたしのおねえちゃんなの!」

木乃香達とタマモの年齢差は見た目からおよそ十歳ほど差があり姉妹にしては年が離れてる感じもあるものの、友人というには些かタマモが幼すぎた。

客観的に見てタマモと木乃香達は仲がいい姉妹に見えることもあるらしく、それを指摘されるとタマモは嬉しそうに私のお姉ちゃんだと誇らしげに言い切る。

タマモにとって二人は家族でありお姉ちゃんなので当たり前のことではあるが、他の人からも家族として見られることは嬉しいらしい。


「あっ!? みさちゃんとまどかちゃんとさくらこちゃんだ!」

そのまま路面電車を乗り継ぎ横島の店の近くの駅まで行くと、ちょうどこの日は都内に遊びに行っていた美砂達と偶然ばったりと会う。

これまた嬉しそうに駆け寄ったタマモと美砂達も合流し楽しげに両手を大きく振りながら先頭を歩くタマモを筆頭に、木乃香達と美砂達は第二の自宅とも言える横島の店に歩みを進める。


「どう? これ可愛いでしょう?」

「ほんまや。 可愛ええわ。」

「つい衝動買いしちゃったのよねー。」

美砂達はこの日は都内でウインドウショッピングをしていたらしいが、あまりに可愛いタマモに似合う子供服を見つけると値段も安かったことからついつい衝動買いしてしまったと笑いながら木乃香とのどかに買った服を見せていた。

育ての親がまだ二十歳くらいにしか見えない横島であることもありタマモの服を貰うことは多いのだが、美砂達のように絶対似合うからと服をプレゼントされることもまた多い。


「お腹減ったね。」

「うん!」

「今日のご飯はなにかな? お店まで競争だ!」

そして店が近くなると何処からともなく匂う美味しそうな匂いに我慢出来なくなったのか桜子が競争だと突然宣言すると店まで走り出してしまい、タマモが慌てて自分も負けないと桜子を追いかけて走り出す。

木乃香とのどかが危ないから気を付けるようにと声をかけるも二人は一目散に店まで走り、先行した桜子が先に到着するとタマモは悔しそうにするも二人はそれはそれで楽しかったのか結果的には笑いながらただいまと大きな声で言いながら店内に入っていった。





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