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二年目の春・5

一方この日の刀子は平日にはなかなか出来ないシーツなどを洗濯したり掃除をしたりして一日を終えようとしていた。

麻帆良学園は私立なので麻帆良祭の直前などを除くと一般教師は公立ほどブラックな職場ではないが、刀子は魔法協会の仕事もあるので日頃から結構忙しい。

まあ給料もその分それなりに貰ってはいるが、実家への仕送りをしてる意外はさほど使い道はなく住まいも教職員宿舎であるため金がかからないのは利点ではあったが。


「やっと終わったわ。」

一通り家事を終えると時間はすでに夕方に差し掛かる頃になっていて、このあとは魔法協会の施設で軽く修行するつもりである。

ご存じの通り麻帆良には地下に魔法協会の施設があちこちにあり、中には訓練用施設として協会員に解放してる場所も多い。


「修行時間を減らず訳にもね。」

今年の年始めには神鳴流の奥義たる弐の太刀を会得したことにより神鳴流の技は全て会得した彼女だが、弐の太刀はその性質上難易度が高いので本当の意味で極めるにはまだまだ修行が必要であるし何より定期的に修行をしなければ確実に剣の腕が落ちる。

麻帆良には時々偵察目的の式神やら使い魔やらが出没することはあるが刀子が神鳴流の実力を出すほどではないし、刀子自身は普段は見回りや警備はほとんどしてないので見回りなんかで最低限の実戦に遭遇することさえ麻帆良祭などの忙しい時期しかない。

結果として定期的に修行をして最低限の剣の腕を維持していることがここ数年の刀子の現状であった。

一時期は修行すらも必要かと思うほど実戦から離れていたが現状の刀子には少なくとも剣を置くことは出来そうもない。

東西統合に向けた協力は始まったばかりであるし明日菜の件もあるので、いつ実戦が訪れるか分かったものではないのだ。


「杞憂に終わって欲しいものね。」

しかし危機が迫っているかといえばそれは否と言えて、近右衛門が魔法協会の組織力で横島がアシュタロスの遺産の情報収集力で警戒してる限りは早々実戦の機会はないだろうと刀子は理解している。

最近は不安要素だった高畑も随分と変わったし何より近右衛門と横島は徹底的に戦いを避けているのだから、本当に実戦で戦う日が来るのかも少々疑問だった。


「何処までも慎重よね。 力に驕ったことないのかしら? それとも……。」

伝説にまでなっているエヴァをもってしても底が見えぬという戦う力もあり、アシュタロスの遺産もあるにも関わらず横島は何処まで慎重である。

その気になれば世界を手に入れることも不可能ではないのではと思うほどなのにだ。

あそこまでたどり着くのに一体どれほどの人生を歩んで来たのかと考えると、刀子は自分などには計り知れないのかとしか今は思えなかった。


「高畑先生も居るし大丈夫だとは思うんだけどね。」

未だに横島には謎が多いが刀子は横島とエヴァは何が起きても出来るだけ限り戦わせるべきではないと個人的に考えている。

なんというかあの二人だけでメガロメセンブリアでさえ相手に出来そうなのではと刀子ですら思うも、エヴァは可能な限り封じられてることにしておくべきだし横島の力も人の目に晒すと厄介事を呼び込むのではとも思うのだ。

幸いにして高畑がほぼ味方と呼べる立場であるし刹那も戦力として申し分ない。

万が一の際には秘密結社完全なる世界の生き残りでも来ない限りは自分達で対処出来るししなくてはならなかった。


「そういえば先代の長は私の未来に何を見たのかしら? まさか横島君のことを……?」

その後修行のため自宅を出た刀子は今後のことを考えながらもふと年末年始に祖母が溢した先代の関西呪術協会の長が見た自分の未来が気になる。

未来は一つではないというのは横島から聞いたし超鈴音を見ても分かるが、もし先代が横島のことまで見ていたとしたら先代はそれをどう思ったのかと考えてしまう。

最早知りようもないことなのだが。



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