二年目の春・5

「まき絵、お前ここ何日か大学部の施設に通ってるんだって?」

「えー!? なんで二ノ宮先生知ってるの!? 秘密の特訓してるのに!」

一方放課後の中等部ではまき絵が新体操部の部活にと体育館に来ていたが、到着早々顧問の二ノ宮に呼び止められていた。


「まき絵はともかく一緒なのがマホラカフェのマスターなんでしょう? 彼がまた何か始めるのかって噂になってるわよ。 それに麻帆良大の陣内コーチは先輩なの。」

「あー、そうなんですか。」

二ノ宮の用件はまき絵が横島と大学部の施設に通ってる件であり早くも二ノ宮の耳に入ったらしい。

まき絵としては明後日の選抜テストまで秘密にしたかったらしいが、すでにいろいろやらかしてる横島が大学部の施設に通ってまき絵を指導していることが少し噂となっているのだ。


「一応は自主練の範囲だし大学部の監督さんも認めてるからいいけど迷惑はかけるなよ。」

「あの怖いコーチの先生から苦情が来たんですか?」

「いや、私が知らないと何かあった時に困るからと連絡くれただけだよ。 あと陣内先輩が貴女達に厳しかったのは先輩自身が大学時代に怪我で引退したからだと思うわ。 監督が休めって言うのも聞かずに一人で無理して怪我したらしいから。」

まき絵は自主練のつもりだったが大学部のコーチの陣内と二ノ宮は知り合いらしく一報をくれたようである。

二ノ宮はまき絵に怖いコーチと呼ばれてる陣内に苦笑いを浮かべつつ、陣内がまき絵や横島にきつく当たった理由を教え始めた。


「なるほど、それで……。」

「なんかあったのか?」

「マスターが美鈴先輩が足を痛めてるの見抜いちゃって陣内コーチに怒られたんです。」

どうも二ノ宮もあまり詳しい話は聞いてないようで、まき絵から陣内とのちょっとしたトラブルを聞くと少し驚きつつも納得したように笑ってしまう。

中等部教師の間ではでは3ーAの影の担任とアダ名がある横島のことは二ノ宮もいろいろ噂を聞いてるので横島ならばやりかねないなと思うと同時に、真面目で堅物な陣内とはすぐには合わないんだろうなとも思うようである。


「あのマスター、スポーツにも詳しいのか?」

「うーん、新体操は知らないって言ってましたけど。 マスターの知らないって言うのあんまりあてにならないんです。 でも教え方は上手いですよ。」

実は二ノ宮は陣内から横島という男は何者だとも聞かれていて返答に困りつつも、本職が料理人でありながら生徒の勉強を見てやったり納涼祭の主催者になってる有名人だと当たり障りのない事実を教えていた。

何かスポーツでもやっていたのかとも聞かれたが海外生活が長いとの噂がある以上は二ノ宮も知らないし、恋人だと噂の同僚である刀子に聞くほどでもないのでそこは知らないと答えていたが。

ちなみに中等部教師陣でも一体誰が横島の恋人なのかという話は割とよくされていて、教師の間では刀子が恋人ではと見る人間が多い。

店を手伝っていたとの噂もある上に横島と噂になりだした前後から刀子の雰囲気が以前に比べて柔らかくなったとか、帰宅する頃になると機嫌良さそうだとか周りは不思議なほどよく見ている。

ただ最近はアナスタシアという外人の美女が横島を追い掛けて来たと新たな噂が加わっていて、三角関係かとまるで昼ドラのような展開を勝手に想像されてもいたりするのだが。

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