二年目の春・5
「お久し振りです。 高畑さん。」
「久しぶりだね、ケリー君。 元気そうで何よりだ。」
一方この日の放課後になると高畑は久方ぶりに訪ねてきた友人と会っていた。
友人は年の頃は二十歳を過ぎた頃の白人の男性で彼は高畑と同じ悠久の風で活動している魔法使いである。
「そろそろ来る頃だとは思っていたが……。」
「ええ。 ちょっと時間がありましたので高畑さんの様子を見に来ましたという建前で来ました。 実際は上層部や本国でも高畑さんの思惑と今後の予定を随分と気にしてましてね。 一番若くて親しい僕ならばというところです。」
この友人は二年ほど前から悠久の風の活動に加わっていたが高畑と組むことが多く、あちこち飛び回る間に仕事や活動のコツなんかを少し教えていた人物だった。
今回友人のケリーは表向きは悠久の風に顔を出さない高畑の様子を見に来たことになっていたが、実際には悠久の風の上層部やメガロメセンブリア本国が高畑の思惑と今後のことを聞き出そうと送り込んだらしいことをアッサリとばらしてしまう。
「相変わらずだな。 君は。」
「さっき近衛会長にも挨拶に行きましたが会長にもバレてましたし、高畑さんなら気付かないはずがないですよ。 本国はどうだか知りませんが上層部はそれでもいいから高畑さんの真意が聞きたいらしいです。 どうもゲーデル議員の周囲がキナ臭くなってましてね。 我々としては本国の政争に巻き込まれたくはないですから。」
悠久の風については大分前に少し説明したがメガロメセンブリア系の組織ではあるものの、基本的には有志による独立系組織でメンバーもメガロメセンブリアのスパイや工作員とは違う。
ただ目的の一つに秘密結社完全なる世界の壊滅があるのでメガロメセンブリア情報部などとの繋がりはあり、悠久の風が得た情報はほとんどがメガロメセンブリアに流れていく。
それでも麻帆良のような反メガロ系の魔法協会とも多少だが交流があり、一部では高畑のように活動に加わるなど一種の民間交流のような状態が続いている。
だが今回はケリーはクルト・ゲーデルの暗躍以降、以前として一切動かぬ高畑の思惑を聞き出す為にわざわざ派遣されたようであった。
「クルトから連絡や使者は何度も来てるが手を貸す気はないよ。 彼のやろうとしてることは想像はつくが僕のやり方とも理想とも違う。 まして向こうの政争なんて僕も御免だよ。」
「ですよね。 聞くまでもないことなんですけど。 でも本国では未だに赤き翼の名前は重いんですよ。 高畑さんが本気で動くならばと考える人は上から下まで多いんです。 まったく何の為に高畑さんが本国から遠い魔法協会に居ると思ってるんだか。」
修学旅行中にクルトが自ら高畑に接触しようとしたことは土偶羅の暗躍により阻止されたが、メガロメセンブリアでは高畑が本当にクルトに協力しないのか疑ってる者も多い。
何だかんだと言いつつ高畑ならばクルトを見捨てられないだろうし、協力しないような態度をしつつクルトが動き最後に高畑が力を貸して何やら仕出かすのではと疑われてるらしい。
「ケリー君。 僕はこの地に骨を埋めるつもりなんだよ。 だから仮に今また向こうで危機が起きてもすぐには行かないだろう。 それにね、そろそろ赤き翼の名前は過去のモノにしなくてはならないと思うんだ。」
「……高畑さん。」
大戦から二十年過ぎてナギが行方不明となり十年過ぎても、未だに自分は赤き翼の高畑だと見られてることに高畑は何とも言えない気持ちになる。
高畑自身もナギや仲間達の想いを継ぎたいとがむしゃらに努力して来たが、大多数の人々はそんな高畑に赤き翼の後継者として期待はするが自分達でそれを超えようとしない。
目の前のケリーはナギ達の活躍を幼い頃から見聞きして自分も世界の為に働きたいと悠久の風に加わったが、そんな行動を起こした人間はごく僅かしかいなかった。
「久しぶりだね、ケリー君。 元気そうで何よりだ。」
一方この日の放課後になると高畑は久方ぶりに訪ねてきた友人と会っていた。
友人は年の頃は二十歳を過ぎた頃の白人の男性で彼は高畑と同じ悠久の風で活動している魔法使いである。
「そろそろ来る頃だとは思っていたが……。」
「ええ。 ちょっと時間がありましたので高畑さんの様子を見に来ましたという建前で来ました。 実際は上層部や本国でも高畑さんの思惑と今後の予定を随分と気にしてましてね。 一番若くて親しい僕ならばというところです。」
この友人は二年ほど前から悠久の風の活動に加わっていたが高畑と組むことが多く、あちこち飛び回る間に仕事や活動のコツなんかを少し教えていた人物だった。
今回友人のケリーは表向きは悠久の風に顔を出さない高畑の様子を見に来たことになっていたが、実際には悠久の風の上層部やメガロメセンブリア本国が高畑の思惑と今後のことを聞き出そうと送り込んだらしいことをアッサリとばらしてしまう。
「相変わらずだな。 君は。」
「さっき近衛会長にも挨拶に行きましたが会長にもバレてましたし、高畑さんなら気付かないはずがないですよ。 本国はどうだか知りませんが上層部はそれでもいいから高畑さんの真意が聞きたいらしいです。 どうもゲーデル議員の周囲がキナ臭くなってましてね。 我々としては本国の政争に巻き込まれたくはないですから。」
悠久の風については大分前に少し説明したがメガロメセンブリア系の組織ではあるものの、基本的には有志による独立系組織でメンバーもメガロメセンブリアのスパイや工作員とは違う。
ただ目的の一つに秘密結社完全なる世界の壊滅があるのでメガロメセンブリア情報部などとの繋がりはあり、悠久の風が得た情報はほとんどがメガロメセンブリアに流れていく。
それでも麻帆良のような反メガロ系の魔法協会とも多少だが交流があり、一部では高畑のように活動に加わるなど一種の民間交流のような状態が続いている。
だが今回はケリーはクルト・ゲーデルの暗躍以降、以前として一切動かぬ高畑の思惑を聞き出す為にわざわざ派遣されたようであった。
「クルトから連絡や使者は何度も来てるが手を貸す気はないよ。 彼のやろうとしてることは想像はつくが僕のやり方とも理想とも違う。 まして向こうの政争なんて僕も御免だよ。」
「ですよね。 聞くまでもないことなんですけど。 でも本国では未だに赤き翼の名前は重いんですよ。 高畑さんが本気で動くならばと考える人は上から下まで多いんです。 まったく何の為に高畑さんが本国から遠い魔法協会に居ると思ってるんだか。」
修学旅行中にクルトが自ら高畑に接触しようとしたことは土偶羅の暗躍により阻止されたが、メガロメセンブリアでは高畑が本当にクルトに協力しないのか疑ってる者も多い。
何だかんだと言いつつ高畑ならばクルトを見捨てられないだろうし、協力しないような態度をしつつクルトが動き最後に高畑が力を貸して何やら仕出かすのではと疑われてるらしい。
「ケリー君。 僕はこの地に骨を埋めるつもりなんだよ。 だから仮に今また向こうで危機が起きてもすぐには行かないだろう。 それにね、そろそろ赤き翼の名前は過去のモノにしなくてはならないと思うんだ。」
「……高畑さん。」
大戦から二十年過ぎてナギが行方不明となり十年過ぎても、未だに自分は赤き翼の高畑だと見られてることに高畑は何とも言えない気持ちになる。
高畑自身もナギや仲間達の想いを継ぎたいとがむしゃらに努力して来たが、大多数の人々はそんな高畑に赤き翼の後継者として期待はするが自分達でそれを超えようとしない。
目の前のケリーはナギ達の活躍を幼い頃から見聞きして自分も世界の為に働きたいと悠久の風に加わったが、そんな行動を起こした人間はごく僅かしかいなかった。