麻帆良祭への道

幹部ではないのであまり深い事情は知らない刀子とシャークティだが、刀子は近右衛門の信頼が厚く何かと仕事を頼まれる事も多いため多少だが愚痴などを聞くことがあるらしい


「そういえば高畑先生が、サウザンド・マスターの息子を弟子にするって話は聞いた?」

「聞いた事あるわね 本当かは知らないけど、でも学園長はいい顔しないと思うわ。 あっちの世界に関わりたくないみたいだし……」

「なんか裏があるみたい。 そもそもサウザンド・マスターが結婚したなんて話聞いた事ないし、幹部の人がその話題になったら急に黙り込んだもの」

二人の会話はいつの間にか高畑とネギの話題になっていた

ナギの息子の話題はやはり魔法協会内で噂になっていたが、上層部がその話題になると口が重くなる事が一部の者で話題になっていたのだ

そもそもナギの行動は様々な噂はされるが、明確な真実はよくわかってない事が多い

大戦後ナギには戦時中の犯罪行為の疑惑により元老院から召喚状が出されるが、ナギが元老院に出頭しない為に犯罪行為が行われたと判断され賞金首の指名手配にされていた

この件には魔法世界の一般庶民は反発したが、ナギが大戦初期までは完全なる世界と繋がっていたとの疑惑が出ると庶民の反応は微妙に変わり始め、元老院はナギの指名手配を押し切った

まあ疑惑は全ては元老院による自作自演の演出だったのだが……

その問題は結局ナギとアリカの死により元老院は疑惑不明のままナギに恩赦を与えるとし、大戦時の功績を再評価して《立派な魔法使い》として認定するという結末に至っている


少し話が逸れたが、ナギの話は出所不明な英雄談や疑惑が多いのだ

結局確実なのは赤き翼が戦争を終わらせたという事実だけであり、ナギが今も魔法世界で英雄視されるのはその功績によってだった

先程も説明のようにナギの行動は本当に不明な点が多く、ナギが結婚したと言う事実はない

その結果降って湧いたようなナギの息子の話に、魔法関係者は様々な噂をしている


「サウザンド・マスターと言えば、大戦後何年かして京都に来たのよね。 西の長と一緒にリョウメンスクナノカミを封じた話は有名だけど……」

ナギの息子が何か怪しいと聞いた刀子は、若き頃神鳴流で聞いた噂を思い出す


「ああ、そんな話もあったわね」

「あれも妙な噂があったわ。 私が修行してた頃に神鳴流の先輩に聞いた話だけど、あれはサウザンド・マスターが狙われたんだって言ってたわ」

かつてナギが詠春と京都でリョウメンスクナノカミを封じた話は麻帆良では有名だったが、その話もまた麻帆良では微妙に評判が悪い

かつて魔法世界でアリカを処刑から救ったナギは元老院から逃げるように地球側に来て、その際に詠春を頼って京都で一時期潜伏していた

そもそも封印されていたリョウメンスクナノカミの封印を解いたのは、メガロメセンブリアの手の者だった

ナギの追っ手だった者達がナギを捕らえる為にリョウメンスクナノカミを利用したのである

彼らの企みはナギ達と詠春などにより阻止されたが、関西と関東の幹部はあの事件はナギが来なければ起きなかったと見てる者も多い


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