横島君のお店開店

「それじゃ半分貰うな」

「うん、いいよ。 本当によかったね~」

宝くじが当たった横島と桜子はさっそく銀行に行き、二百万円を受け取り半分ずつに分けていた

もしかすれば二百万円をそのまま貰えたかもしれないのだが、桜子は全く気にした様子もなく喜んでいる



「いや~、本当に助かったわ。 俺は最近この街に来てさ。 どっか部屋でも借りようかと思ってたとこなんだよね」

「知ってるよ! 木乃香の占いの先生なんでしょ? 学校で言ってたもん」

「へっ!?」

銀行を後にした横島と桜子は喜びのテンションのまま話しをしながら歩いていたが、桜子が木乃香のクラスメートだと言うと横島は驚き目を見開いていた


「木乃香が自慢してたよ~ 凄い当たりそうな占いだって」

偶然出会った子猫の飼い主が桜子で、その桜子が木乃香の友達だとは本当に世間は狭いと横島はシミジミ感じてしまう


「いや~、趣味の占いだからそんなたいしたことないんだけどなー」

「今度私も行くからよろしくね~」

結局横島と少女は一時間ほど会話をして別れた

横島はその後すぐに住む場所を探すべく不動産屋を回って歩く

時期が時期だけに結構空き物件があるが、部屋を探すのは一苦労であった



「こんにちは、偶然ですね」

「おお、ひもパ……少女」

「お願いですからそれは忘れて下さい!」

不動産屋を巡っていた横島は夕映とばったり会っていた

夕映は普通に挨拶したのだが、横島がひもパ……と言いかけると顔を真っ赤にして慌てた夕映に口を塞がれてしまう


「いや~、結構似合ってたぞ。 見えないオシャレってやつだろ?」

「違うです! 私がトイレでパンツを……ってだから何を言わせるデスカー!!」

「冗談だよ冗談。 また図書館に行くのか?」

「今度こそ忘れて下さい!!」

普段は大人しい夕映だったが、何故か横島を相手にするとペースを崩されていた

顔から火が出そうなくらい恥ずかしいのだが、それが不快じゃない事が自分でも不思議なようである

そのまま歩きながら会話をする横島と夕映だったが、夕映はやはり図書館島へ行く途中であった


「部屋を借りるのですか? と言うかまさか野宿だったとは……」

「元々定住するつもりは無かったんだけどさ、いい街だからしばらく住んでみようかと思ってな」

横島が野宿していたという話に夕映は驚いていた

本当は夜間は異空間アジトに居るから野宿ではないのだが、表向きは野宿という事にしているのだ


「店舗兼住居みたいな物件探してるんだわ。 占いじゃ食えんからなんか商売しようと思ってな」

「ちゃんと考えないと失敗するですよ。 麻帆良は年間を通して観光客も多く飲食店から各種販売店まで揃ってるです。 他の街よりも販売競争が激しいのですよ」

「詳しいな~ じゃ場所が決まったら相談するからよろしくな」

何も考えがなく商売を始めると言う横島に麻帆良はそれほど甘くないと夕映は忠告するが、逆に頼られる始末だった

そのあまりに適当な横島に夕映は思わずため息をはきたくなる思いである


(本当に大丈夫なのでしょうか?)

夕映の心配をよそに横島は場所が決まったらよろしくと言って去っていく

彼女もまた横島との出会いにより運命が変わり始めたのかもしれない



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