二年目の春

さて誕生パーティーも終盤に差し掛かるとプレゼントを渡したり、騒ぎすぎて疲れたのか少し休む少女達もいた。

横島は以前と同じようにコートを送っており、タマモとさよはハニワ兵と共に夕映の時と同じく手作りのブックカバーを送っている。

他の少女達もそれぞれプレゼントを渡しているが、少し驚きなのはそれに続きエヴァ一家から茶々丸が代表して木乃香にプレゼントを渡していて、こちらは意外とまでは言えないが日頃エヴァがよく着るような可愛らしい服をプレゼントしていたことだろう。


「もうすぐ三年かぁ。 早い人だと将来決めてるのよね。」

この日木乃香が十四才になったことで今日来てる身内はタマモ以外はみんな十四才になったが、ふと明日菜は将来のことについてため息まじりに口にする。

同い年の少女達の中にはすでに将来を見据えて努力してる者も居るし、身近ではさやかやあやかなどがその一人だろう。

ただつい一年前までは将来どころか高校卒業すら危ういような明日菜としてはイマイチどうしていいか分からないらしい。


「こんなこと言えば怒られるかもしれんが、無理に将来を決めんでもいいと思うけどな。 下手に将来を決めたら可能性を狭めるだけのような気も……。」

なんとなく呟いた明日菜の愚痴のような悩みのような一言に、騒ぎ疲れて休んでいた少女達は引きずられるように自身の将来について考え始める。

しかしそんな少女達の思考というか話の方向性を止めたのは大人達と酒を飲んでいた横島だった。


「別に早く将来を決めて努力することを否定する訳じゃないが、俺は世の中を知らないうちから将来を決めるのは早い気もするけどな。 気付いたら後戻り出来なくなってたなんてことも無いわけじゃないしな。」

相変わらずちゃらんぽらんな横島であるが、やはりここぞと言う時には周りが驚くほど核心に迫ったことを言う。。

事実横島の話を大人達も否定しなかったし、刀子や詠春や穂乃香は言葉に出来ないほど複雑な心境で受け止めている。

自ら将来を選べなかったとまでは言わないが、選ぶ選択肢が少なく別の道を選ぶと厳しい代償があったのは否定しがたい事実だった。

詠春や穂乃香は関西を継がないという選択肢もあったし、刀子に至っては何度か魔法協会から抜けるという選択肢があったのだ。


「マスターもそうだったの?」

「いや俺はそんなにちゃんとしてなかったよ。 ただあまりにも考えなさすぎて将来を狭めちゃったけど。 早く決めすぎるのもどうかと思うけど、決めないで状況に流され過ぎるのも問題だからな。 本当に難しいよ。」

それは妙に実感が籠った言い方であり、まるで自身の体験談のように語る横島に桜子が素直に尋ねるも横島はそれを笑って否定して自分の失敗をほんの少し語って聞かせる。

明確な答えなどないこの件には横島のみならず誰もが確実な答えを持ってない。

ただこの場に居る者達は幼いタマモ以外はみんな、横島の過去にはまたまだ多くの秘密と物語があったのだろうと改めて感じることになった。

それを横島が自分達に語ってくれるのがいつになるのかとやきもきした気持ちを抱えつつ、木乃香の誕生パーティーは終わることになる。




100/100ページ
スキ