平和な日常~冬~5

「うわー、今日も木乃香達のおかずみんな同じだね。」

そしてこの日の昼になると木乃香達は持参した弁当で昼食にするが、木乃香達に美砂達にあやか達までもがほとんど同じおかずの弁当を持参している。

ちょうど一緒にお昼を食べようとしていたまき絵達四人はその中身を不思議そうに見て驚いていた。


「これ昨日の夕食の余り物なんや。」

おかずのメインは一口サイズの小さな棒餃子であり、緑や赤や黄色なんかのカラフルな棒餃子である。


「へー、余り物なんだ。 ってことはマスターの料理?」

「そうや。 味付けをお弁当用にしたから飽きひんって言うてたわ。」

食材は昨夜の夕食の余り物なのだが横島が弁当用に味付けを変えて下ごしらえした物を、今朝軽く焼いて弁当箱に詰めただけだった。

実は昨年の末頃から木乃香達の弁当には横島の下ごしらえしたおかずが度々入っている。

二学期に入って以降はさよのお弁当作りに凝りだした横島であるが、前日の営業で余った食材なんかでおかずを作る機会も増えていた。

その結果、木乃香達にも本人達が望めば同じおかずを下ごしらえした物をあげていたのだ。

流石に中学生が朝からお弁当を一から作るのはヘビーだが、下ごしらえした物を火を通すだけならばさほど手間がかからない。

尤もさよの弁当は相変わらず凝っていて、この日は同じおかずでも雪だるまのキャラ弁だったが。


「本当にマメだよね。」

「ちょっと変人だけど、料理は上手いしそこそこお金あるしあれで女の人苦手じゃなきゃモテるのにね。」

横島特製のお弁当用棒餃子はニンニクは入ってないが具に味が付いてるので十分美味しく、一口もらって食べたまき絵と裕奈はおかずの作り主である横島をマメな人だとしみじみと語る。

横島の欠点は変人であることと事実上子持ちであることなのだが、それを踏まえても女の人が苦手じゃなきゃモテるのにと少し残念そうにしていた。

まあまき絵や裕奈は今のところ特別興味はないが、身近な男性の中では横島の評価は意外と高いらしい。


「そう言えば夕映ちゃんも凄いんだって? クリスマスパーティでかなり目立ってたってお父さん言ってたよ。」

「はい?」

そのまま話は横島の話題から昨年の学園主催のクリスマスパーティに流れるが、ふと裕奈は父である明石教授から夕映の評判を年末年始に聞いたらしくその話をし出す。

クリスマスパーティに関しては評価を著しく上げたのは横島が絶賛して歩いた新堂美咲と、その横島を支えていたというかコントロールしていた夕映であった。


「あれ、知らないの? 学園関係者とか支援企業では結構話題だって聞いたけど。」

「知らないですよ。 本当ですか?」

「綾瀬さんは特別変わったことはしてないのですが、そもそも横島さんが目立ってますから。 横島さんの代理として会議に出たりパーティで中学生が秘書のような仕事をしたので少々話題にはなってるようですわ。」

突如話の矛先が向いた夕映は何故自分がと頭を抱えてしまうが意外と自身の評判を聞いたのはこれが初めてであり、以前から夕映の評判を知っていたあやかや千鶴はそのうち収まるだろうとの考えもあって夕映にはまだ教えてなかったらしい。

実際夕映は超鈴音や木乃香のように誰もが真似出来ないことをした訳ではないので、あくまでも関係者で話題になってるだけなのだ。


「さほど目立つことをしたつもりはないのですが……」

結局夕映は自分のやってること以上に自分が評価されてる現状に戸惑うも、決して悪い評判ではないのでどうすることも出来なかった。

横島のように評価を落とそうとする訳にもいかないので、どうせそのうち噂は消えるだろうと考えるしかなかったようである。



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