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平和な日常~冬~5

「ゆきだー!!」

お昼が終わり午後の授業が始まる頃になると麻帆良の街には雪がちらつき始めていた。

ふわりふわりと真っ白い雪が舞うように降りだすと、タマモは待ってましたと言わんばかりに外に出て行く。


「こりゃ積もるかもな。」

予報より少し早い時間だが今日は最高気温が零度以外の寒さであり、雪もみぞれなどではなく多少水分が多い綿雪のようである。

毛糸の帽子に耳当てに手袋と完全防備のタマモはさっそく庭の野良猫達を二階に避難させてるが、横島は店内の窓から空を見上げ明日の朝の仕入れに車は使えないかななどと考えていた。


「子供は元気だね。」

「そうですね。 小さい頃は雪が降るとわくわくしたもんっすよ。」

同じく店内には常連の近所の年配者がいて将棋を指していたが、とうとう降りだした雪には少しばかり困った表情を見せるも元気に走り回るタマモを見ているとたまには雪もいいものだと感じるらしい。


「こりゃ学校も早く終わるな。」

「そうなんっすか?」

「ああ、電車が止まると大変だからな。」

その後降り始めた雪は最初こそ地面に落ちては消えてしまっていたが、庭の果樹の木々やネコの家であるネコハウスの屋根にはうっすらとだが積もり始めている。

常連の年配者の一人はこの調子だと学校も早く終わってみんな帰ってくるだろうと横島に教えていた。

麻帆良学園では学校と寮が少し離れてることもあって、雪が降ると割りと早いうちに生徒を帰しているらしい。


「う~、寒い!」

「お帰り。 積もり出したな。」

そして午後二時頃になると常連の予想通り学生達が帰って来るが、この頃になると歩道にも雪が微かに積もっていて学生達は久しぶりの雪で子供のように遊んで騒いでいた。

当然横島の店にも木乃香達が早く帰って来ていて続いて学校帰りの学生達が続々と訪れ始める。

木乃香なんかは雪を喜んでいたが明日菜は新聞配達があるからか困った表情をしていた。

店の常連達も雪を喜ぶのは半数くらいで後の半数は寒さも堪えることからあまり歓迎してないようだ。


「今日は坂本さんが来るはずですよね。 大丈夫なのでしょうか?」

「先に麻帆良の友人宅に行くって言ってたから、来るには来ると思うけど。 まあ帰りは危なそうなら泊まって貰えばいいだろ。」

学生達が来ると店は一気に賑やかになるが、今日は雪が降ると言うのでタマモには危ないから散歩はお休みするように言ってある。

ただそれでも雪が楽しくて仕方ないタマモは店内と外を何度も行ったり来たりしていて、店の常連の少女達と雪で遊んだりもしていたが。

ちなみにビッケとクッキの二匹はこの雪の中でも店まで来たのものの、流石に雪の寒さに堪えたのか店内のぬくぬくとした環境から出ようとはしなかった。

結局二匹は常連の少女達に可愛がられていて横島はそんな光景を眺めていたが、夕映やのどかは今日の夕方に来る予定の坂本夫妻を心配している。

来る予定が夕方になったのは話し合うにしても木乃香達の予定を聞かないと人手が足りないからであり、前回のような混雑があった場合には横島と坂本夫妻だけでは営業は難しいのは明らかだったからだろう。

先程の最新の天気予報では麻帆良のある埼玉では五センチから十センチの降雪があると言っていて、早くも都心では公共交通機関が混乱し始めてるらしい。



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