平和な日常~冬~4
焼き鳥屋で夕食を取ったその夜は横島の部屋でおしゃべりをしていた横島と少女達だが、夜が更けて少女達がそれぞれ部屋に帰りタマモを寝付かせた横島はさよに口止めをして密かに近右衛門達の部屋を訪れていた。
部屋には他に雪広家と那波家の大人と土偶羅の分体である芦優太郎も来ていて、刀子と高畑以外の大人が揃ったことになる。
「全員揃うのはいつ以来じゃろうか?」
集まった訳は言うまでもなく会合であり、横島達を除いても気軽に夫婦揃って京都を離れられない詠春と穂乃香の二人を加えた全員ご揃うのは相当久しぶりらしい。
「何はともあれ、魔法の開示が上手く行ってよかった。」
今日は特に緊急を要する議題は無く横島と芦優太郎以外は少女達への魔法の情報公開が今のところ上手く行ったことにホッとしている様子である。
「そんな神経質になることっすか?」
「あの子達に限っては大丈夫でしょうけど、たまに魔法を教えると勘違いする子もいるのよ。 自分は特別な人間だとか選ばれた存在だとか。 それに魔法を使って犯罪紛いの行為に及ぶ人も居ない訳じゃないもの。」
そんな周囲の大人達の様子が横島は少し神経質過ぎるのではと感じたようだが、穂乃香いわく本来の魔法の情報公開はかなり神経質になる問題らしい。
無論近右衛門達も少女達を直接疑っている訳ではないがハルナのような問題児も居るし、何より魔法により人生が狂うような前例がそれなりにあるようだった。
「藤城先輩、今頃どうしてるかな?」
「そういや向こうに行ってから噂を聞かないな。」
近右衛門達も魔法関連で過去に悔いがあるのか渋い表情をしていたが、あやかの父の政樹と千鶴の父の衛はふと一人の名前を上げて何とも言えない表情をする。
「誰っすか?」
「僕たちの先輩で元関東魔法協会に所属していた人なんだけど、魔法使いは特別な存在だって教えてたメガロメセンブリア出身の先生の教えに染まっちゃってね。」
「先輩はその先生と一緒に二十年前の戦争の時に麻帆良で結成した義勇軍として魔法世界に渡ったんだ。 けど一緒に向こうに行った人の話じゃ終戦まで生き残りはしたらしいけどたいした活躍も出来ずに終わったらしい。」
それは関東魔法協会がまだメガロメセンブリアの支配下にあった頃の話であった。
メガロメセンブリアと一言で言ってもその価値観や考えは人それぞれ違いがあり、中でも特に過激な価値観の先生の教えに染まった人が昔は結構居たらしい。
「優しくていい先輩だったんだけどな。」
藤城先輩という人物は基本的には人当たりがよく評判がよかったらしいが、魔法の才能があったからかメガロ出身の先生に気に入られてからは少し変わってしまったとのこと。
元々メガロメセンブリアが地球側各地に裏の魔法協会と一緒に表の学校を作って行ったのは、自分達の主義主張を広めて魔法使いの子供達を自分達の価値観に染めるのが主な理由の一つにある。
近右衛門達が少女達の魔法の情報公開に神経質になっていたのは、そんな過去からの教訓も大きかった。
「横島君の世界だとどうだったんだい?」
「俺の生まれた世界は魔法とかの分野は元々秘匿されてませんでしたからね。 それなりに世の中に認知されてたんであんまり勝手なこと出来ない環境でしたよ。 実際はいろいろ複雑ですけど、なんというかその分野も社会の一員でしたから。」
いわゆる魔法と教育はこの世界では難しい問題の一つらしく、ふと詠春は横島に元世界である異世界の話を尋ねる。
詠春の問い掛けに横島は少し考える様子を見せてから出来るだけ簡潔に答えるが、この世界の魔法と元世界のオカルトと教育という面で比べると一番の違いはやはり秘匿されてるかどうかであった。
元世界のオカルトも決して誉められたものではなかったが、下手に秘匿して社会から隔離してない分だけマシだったんだと今更ながらに思う。
「興味深いのう。」
「もちろん問題はありましたし、どっちが悪いとか一概に言える問題じゃないっすけどね。」
一方予期せぬタイミングで異世界の話を聞いた近右衛門は、横島の世界の話は今後も何かと参考の一つになるのではと密かに期待していた。
部屋には他に雪広家と那波家の大人と土偶羅の分体である芦優太郎も来ていて、刀子と高畑以外の大人が揃ったことになる。
「全員揃うのはいつ以来じゃろうか?」
集まった訳は言うまでもなく会合であり、横島達を除いても気軽に夫婦揃って京都を離れられない詠春と穂乃香の二人を加えた全員ご揃うのは相当久しぶりらしい。
「何はともあれ、魔法の開示が上手く行ってよかった。」
今日は特に緊急を要する議題は無く横島と芦優太郎以外は少女達への魔法の情報公開が今のところ上手く行ったことにホッとしている様子である。
「そんな神経質になることっすか?」
「あの子達に限っては大丈夫でしょうけど、たまに魔法を教えると勘違いする子もいるのよ。 自分は特別な人間だとか選ばれた存在だとか。 それに魔法を使って犯罪紛いの行為に及ぶ人も居ない訳じゃないもの。」
そんな周囲の大人達の様子が横島は少し神経質過ぎるのではと感じたようだが、穂乃香いわく本来の魔法の情報公開はかなり神経質になる問題らしい。
無論近右衛門達も少女達を直接疑っている訳ではないがハルナのような問題児も居るし、何より魔法により人生が狂うような前例がそれなりにあるようだった。
「藤城先輩、今頃どうしてるかな?」
「そういや向こうに行ってから噂を聞かないな。」
近右衛門達も魔法関連で過去に悔いがあるのか渋い表情をしていたが、あやかの父の政樹と千鶴の父の衛はふと一人の名前を上げて何とも言えない表情をする。
「誰っすか?」
「僕たちの先輩で元関東魔法協会に所属していた人なんだけど、魔法使いは特別な存在だって教えてたメガロメセンブリア出身の先生の教えに染まっちゃってね。」
「先輩はその先生と一緒に二十年前の戦争の時に麻帆良で結成した義勇軍として魔法世界に渡ったんだ。 けど一緒に向こうに行った人の話じゃ終戦まで生き残りはしたらしいけどたいした活躍も出来ずに終わったらしい。」
それは関東魔法協会がまだメガロメセンブリアの支配下にあった頃の話であった。
メガロメセンブリアと一言で言ってもその価値観や考えは人それぞれ違いがあり、中でも特に過激な価値観の先生の教えに染まった人が昔は結構居たらしい。
「優しくていい先輩だったんだけどな。」
藤城先輩という人物は基本的には人当たりがよく評判がよかったらしいが、魔法の才能があったからかメガロ出身の先生に気に入られてからは少し変わってしまったとのこと。
元々メガロメセンブリアが地球側各地に裏の魔法協会と一緒に表の学校を作って行ったのは、自分達の主義主張を広めて魔法使いの子供達を自分達の価値観に染めるのが主な理由の一つにある。
近右衛門達が少女達の魔法の情報公開に神経質になっていたのは、そんな過去からの教訓も大きかった。
「横島君の世界だとどうだったんだい?」
「俺の生まれた世界は魔法とかの分野は元々秘匿されてませんでしたからね。 それなりに世の中に認知されてたんであんまり勝手なこと出来ない環境でしたよ。 実際はいろいろ複雑ですけど、なんというかその分野も社会の一員でしたから。」
いわゆる魔法と教育はこの世界では難しい問題の一つらしく、ふと詠春は横島に元世界である異世界の話を尋ねる。
詠春の問い掛けに横島は少し考える様子を見せてから出来るだけ簡潔に答えるが、この世界の魔法と元世界のオカルトと教育という面で比べると一番の違いはやはり秘匿されてるかどうかであった。
元世界のオカルトも決して誉められたものではなかったが、下手に秘匿して社会から隔離してない分だけマシだったんだと今更ながらに思う。
「興味深いのう。」
「もちろん問題はありましたし、どっちが悪いとか一概に言える問題じゃないっすけどね。」
一方予期せぬタイミングで異世界の話を聞いた近右衛門は、横島の世界の話は今後も何かと参考の一つになるのではと密かに期待していた。