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平和な日常~冬~4

そのまま会合は進むが現状では以前横島側が提供した組織内のブラックリストに関してでさえ、年末年始があったこともありまだほとんど手を付けてない。

東西の協力に関してはそれなりに進んではいるが、現段階ではこれ以上の協力は新たな問題でもない限りはなかなか進まないのが現実だ。

問題など起きないのが一番なのは当然だが、何かの切っ掛けがないと東西の協力は進まないのが悩みの種といえる。


「魔法世界に関しては早ければ今年の夏以降には状況が激変する可能性が高くなる。 悠長なことは言ってられんぞ。」

現状ではあまり性急に動けない魔法協会であるが、そんな近右衛門達を追い込むような発言をしたのは芦優太郎であった。

超鈴音の歴史では今年の夏にはネギ・スプリングフィールドが明日菜達と共に魔法世界に行くことで世界が動いており、この世界でも何らかの問題が起きる可能性は十分にある。


「チッ、歴史の修正力か。」

その言葉に近右衛門達は表情が固まり凍りつくが、横島だけは原因を理解しており渋い表情で舌打ちした。

魔法世界に関しては横島も土偶羅も関与してないので、このままではそれなりに歴史の修正力が働く可能性がある。


「歴史の修正力とは本来あるべき歴史に戻ろうとする力だ。 お前達の世界は神族が世界に介入しない分だけ人間の力が強いが、放置しておくと魔法世界は混乱が起きるだろう。」

歴史の修正力という言葉に近右衛門達がその意味を問う前に芦優太郎が簡潔に説明して今年の夏以降は要注意だと語るが、近右衛門達はそれではあまりに時間がないと頭を抱えてしまう。

実際の魔法世界の限界は約十年先だが問題はその前に起こるはずであり 、特にネギと明日菜の運命が変わった影響は慎重に見極めなければならない。


「まあ神楽坂明日菜は大丈夫だろう。 あの娘は横島の影響が強いからな。 現状程度の歴史の修正力ならばワシと横島には影響がない。 ただしネギ・スプリングフィールドとクルト・ゲーデルと完全なる世界は何かしらの影響があるだろう。」

ただ現状では地球側の世界の危機ではないので歴史の修正力もさほど強くないので横島の霊格と土偶羅の補佐で十分に明日菜は安全であった。

しかしそこで難しいのは横島の影響が及ばぬ場所や人物は影響が出る可能性は十分にあることだろう。


「ちょっと待ってくれ。 ネギ君と完全なる世界はともかく何故クルト君が出てくるんだい?」

まあ本来の歴史ではネギと完全なる世界が夏には戦うはずだったと以前に少し聞いたのでそれは近右衛門達も理解するが、ここで近右衛門達の予想外だったのはクルト・ゲーデルの名前である。


「クルト・ゲーデルは超鈴音の歴史では夏の時点でも失脚してなく、オスティア総督として完全なる世界のテロをネギ・スプリングフィールドと神楽坂明日菜達が犯人だと指名手配し、ネギ・スプリングフィールドを政治利用しようとするのだ。」

予期せぬタイミングで愛弟子ともいえるクルトの名前を聞いた詠春はその訳を問うが、その答えには言葉を失い近右衛門達はまたあの男かと心底面倒くさそうな表情をした。

クルトはその行動原理はメガロメセンブリアの人々の為と高畑に負けず劣らず立派だが、実際の行動は過激過ぎて理解に苦しむのが本音である。


「そいつは政治家なら政治家らしく正攻法でやれんのか?」

「……クルト君には無理でしょう。 彼は有能過ぎるんです。 故に自分が人々を救わなければ誰も救えないとすら思ってるかもしれません。 彼が私達と袂を分かったのも私達のやり方では世界は救えないと考えたからですから。 クルト君では人々を信じるような方法は選べないでしょう。」

昨年はネギの一件で散々苦労しただけに近右衛門は特に表情が険しいが、横島はシンプルにクルトが正攻法で世界を救おうとしないことが少し不思議であった。

本来ならば過激なことをしなくとも、魔法世界の限界を人々に公開して人々と共に対策を考えればいいはずなのだ。

まあ相応の混乱や犠牲は出るだろうが、どのみちを選んでも犠牲や混乱が出ない方法など存在しないのだから。

しかしそんな横島の疑問に答えたのはクルトをよく知る詠春であり、クルトでは人々を信じるような方法は選べないと言い切っていた。



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