龍に触れたその先に(2)

紅音と2人(?)で色々と案を出してみる。
<なんか曰く付きのモノでも貰って、「禍祓い」を依頼してみるとか?>
『嫌だよーそんなの欲しくないし、そもそもある程度のモノなら自分で何とかできるし』
だからと言って自分で何ともできないモノを貰うのはヤバ過ぎるだろ。
どうしたもんかと思いながら、つらつらと「禍祓い」の依頼ページ(というか相談コーナー)を読んでいく。なかなかに繁盛(と言っていいのか?)していて、いろいろな相談がされていた。
『しっかし、匿名とはいえけっこう赤裸々に書いてあるな……ん?』
スクロールしていた手が止まる。それは、ある年配の女性からの依頼だった。
「ぬいぐるみのお祓いをお願い致します。」という言葉から始まっていたその内容は、犬のぬいぐるみに関する事だった。
「孫の誕生日に、孫が大好きな犬のぬいぐるみを贈ったんです。とても喜んでくれていつも一緒に寝ていると話してくれていたのに、ある夜から“ワンちゃんがガブってするの。痛い。怖い。“と泣きながら起きてきてしまうというのです。
それだけではなく、孫の腕やお腹に犬の牙で噛まれた跡まで残っているらしいのです。嫁には“ぬいぐるみのせいだ“と責められ、こちらも“ぬいぐるみがそんなこと出来るわけがない“と強く言ったのですが結局ぬいぐるみは突き返されてしまいました。
戻ってきたぬいぐるみは私の部屋に置いておいたのですが、夜寝ていると獣の唸り声のようなものが聞こえるのです。びっくりして明かりをつけてぬいぐるみを見たのですが、孫に贈った時より目が吊り上がって口も裂けているような気がして、怖くて押し入れにしまい込んでしまいました。今も夜な夜な唸り声が聞こえて、獣のような臭いもしている気がいたします。
もし、ぬいぐるみに何かが取り憑いているのなら、どうかお祓いをお願いしたいのです。」
“何かに取り憑かれたぬいぐるみ“という、ある意味ありがちな内容だったが何となく気になった。で、こういう時の私の勘は外れない。
『これ、何かありそうだな』
<見つけたか?…犬のぬいぐるみ…犬か…>
『…??紅音、犬は苦手だっけ?』
<いや、嫌いとか苦手ってわけじゃねえ。面白い巡り合わせだなと思っただけだ。>
『昔、龍導院さんと犬絡みで何かあったってこと?』
<……お前は勘が良過ぎんだよ>
呆れたような声で紅音が呟いた。
<ま、龍導院がこの依頼というか相談を受けるかどうかは分からんが、追ってみるのも悪くねえかもな>
『そうだね。でも受けるような気がする。』
<そうだな>
紅音の2本の尻尾が、しゅるんっと私の首元に巻きついた感覚がした。高級なベルベットのように、なめらかで触り心地が良い。
『何とかこの後の動向が分かればいいんだけどな…』
紅音の尻尾をさらさらと撫でながらもう一度サイトをチェックしていく。TOPページにあった(「禍祓い 名千へのご依頼相談」始めました)のお知らせの日付で、これが開設されたのが最近の話だということが分かる。相談内容によってはその場で回答して終わっているのもある。たぶん、これを管理している僧侶さんが答えているんだろう。で、ちゃんとした回答がないものが本当にヤバいもので、依頼主にDMか何かでお祓い場所とか知らせて龍導院名千さんにやってもらってるんだろうな。
幸い(?)この「ぬいぐるみ」の相談は送られたばかりでまだ何の回答もされてなかった。ってことは、これから動き始めるってことだ。
とりあえず、自分の勘に従って「ぬいぐるみ」をチェックしていくことにしようと決めた。
そして。
「ぬいぐるみ」への回答はそれから三日後に着いた。
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