“陰“と“陽“の狭間にあるもの(3)
某月某日。
レッドくんに伝えてからしばらくして名千さんに連絡をもらった私は、指定された某有名な喫茶店で二人と向き合って座っていた。いつも混んでるところだけれどこの時間は比較的空いてるみたいで、あまり人目につかない奥の席に座ることができた。
名千さんはコーヒー、レッドくんはココアとサンドイッチ、私はカフェオーレをそれぞれ頼み、一息ついたところで名千さんが話し始めた。
「こんな所までお呼び立てしてしまってすみません。来ていただけて良かったです」
名千さんが頭を下げる。
『いえいえ、レッドくんがちゃんと伝えてくれたんだなって安心しました』
「まさか連絡先を書くの忘れたとは夢にも思わず……大変失礼いたしました」
「名千ねえっっ!!“だあーーっっっ!!“って言って頭抱えとったっっっ!!!」
レッドくんがニコニコしながら教えてくれる。何というか、想像してた通りのリアクションで思わず笑ってしまう。
「レッドくんっ!!そんなこと言わんでもええてっ!紫音さんも笑わんでくださいっマジで落ち込んだんですから……」
しょぼくれた名千さんは、失礼だけどちょっと可愛く見えてしまった。
『笑うなんて失礼でしたね、すみません』
「あっっいやいやっ!謝らんでくださいっ元はと言えば俺が忘れとったのが悪いんでっ!」
お互い頭を下げあっているうちに注文していたものが運ばれてきたので、謝罪合戦を中断(?)して名千さんはコーヒーを、私はカフェオーレを飲んだ。
__________________________________________________
「で」
サンドイッチを美味しそうに頬張るレッドくんを横目に見ながら、名千さんが話し始めた。
「まずはグッズを買っていただいてありがとうございます。あと、これがこないだの謝礼です」
そう言って、取り出した封筒を私の方に差し出してくる。
『申し訳ありませんが、これは受け取れません』
「えっっ?!何でですか?!」
『“禍祓い“をやり遂げたのは名千さんですし、私は勝手に首を突っ込んだだけですから』
驚いている名千さんに封筒を押し返す。
「いや、でも俺がもらう訳にもいかんし……」
『あ!そしたら、新しいグッズが出た時にそれ使ってください』
「え?」
『新しいブレスレットが出た時とか、名千さんのアクスタを作った時とか。今もすっごい美形な方のアクスタがありますよね?』
……なんだ??“美形な方“と言った時、一瞬だけ名千さんの表情が歪んだ気がした。けれどすぐに元の穏やかな表情に戻る。
「ほいじゃあこれは俺が預かっときます。…けど俺のアクスタなんか作っても買う人おらんですよ」
苦笑しながら封筒を収めてくれた。
『そんなことないですよ、私が買います。このブレスレットもお気に入りだし』
「もの好きですね」
『もの好きですよ』
「???」
私がニヤッと笑うと、名千さんもニヤッと笑った。不思議そうにこっちを見てるレッドくんにも笑いかける。何となくほんわかとした空気が流れる。
______________________________________________
「……ほいで。ここからが本題なんですが」
ここからは真面目な話だとばかりに、表情を引き締めた名千さんがこちらに身を乗り出してきた。
『“誤解を解きたい“って事でしたね?』
「そうです。実はこのあと“禍祓い“の依頼が入ってるんですが、その前に会ってもらいたい……お??」
名千さんのスマホが鳴った。ディスプレイに表示された名前を見て怪訝な顔をしている。
「ちょっと失礼します」
そう言うと、足早に店外へ出て行ってしまった。サンドイッチを食べ終え、退屈そうにメニューをパタパタしているレッドくんと目が合う。
『デザート食べる??』
「食べるっっっ!!!ソフトクリーム食べたいっっ!!」
呼び鈴を押して注文すると、すぐに大きなソフトクリームが運ばれてきた。目を輝かせながら美味しそうに食べるレッドくんを見てるのはやっぱり楽しい。
『名千さん、お仕事忙しいのかな??』
外で電話をしている名千さんを眺めながらレッドくんに聞いてみる。
「わかんないけど、ちょっと唸っとった」
レッドくんの言葉に、私の感覚がざわっと波立つ。
『え、いつ唸ってたの?』
「んーーとっ、紫音さんと会った時っっ!」
あの日、名千さんに何かあったのだろうか?
『そっか。名千さんが唸ってる時、レッドくんはどうしてるの?』
「部屋には入っちゃかんって言われとるもんで、なんかっ…なんかモヤモヤするけどテレビのとこにおるっっ!」
『心配になっちゃうよね』
「しんぱい…“しんぱい“って言うのかこれ??!」
レッドくんが金の瞳をぱちくりさせる。
……この子(鬼なのに“子“っていうのはおかしいかもしれないけれど)は、どこからか“出てきたばかり“なのかもしれない。何となくそんな気がした。
『…そうだね、一緒にいる人が困ってたり悲しそうなのを見て心が痛かったりモヤモヤするのは、心配してるって事だと思うよ。名千さんは優しい?』
「アニメ見してくれるしっっ!ごはん作ってくれるっっ!!!チャーハンとかでらうまああなんだっっっ!!!」
ソフトクリームをすくうスプーンをぶんぶん振りながら力説するレッドくんはとても嬉しそうで、名千さんといるのが楽しいんだとわかる。
この子なら。
『レッドくん』
「なにぃ???」
『心配な時は、お部屋には入れんかもしれんけど名千さんのそばにいてね』
「???よーわからんけど分かったっっっ!!!!」
レッドくんがペカっと笑う。
二人がどんな経緯で一緒にいることになったのかは知らないし知りたいとも思わないけれど、名千さんもこの屈託のない真っ直ぐな明るさに癒されてるといいなと思う。
……あまりに眩しくて戸惑ってしまう時もあるかもだけど。
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レッドくんと話しているうちに、電話を終えた名千さんが戻ってきた。
「お待たせしました…って、レッドくんソフトクリーム頼んだの??!」
『あ、これは私が頼んだんです。お電話はもう大丈夫なんですか?』
大きなソフトクリームを食べているレッドくんを見て、何か言いたげな名千さんの気を逸らすように聞いてみる。私の方に向き直った名千さんは、困ってるような迷ってるような顔をしていた。
外がかなり暑かったのか、薄い色のサングラスを外しおしぼりでゴシゴシと顔を拭く。
「ちょっと先方の都合で“禍祓い“の時間が予定より早くなってまって、その時間だと紫音さんに会って欲しかった人が動けないんです」
「円覚さん来れんの???」
レッドくんが名千さんの顔を覗き込む。
「いや、来れんことは無いけど時間が合わんらしい。……あ、円覚ってのは龍導院の坊さんなんですが、“禍祓い“の依頼なんかを取り仕切ってくれとるんです」
『この前レッドくんに少しだけ聞いたので、何となくですが分かります。その方の誤解を解きたいって事ですか?』
「誤解というか、これをほっとくと紫音さんにもご迷惑がかかってしまうような思い込みというか…」
何とも複雑な表情の名千さんを見て、私が予想してたものがほぼ合ってるんだろうなと感じた。
『名千さんも困りますよね、“そんな関係じゃないのに“って感じですかね?』
「は??!!」
名千さんの目が大きく見開かれた。
やらかした。
先走って言うんじゃなかった。名千さんの視線から逃げるように俯いてしまう。
(なんでそこまで分かるの?!なんか気持ちわるーい!!)
嫌な記憶がよみがえる。これで気味悪がられたらおしまいだ……。気まずくなる前に謝って帰ろう。
「そうなんですよっっっ!!よお分かりましたねっっ!!」
『わぁっっ!びっくりしたっっ!』
めちゃくちゃ嬉しそうな声が聞こえてふと顔を上げると、名千さんの綺麗な蒼い瞳が至近距離にあって思わず声を上げてしまった。この人、自分が結構な美形だってこと自覚してないだろっっ!心臓止まるかと思ったわっっ!!
それにこの反応はなに?!思ってたのと全然違うんだけど??!!
「名千ダメじゃんっっ!!紫音さんビビっとるよ!!???」
「あ?!ああっ!すみませんっっ!どうやって説明しようかと思っとったもんで、なんちゅうか助かりました」
レッドくんに嗜められて我に返ったのか、慌ててソファーに座り直した名千さんが申し訳なさそうに笑った。
『まあ、人によってはだいぶデリケートな話になっちゃいますもんね……』
「そうなんですよー、紫音さんにお相手がおったらその方にも大変に失礼な話だで、きちんと顔を合わせて説明したほうがいいってことで予定を立てたんですが…」
……凄いな。
“何の説明もしていなくても分かる“のを当然のように受け入れてくれたのにも驚いたけれど、私に何の説明もなく話を進めていくのにも驚いて、名千さんの顔をまじまじと見つめてしまった。
私がすごい見当違いなこと考えてたらどうするつもりなんだ……。
「……紫音さん??俺の顔になんかついとるんですか??」
私の視線に気づいた名千さんが話すのをやめて不思議そうに見てくる。
『確認なんですけど、「円覚さんは名千さんと私がお付き合いをしてるんじゃないかと思ってる」ってことでいいんですよね??』
「そうですよ??」
……いや、あの、“何を今さら“みたいな顔されてるけど、ちゃんとした説明してもらってないんだが??
まあいっか。この様子なら間違ってないわ。……たぶん。
反応が違ったのも、名千さんが“分かる“側の人だからだろうな。
『分かりました。そしたらこのあと“禍祓い“もあることですし、円覚さんにお会いできないのであれば私は出直した方がいいですよね』
「いや、何度もお時間いただくのもよろしくないし、もしかしたら円覚さんが間に合うかもしれん。申し訳ないですがこのままお付き合いいただけるとありがたいです」
『“禍祓い“もですか?』
「はい、できれば。で、お手伝いの依頼料としてこれを……」
『いや、受け取りませんからね?!』
「あ、やっぱりダメですか」
さっきの謝礼が入った封筒をしれっと渡そうとしてくる名千さんを軽く睨んでみせると、何だかイタズラに失敗した子供のような笑顔を向けられた。……美形がその顔するのは反則だろ。
『受け取りませんが、お邪魔でなければお手伝いさせていただきます』
「ありがとうございます、助かります」
名千さんが少しほっとした笑顔になった。
こうして、私は再び“禍祓い“に関わることになったのだった。
レッドくんに伝えてからしばらくして名千さんに連絡をもらった私は、指定された某有名な喫茶店で二人と向き合って座っていた。いつも混んでるところだけれどこの時間は比較的空いてるみたいで、あまり人目につかない奥の席に座ることができた。
名千さんはコーヒー、レッドくんはココアとサンドイッチ、私はカフェオーレをそれぞれ頼み、一息ついたところで名千さんが話し始めた。
「こんな所までお呼び立てしてしまってすみません。来ていただけて良かったです」
名千さんが頭を下げる。
『いえいえ、レッドくんがちゃんと伝えてくれたんだなって安心しました』
「まさか連絡先を書くの忘れたとは夢にも思わず……大変失礼いたしました」
「名千ねえっっ!!“だあーーっっっ!!“って言って頭抱えとったっっっ!!!」
レッドくんがニコニコしながら教えてくれる。何というか、想像してた通りのリアクションで思わず笑ってしまう。
「レッドくんっ!!そんなこと言わんでもええてっ!紫音さんも笑わんでくださいっマジで落ち込んだんですから……」
しょぼくれた名千さんは、失礼だけどちょっと可愛く見えてしまった。
『笑うなんて失礼でしたね、すみません』
「あっっいやいやっ!謝らんでくださいっ元はと言えば俺が忘れとったのが悪いんでっ!」
お互い頭を下げあっているうちに注文していたものが運ばれてきたので、謝罪合戦を中断(?)して名千さんはコーヒーを、私はカフェオーレを飲んだ。
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「で」
サンドイッチを美味しそうに頬張るレッドくんを横目に見ながら、名千さんが話し始めた。
「まずはグッズを買っていただいてありがとうございます。あと、これがこないだの謝礼です」
そう言って、取り出した封筒を私の方に差し出してくる。
『申し訳ありませんが、これは受け取れません』
「えっっ?!何でですか?!」
『“禍祓い“をやり遂げたのは名千さんですし、私は勝手に首を突っ込んだだけですから』
驚いている名千さんに封筒を押し返す。
「いや、でも俺がもらう訳にもいかんし……」
『あ!そしたら、新しいグッズが出た時にそれ使ってください』
「え?」
『新しいブレスレットが出た時とか、名千さんのアクスタを作った時とか。今もすっごい美形な方のアクスタがありますよね?』
……なんだ??“美形な方“と言った時、一瞬だけ名千さんの表情が歪んだ気がした。けれどすぐに元の穏やかな表情に戻る。
「ほいじゃあこれは俺が預かっときます。…けど俺のアクスタなんか作っても買う人おらんですよ」
苦笑しながら封筒を収めてくれた。
『そんなことないですよ、私が買います。このブレスレットもお気に入りだし』
「もの好きですね」
『もの好きですよ』
「???」
私がニヤッと笑うと、名千さんもニヤッと笑った。不思議そうにこっちを見てるレッドくんにも笑いかける。何となくほんわかとした空気が流れる。
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「……ほいで。ここからが本題なんですが」
ここからは真面目な話だとばかりに、表情を引き締めた名千さんがこちらに身を乗り出してきた。
『“誤解を解きたい“って事でしたね?』
「そうです。実はこのあと“禍祓い“の依頼が入ってるんですが、その前に会ってもらいたい……お??」
名千さんのスマホが鳴った。ディスプレイに表示された名前を見て怪訝な顔をしている。
「ちょっと失礼します」
そう言うと、足早に店外へ出て行ってしまった。サンドイッチを食べ終え、退屈そうにメニューをパタパタしているレッドくんと目が合う。
『デザート食べる??』
「食べるっっっ!!!ソフトクリーム食べたいっっ!!」
呼び鈴を押して注文すると、すぐに大きなソフトクリームが運ばれてきた。目を輝かせながら美味しそうに食べるレッドくんを見てるのはやっぱり楽しい。
『名千さん、お仕事忙しいのかな??』
外で電話をしている名千さんを眺めながらレッドくんに聞いてみる。
「わかんないけど、ちょっと唸っとった」
レッドくんの言葉に、私の感覚がざわっと波立つ。
『え、いつ唸ってたの?』
「んーーとっ、紫音さんと会った時っっ!」
あの日、名千さんに何かあったのだろうか?
『そっか。名千さんが唸ってる時、レッドくんはどうしてるの?』
「部屋には入っちゃかんって言われとるもんで、なんかっ…なんかモヤモヤするけどテレビのとこにおるっっ!」
『心配になっちゃうよね』
「しんぱい…“しんぱい“って言うのかこれ??!」
レッドくんが金の瞳をぱちくりさせる。
……この子(鬼なのに“子“っていうのはおかしいかもしれないけれど)は、どこからか“出てきたばかり“なのかもしれない。何となくそんな気がした。
『…そうだね、一緒にいる人が困ってたり悲しそうなのを見て心が痛かったりモヤモヤするのは、心配してるって事だと思うよ。名千さんは優しい?』
「アニメ見してくれるしっっ!ごはん作ってくれるっっ!!!チャーハンとかでらうまああなんだっっっ!!!」
ソフトクリームをすくうスプーンをぶんぶん振りながら力説するレッドくんはとても嬉しそうで、名千さんといるのが楽しいんだとわかる。
この子なら。
『レッドくん』
「なにぃ???」
『心配な時は、お部屋には入れんかもしれんけど名千さんのそばにいてね』
「???よーわからんけど分かったっっっ!!!!」
レッドくんがペカっと笑う。
二人がどんな経緯で一緒にいることになったのかは知らないし知りたいとも思わないけれど、名千さんもこの屈託のない真っ直ぐな明るさに癒されてるといいなと思う。
……あまりに眩しくて戸惑ってしまう時もあるかもだけど。
_________________________________________________
レッドくんと話しているうちに、電話を終えた名千さんが戻ってきた。
「お待たせしました…って、レッドくんソフトクリーム頼んだの??!」
『あ、これは私が頼んだんです。お電話はもう大丈夫なんですか?』
大きなソフトクリームを食べているレッドくんを見て、何か言いたげな名千さんの気を逸らすように聞いてみる。私の方に向き直った名千さんは、困ってるような迷ってるような顔をしていた。
外がかなり暑かったのか、薄い色のサングラスを外しおしぼりでゴシゴシと顔を拭く。
「ちょっと先方の都合で“禍祓い“の時間が予定より早くなってまって、その時間だと紫音さんに会って欲しかった人が動けないんです」
「円覚さん来れんの???」
レッドくんが名千さんの顔を覗き込む。
「いや、来れんことは無いけど時間が合わんらしい。……あ、円覚ってのは龍導院の坊さんなんですが、“禍祓い“の依頼なんかを取り仕切ってくれとるんです」
『この前レッドくんに少しだけ聞いたので、何となくですが分かります。その方の誤解を解きたいって事ですか?』
「誤解というか、これをほっとくと紫音さんにもご迷惑がかかってしまうような思い込みというか…」
何とも複雑な表情の名千さんを見て、私が予想してたものがほぼ合ってるんだろうなと感じた。
『名千さんも困りますよね、“そんな関係じゃないのに“って感じですかね?』
「は??!!」
名千さんの目が大きく見開かれた。
やらかした。
先走って言うんじゃなかった。名千さんの視線から逃げるように俯いてしまう。
(なんでそこまで分かるの?!なんか気持ちわるーい!!)
嫌な記憶がよみがえる。これで気味悪がられたらおしまいだ……。気まずくなる前に謝って帰ろう。
「そうなんですよっっっ!!よお分かりましたねっっ!!」
『わぁっっ!びっくりしたっっ!』
めちゃくちゃ嬉しそうな声が聞こえてふと顔を上げると、名千さんの綺麗な蒼い瞳が至近距離にあって思わず声を上げてしまった。この人、自分が結構な美形だってこと自覚してないだろっっ!心臓止まるかと思ったわっっ!!
それにこの反応はなに?!思ってたのと全然違うんだけど??!!
「名千ダメじゃんっっ!!紫音さんビビっとるよ!!???」
「あ?!ああっ!すみませんっっ!どうやって説明しようかと思っとったもんで、なんちゅうか助かりました」
レッドくんに嗜められて我に返ったのか、慌ててソファーに座り直した名千さんが申し訳なさそうに笑った。
『まあ、人によってはだいぶデリケートな話になっちゃいますもんね……』
「そうなんですよー、紫音さんにお相手がおったらその方にも大変に失礼な話だで、きちんと顔を合わせて説明したほうがいいってことで予定を立てたんですが…」
……凄いな。
“何の説明もしていなくても分かる“のを当然のように受け入れてくれたのにも驚いたけれど、私に何の説明もなく話を進めていくのにも驚いて、名千さんの顔をまじまじと見つめてしまった。
私がすごい見当違いなこと考えてたらどうするつもりなんだ……。
「……紫音さん??俺の顔になんかついとるんですか??」
私の視線に気づいた名千さんが話すのをやめて不思議そうに見てくる。
『確認なんですけど、「円覚さんは名千さんと私がお付き合いをしてるんじゃないかと思ってる」ってことでいいんですよね??』
「そうですよ??」
……いや、あの、“何を今さら“みたいな顔されてるけど、ちゃんとした説明してもらってないんだが??
まあいっか。この様子なら間違ってないわ。……たぶん。
反応が違ったのも、名千さんが“分かる“側の人だからだろうな。
『分かりました。そしたらこのあと“禍祓い“もあることですし、円覚さんにお会いできないのであれば私は出直した方がいいですよね』
「いや、何度もお時間いただくのもよろしくないし、もしかしたら円覚さんが間に合うかもしれん。申し訳ないですがこのままお付き合いいただけるとありがたいです」
『“禍祓い“もですか?』
「はい、できれば。で、お手伝いの依頼料としてこれを……」
『いや、受け取りませんからね?!』
「あ、やっぱりダメですか」
さっきの謝礼が入った封筒をしれっと渡そうとしてくる名千さんを軽く睨んでみせると、何だかイタズラに失敗した子供のような笑顔を向けられた。……美形がその顔するのは反則だろ。
『受け取りませんが、お邪魔でなければお手伝いさせていただきます』
「ありがとうございます、助かります」
名千さんが少しほっとした笑顔になった。
こうして、私は再び“禍祓い“に関わることになったのだった。
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