猫の休息〜side紫音・紅音〜(1/2)
『で??結局名千さんとの馴れ初めは教えてくれないの??』
<お前なあ、「馴れ初め」とか別に名千と付き合ってたわけじゃねえんだぞ!?>
『そりゃそーでしょ、付き合ってたら逆に怖いわ』
あの“龍に触れた“日から二週間。
少し甘めにしたカフェオレを飲みながら紅音を問い詰めて(?)いた。紅音の方から名千さんとのことを話してくれるのかと敢えて聞かずにいたのに、全然話す気配がなかったので私の方が痺れを切らしてしまったのだ。
<だいたいなあ、これはお前が“穢“にやられて長いこと意識がなかった時の話だからな?!>
『そんなことあった?…ってか「お前」って言うな。』
<記憶がなくなるほどのダメージを受けてたんだよ。あの時は本気でヤバかったんだぞ…それに、名千の記憶は消してあるからな。本当は声をかけるべきじゃなかったが嬉しくてつい、な>
ぽそっと寂しそうな声で紅音が呟いた。…ああ、それであの時すぐに引っ込んだのか。
(記憶を消さなきゃいけないようなことだったなら、聞かない方が良かったかなあ…)
予想外の返答に罪悪感を覚えてしまった。紅音もそれを感じ取ったのか、少しの間、気まずい静寂が流れた。
<っつーか紫音。いくら自分の部屋ん中だからって、気イ抜き過ぎじゃねーか?>
気まずい空気を変えたかったのか話を変えたかったのかどっちとも変えたかったのか、紅音が呆れた声で私の姿にツッコミを入れてきた。…無理もない。耳と尻尾をてろーんっと出して寛いでいる今の状態を誰かに見られたらエラいこっちゃだもん。
『たまにはいいじゃんかー、紅音のしっぽ、触り心地良くって癒されるんだよね♪』
<ったく…。こんなことできるヤツ、今までいなかったんだがな…>
『そうなの??』
今、私が“紅音“と呼んでいる存在は、【入り込んだ人の源】になっているもの(私の場合は白猫)に姿を変えて、その人の内(なか)に棲むことができるらしい。といっても、どんな人間の中にでも入り込める訳ではなく、入ってもほとんどの人は気づかない。気づいたとしても、大半は「自分がおかしくなったんじゃないか」と思い始めるからあまり長居(って言うんだろうか?)はしなかったようだ。(<急に自分の中に蛇だのネズミだのが見えたら、そう思っても仕方ねえだろ?>なんて言われたら、そりゃそうだとしか答えられない。)
この【入り込んだ状態】を受け入れることができた数少ない人間の中で、自分と意思疎通ができるのもここまで長く棲むのも、紅音にとっては私が初めてらしかった。それに、本来ならこんな風に変容した体の一部を、棲処(すみか)としている人間(私)の意思では出せないようで(実際、私も初めのうちは出せなかった)、なんで私が出せるようになったのかは私自身にも分からない。
<大体な、紫音は俺という存在に馴染み過ぎなんだよ。“猿“だの“狸“だのと呼ばれてる奴は見たことあるが、名前をつけられたのは初めてだぜ>
まあ、私の場合は猫だったから受け入れやすかったってのもあるんだろうな。猫大好きだし。
『だって、“猫“って呼ぶより名前をつけた方が呼びやすいし、紅音も気に入ってるんでしょ?…ってか待って。猿とか狸とか、まさかそれ戦国時代??』
ものすごく聞き覚えのある動物の名前に、思わず戦国武将の姿を思い浮かべてしまった。
<さあ、どうだったかな?呼んでる奴も呼ばれてる奴らも遠目に見てただけだからな>
紅音が上機嫌にゴロゴロと喉を鳴らす。……うまいこと話を逸らされた気もするけど、まあいっか。
『あ、そういえばお寺に頼んでたグッズが届いてたわ』
<グッズ??寺で売ってんのか??>
『そう、龍導院のお寺で売ってる。えらい美形のアクスタとかもあったよー。なんか“美しすぎる僧侶“って有名な方もいるみたいだからその人なのかな?剃髪してないビジュだったから珍しいなーって。』
<まさか、そのアクスタってやつを買ったのか?!>
紅音の尻尾が驚いたようにぴょこんっと跳ねた。
『いやいや美形は好きだけど、さすがにアクスタは買わないって』
宅配の箱から丁寧に梱包されたグッズを慎重に取り出す。
『これ。名千さんがつけてたのと少し似てるかな?』
私が買ったのは、名千さんの瞳のような蒼い石と半透明の白い石が交互に連なっている、とても綺麗なブレスレットだ。陽の光を受けてキラキラと輝いている。
『すごーい!画像で見たのよりも綺麗だ♪…お、メッセージカードも入ってる。これで直筆とかだったら嬉しいかも』
わくわくしながらカードを開くと、ほのかに良い香りがした。お香かな?好みな香りだ。よくある「買ってくれてありがとう」的なやつかなと読んでいく。………なんか違う。
“お買い上げありがとうございます“と書いてはあるがグッズに関してはその一言だけで(というか、いつもならこれで終わりなんだろうな)、あとは私信のような相談のようなものが書いてあった。
<お前なあ、「馴れ初め」とか別に名千と付き合ってたわけじゃねえんだぞ!?>
『そりゃそーでしょ、付き合ってたら逆に怖いわ』
あの“龍に触れた“日から二週間。
少し甘めにしたカフェオレを飲みながら紅音を問い詰めて(?)いた。紅音の方から名千さんとのことを話してくれるのかと敢えて聞かずにいたのに、全然話す気配がなかったので私の方が痺れを切らしてしまったのだ。
<だいたいなあ、これはお前が“穢“にやられて長いこと意識がなかった時の話だからな?!>
『そんなことあった?…ってか「お前」って言うな。』
<記憶がなくなるほどのダメージを受けてたんだよ。あの時は本気でヤバかったんだぞ…それに、名千の記憶は消してあるからな。本当は声をかけるべきじゃなかったが嬉しくてつい、な>
ぽそっと寂しそうな声で紅音が呟いた。…ああ、それであの時すぐに引っ込んだのか。
(記憶を消さなきゃいけないようなことだったなら、聞かない方が良かったかなあ…)
予想外の返答に罪悪感を覚えてしまった。紅音もそれを感じ取ったのか、少しの間、気まずい静寂が流れた。
<っつーか紫音。いくら自分の部屋ん中だからって、気イ抜き過ぎじゃねーか?>
気まずい空気を変えたかったのか話を変えたかったのかどっちとも変えたかったのか、紅音が呆れた声で私の姿にツッコミを入れてきた。…無理もない。耳と尻尾をてろーんっと出して寛いでいる今の状態を誰かに見られたらエラいこっちゃだもん。
『たまにはいいじゃんかー、紅音のしっぽ、触り心地良くって癒されるんだよね♪』
<ったく…。こんなことできるヤツ、今までいなかったんだがな…>
『そうなの??』
今、私が“紅音“と呼んでいる存在は、【入り込んだ人の源】になっているもの(私の場合は白猫)に姿を変えて、その人の内(なか)に棲むことができるらしい。といっても、どんな人間の中にでも入り込める訳ではなく、入ってもほとんどの人は気づかない。気づいたとしても、大半は「自分がおかしくなったんじゃないか」と思い始めるからあまり長居(って言うんだろうか?)はしなかったようだ。(<急に自分の中に蛇だのネズミだのが見えたら、そう思っても仕方ねえだろ?>なんて言われたら、そりゃそうだとしか答えられない。)
この【入り込んだ状態】を受け入れることができた数少ない人間の中で、自分と意思疎通ができるのもここまで長く棲むのも、紅音にとっては私が初めてらしかった。それに、本来ならこんな風に変容した体の一部を、棲処(すみか)としている人間(私)の意思では出せないようで(実際、私も初めのうちは出せなかった)、なんで私が出せるようになったのかは私自身にも分からない。
<大体な、紫音は俺という存在に馴染み過ぎなんだよ。“猿“だの“狸“だのと呼ばれてる奴は見たことあるが、名前をつけられたのは初めてだぜ>
まあ、私の場合は猫だったから受け入れやすかったってのもあるんだろうな。猫大好きだし。
『だって、“猫“って呼ぶより名前をつけた方が呼びやすいし、紅音も気に入ってるんでしょ?…ってか待って。猿とか狸とか、まさかそれ戦国時代??』
ものすごく聞き覚えのある動物の名前に、思わず戦国武将の姿を思い浮かべてしまった。
<さあ、どうだったかな?呼んでる奴も呼ばれてる奴らも遠目に見てただけだからな>
紅音が上機嫌にゴロゴロと喉を鳴らす。……うまいこと話を逸らされた気もするけど、まあいっか。
『あ、そういえばお寺に頼んでたグッズが届いてたわ』
<グッズ??寺で売ってんのか??>
『そう、龍導院のお寺で売ってる。えらい美形のアクスタとかもあったよー。なんか“美しすぎる僧侶“って有名な方もいるみたいだからその人なのかな?剃髪してないビジュだったから珍しいなーって。』
<まさか、そのアクスタってやつを買ったのか?!>
紅音の尻尾が驚いたようにぴょこんっと跳ねた。
『いやいや美形は好きだけど、さすがにアクスタは買わないって』
宅配の箱から丁寧に梱包されたグッズを慎重に取り出す。
『これ。名千さんがつけてたのと少し似てるかな?』
私が買ったのは、名千さんの瞳のような蒼い石と半透明の白い石が交互に連なっている、とても綺麗なブレスレットだ。陽の光を受けてキラキラと輝いている。
『すごーい!画像で見たのよりも綺麗だ♪…お、メッセージカードも入ってる。これで直筆とかだったら嬉しいかも』
わくわくしながらカードを開くと、ほのかに良い香りがした。お香かな?好みな香りだ。よくある「買ってくれてありがとう」的なやつかなと読んでいく。………なんか違う。
“お買い上げありがとうございます“と書いてはあるがグッズに関してはその一言だけで(というか、いつもならこれで終わりなんだろうな)、あとは私信のような相談のようなものが書いてあった。
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