龍に触れたその先に(7)
人は。
自分の見たいようにしか見ないし、信じたいようにしか信じないものだ。
存在する“事実“はたった一つだけなのに、“真実“はそれぞれが捉え「見た・信じた」数だけ増えていく。
お菓子や服を買ったり、いろんな事を教えたり。“事実“はそれだけなのに。
女性にとっては「孫のために」「良かれと思って」やっていたことも、お嫁さんには「善意の押しつけ」で「過干渉」だったのかも知れない。二人にとって“真実“とはそれぞれ「自分が感じた、信じたもの」で。
そのすれ違いが積み重なり大きくなり、不満から憎しみとなり、やがて黒い“穢“となってしまったのだ。
(アイツガ邪魔スルカラ悪インダ!)
「お前、そんなに嫁が憎いならそっちに怒りが向くだろうに、何で可愛がっとる孫を傷つけたんだ?」
名千さんが“意味が分からん“みたいな顔で問いただす。
新たな“穢“を取り込んだのか、ぬいぐるみは真っ黒な息を吐きながら唸るような声で答える。
(アイツガイチバン愛シテルモノヲ壊セバ、アイツノ悲シミヲ喰エルカラナ)
喰える…??
「は?!壊すってどういうことだっっ?!あんたも孫を愛しとったんじゃないのか?!」
名千さんの言葉を聞いた瞬間、ぬいぐるみがぞっとするような邪悪な顔で笑った。
(私ノ物ニナラナイ孫ナンカ要ラナイ)
「はあっ?!何だそれっっ??!!」
『待って!名千さんっ違いますっっ!』
「違うって、何が違うんだ?!」
「違う!!そんなこと思ってないっっ!!私じゃないっ!私じゃないいっっ!!」
女性の悲痛な叫びがカオスな空気を切り裂き、一瞬、全てのものが止まった…気がした。
この状況を打ち破ったのはレッドくんだった。
「ばあちゃん!!頭痛いのか??!!どうしようっっ名千!!!」
助けを求めるようなレッドくんの声が聞こえて、止まっていた時間が動き出したようだった。
「レッドくん!!大丈夫かっ?!」
慌てて走っていく名千さんに遅れないように走る。…マズいことにぬいぐるみも追いかけてくる気配がする。走りながら振り向くと思った以上に近い。追いつかれる!と身構えた私に目もくれず、軽々と飛び越えて名千さんへと一直線に向かっていく。
こいつ。名千さんだけ狙ってんじゃねーかっっ!ふざけんなよ!
「名千っっ!!うしろっうしろーーっっ!!」
金の眼を大きく見開いたレッドくんが、名千さんの背後を指さして叫ぶ。振り向いた名千さんの蒼い眼も大きく見開かれている。そのまま固まってしまった名千さんの腕を思いっきり引っ張って二人して地面に倒れ込んでしまう。
標的が急に消えたせいか、体勢を崩したぬいぐるみがゴロゴロと転がっていく。
「あっぶねっっ!」
「名千!!おばさん!!大丈夫??!!」
「レッドくん!何ちゅう失礼なこと言っとるの?!ちゃんとお名前で呼ばんといかんでしょおっ…って、あれ?お名前なんでしたっけ?」
…なんかちょいちょい面白いなこの人。
見た目厳ついのに、何だかとても“柔らかい“感じがする。
『すみません、まだ名乗ってなかったですね。紫音と申します。急に腕引っ張ちゃって申し訳なかったです。』
「いやいや、助けてもらってありがとうございます。お怪我なかったですか?」
『大丈夫です。名千さんこそ倒れた時に庇ってくれてありがとうございます。大丈夫でした?』
「あー、お腹は弱いけどガタイは良いんで大丈夫です!」
……関係あるんかそれ。ほんとに面白いな。
何だかほんわかしてしまった空気をぶち壊すような、獣の咆哮が聞こえた。
「…まずはあいつを祓わんといかんすね。」
名千さんが蒼く光りはじめた。
綺麗だな。
『紅音。ずっと見てたんでしょ。』
<ふっ。バレてたか。>
『“ふっ“とか笑ってる場合じゃないんだけど?…ここは名千さんにお任せしてもいいの?』
「うわあ!!ビカビカ光っとる名千だ!!」
紅音の答えを聞く前に、レッドくんの嬉しそうな声が響いた。レッドくんも名千さんが光って見えてる?
そして、ぬいぐるみに向かって走っていく名千さんを後押しするように両手を振り上げて叫ぶ。
「いっけえええっっっ!!名千パンチだあああ!!」
……え。名千パンチ……パンチ???
自分の見たいようにしか見ないし、信じたいようにしか信じないものだ。
存在する“事実“はたった一つだけなのに、“真実“はそれぞれが捉え「見た・信じた」数だけ増えていく。
お菓子や服を買ったり、いろんな事を教えたり。“事実“はそれだけなのに。
女性にとっては「孫のために」「良かれと思って」やっていたことも、お嫁さんには「善意の押しつけ」で「過干渉」だったのかも知れない。二人にとって“真実“とはそれぞれ「自分が感じた、信じたもの」で。
そのすれ違いが積み重なり大きくなり、不満から憎しみとなり、やがて黒い“穢“となってしまったのだ。
(アイツガ邪魔スルカラ悪インダ!)
「お前、そんなに嫁が憎いならそっちに怒りが向くだろうに、何で可愛がっとる孫を傷つけたんだ?」
名千さんが“意味が分からん“みたいな顔で問いただす。
新たな“穢“を取り込んだのか、ぬいぐるみは真っ黒な息を吐きながら唸るような声で答える。
(アイツガイチバン愛シテルモノヲ壊セバ、アイツノ悲シミヲ喰エルカラナ)
喰える…??
「は?!壊すってどういうことだっっ?!あんたも孫を愛しとったんじゃないのか?!」
名千さんの言葉を聞いた瞬間、ぬいぐるみがぞっとするような邪悪な顔で笑った。
(私ノ物ニナラナイ孫ナンカ要ラナイ)
「はあっ?!何だそれっっ??!!」
『待って!名千さんっ違いますっっ!』
「違うって、何が違うんだ?!」
「違う!!そんなこと思ってないっっ!!私じゃないっ!私じゃないいっっ!!」
女性の悲痛な叫びがカオスな空気を切り裂き、一瞬、全てのものが止まった…気がした。
この状況を打ち破ったのはレッドくんだった。
「ばあちゃん!!頭痛いのか??!!どうしようっっ名千!!!」
助けを求めるようなレッドくんの声が聞こえて、止まっていた時間が動き出したようだった。
「レッドくん!!大丈夫かっ?!」
慌てて走っていく名千さんに遅れないように走る。…マズいことにぬいぐるみも追いかけてくる気配がする。走りながら振り向くと思った以上に近い。追いつかれる!と身構えた私に目もくれず、軽々と飛び越えて名千さんへと一直線に向かっていく。
こいつ。名千さんだけ狙ってんじゃねーかっっ!ふざけんなよ!
「名千っっ!!うしろっうしろーーっっ!!」
金の眼を大きく見開いたレッドくんが、名千さんの背後を指さして叫ぶ。振り向いた名千さんの蒼い眼も大きく見開かれている。そのまま固まってしまった名千さんの腕を思いっきり引っ張って二人して地面に倒れ込んでしまう。
標的が急に消えたせいか、体勢を崩したぬいぐるみがゴロゴロと転がっていく。
「あっぶねっっ!」
「名千!!おばさん!!大丈夫??!!」
「レッドくん!何ちゅう失礼なこと言っとるの?!ちゃんとお名前で呼ばんといかんでしょおっ…って、あれ?お名前なんでしたっけ?」
…なんかちょいちょい面白いなこの人。
見た目厳ついのに、何だかとても“柔らかい“感じがする。
『すみません、まだ名乗ってなかったですね。紫音と申します。急に腕引っ張ちゃって申し訳なかったです。』
「いやいや、助けてもらってありがとうございます。お怪我なかったですか?」
『大丈夫です。名千さんこそ倒れた時に庇ってくれてありがとうございます。大丈夫でした?』
「あー、お腹は弱いけどガタイは良いんで大丈夫です!」
……関係あるんかそれ。ほんとに面白いな。
何だかほんわかしてしまった空気をぶち壊すような、獣の咆哮が聞こえた。
「…まずはあいつを祓わんといかんすね。」
名千さんが蒼く光りはじめた。
綺麗だな。
『紅音。ずっと見てたんでしょ。』
<ふっ。バレてたか。>
『“ふっ“とか笑ってる場合じゃないんだけど?…ここは名千さんにお任せしてもいいの?』
「うわあ!!ビカビカ光っとる名千だ!!」
紅音の答えを聞く前に、レッドくんの嬉しそうな声が響いた。レッドくんも名千さんが光って見えてる?
そして、ぬいぐるみに向かって走っていく名千さんを後押しするように両手を振り上げて叫ぶ。
「いっけえええっっっ!!名千パンチだあああ!!」
……え。名千パンチ……パンチ???
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