龍
音がする。
(てん…とんとん…ころ、ころ。てんってん…とん。)
昔々に聞いた音。
音のした方へ意識を向ける。
金と蒼の光が二つずつ。あれは瞳の色なのか?
その後ろには 龍。
_________
相変わらずカオスだな。
十数年ぶりに訪れた大須は、祭りだったせいもあるのかとても賑やかだった。
老若男女、思い思いの格好で忙しなく、だが楽しそうに歩いている。以前より混沌さが深まったようにも思える。
『これだけバラエティ豊かだと人外が紛れ込んでいても分からんな』
(お前のようにか?)
揶揄うような声が自分の内で囁く。うるさい。
真っ昼間の百鬼夜行。
『昼なのか夜なのかどっちだよ』と笑ってしまうような言葉が頭に浮かぶ。
思考とも感情とも言えないようなものを脳内にふわふわさせながら歩いていると、不意に
(てん…とん、ころ、てんっ…)と、夢で聞いた音がした。
『どこから?!』
音のした方へ顔を向けると、目に飛び込んできたのは何ともアンバランスな二人組だった。
薄い色のサングラスをかけ、白いスーツの上着をふわりと肩に乗せた大柄な男。しっとりとした銀の髪は少し乱雑に撫でつけられている。
その隣には何とも派手な服装の小柄な少年。
少年? いや、何かが違う。
『何だ?……あ。』
違和感の正体は少年の頭から突き出ている二本の角だった。コスプレ??…違う、“本物“だ。
なんで本物がいるんだと呆気に取られて見ている間にも、少年は目まぐるしく動いていた。
大柄な男の周りをぴょこぴょこと飛び跳ねるように歩き、興味を惹かれたものがあるとそちらに駆け寄りまじまじと覗きこんでいる。
美味しそうなものを見つけると、大柄な男の袖を引っ張りねだるような仕草をし、男がそれを買って手渡すと金色の瞳をキラキラさせながらかぶりつく。
「めいぜん!!これっでらうまあああ!!!」っとはしゃいでいる。
「レッドくん!そんなに慌てて食べたら喉につまるて!」焦った声で大男が嗜めている。
『少年はレッド、大男はめいぜんというのか。めいぜんの方はどこかで見たことあるような…ああ。』
昔、働いていたパチ屋の客だ。
時には何人かの友人と、時には一人で店を訪れ、狭い席に大きな体を窮屈そうに縮こませながら座り、少し前屈みになって盤面に踊る銀の玉を凝視していたのを思い出す。会員カードに「龍導院名千」と書かれてあったのも思い出した。
『雰囲気が違っていたせいか気が付かなかったな。』
その頃はもっと<普通>だった。 今は。
だが、周囲の人々はそんな奇妙な二人組を気にする事もなく通り過ぎていく。まあ、もっと奇抜な格好をしている人もいるし角が生えているくらいでは驚かないのかもな。さすが大須といったところか。
ふと、サングラスを外した名千の蒼い瞳とレッドの金色の瞳がこちらを向いた気がした。
夢で聞いたでんでん太鼓のような音と、金と蒼の光。あの二人と何の関係があるのだろう。
そして背後にいた龍は。
面白い。
(おいおーい。まーた変なトコロに首突っ込んでいくんじゃないだろうな?!)
呆れたような声で自分の内 の“モノ“が云う。
(紫音。お前それで酷い目に遭ったばかりだろうが。「好奇心、猫を殺す」だぞ)
まあ、私は“猫又“、化け猫だからな。ある意味間違ってはおらん。苦笑しながら二人を眺める。
「龍導院」
“龍に導かれし者“か。あるいは。
“龍と共に導く者“か。
にゃおん。
自分の目が光り、瞳孔が細くなったのが分かる。
龍の尾先にでもつかまっていけば、私の行くべきところを教えてくれるかもな。
(振り落とされるなよ)
了解。
楽しくなりそうだ。
(てん…とんとん…ころ、ころ。てんってん…とん。)
昔々に聞いた音。
音のした方へ意識を向ける。
金と蒼の光が二つずつ。あれは瞳の色なのか?
その後ろには 龍。
_________
相変わらずカオスだな。
十数年ぶりに訪れた大須は、祭りだったせいもあるのかとても賑やかだった。
老若男女、思い思いの格好で忙しなく、だが楽しそうに歩いている。以前より混沌さが深まったようにも思える。
『これだけバラエティ豊かだと人外が紛れ込んでいても分からんな』
(お前のようにか?)
揶揄うような声が自分の内で囁く。うるさい。
真っ昼間の百鬼夜行。
『昼なのか夜なのかどっちだよ』と笑ってしまうような言葉が頭に浮かぶ。
思考とも感情とも言えないようなものを脳内にふわふわさせながら歩いていると、不意に
(てん…とん、ころ、てんっ…)と、夢で聞いた音がした。
『どこから?!』
音のした方へ顔を向けると、目に飛び込んできたのは何ともアンバランスな二人組だった。
薄い色のサングラスをかけ、白いスーツの上着をふわりと肩に乗せた大柄な男。しっとりとした銀の髪は少し乱雑に撫でつけられている。
その隣には何とも派手な服装の小柄な少年。
少年? いや、何かが違う。
『何だ?……あ。』
違和感の正体は少年の頭から突き出ている二本の角だった。コスプレ??…違う、“本物“だ。
なんで本物がいるんだと呆気に取られて見ている間にも、少年は目まぐるしく動いていた。
大柄な男の周りをぴょこぴょこと飛び跳ねるように歩き、興味を惹かれたものがあるとそちらに駆け寄りまじまじと覗きこんでいる。
美味しそうなものを見つけると、大柄な男の袖を引っ張りねだるような仕草をし、男がそれを買って手渡すと金色の瞳をキラキラさせながらかぶりつく。
「めいぜん!!これっでらうまあああ!!!」っとはしゃいでいる。
「レッドくん!そんなに慌てて食べたら喉につまるて!」焦った声で大男が嗜めている。
『少年はレッド、大男はめいぜんというのか。めいぜんの方はどこかで見たことあるような…ああ。』
昔、働いていたパチ屋の客だ。
時には何人かの友人と、時には一人で店を訪れ、狭い席に大きな体を窮屈そうに縮こませながら座り、少し前屈みになって盤面に踊る銀の玉を凝視していたのを思い出す。会員カードに「龍導院名千」と書かれてあったのも思い出した。
『雰囲気が違っていたせいか気が付かなかったな。』
その頃はもっと<普通>だった。 今は。
だが、周囲の人々はそんな奇妙な二人組を気にする事もなく通り過ぎていく。まあ、もっと奇抜な格好をしている人もいるし角が生えているくらいでは驚かないのかもな。さすが大須といったところか。
ふと、サングラスを外した名千の蒼い瞳とレッドの金色の瞳がこちらを向いた気がした。
夢で聞いたでんでん太鼓のような音と、金と蒼の光。あの二人と何の関係があるのだろう。
そして背後にいた龍は。
面白い。
(おいおーい。まーた変なトコロに首突っ込んでいくんじゃないだろうな?!)
呆れたような声で自分の
(紫音。お前それで酷い目に遭ったばかりだろうが。「好奇心、猫を殺す」だぞ)
まあ、私は“猫又“、化け猫だからな。ある意味間違ってはおらん。苦笑しながら二人を眺める。
「龍導院」
“龍に導かれし者“か。あるいは。
“龍と共に導く者“か。
にゃおん。
自分の目が光り、瞳孔が細くなったのが分かる。
龍の尾先にでもつかまっていけば、私の行くべきところを教えてくれるかもな。
(振り落とされるなよ)
了解。
楽しくなりそうだ。
1/1ページ
