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  • バカップルな小ネタバツ配

    20231002(月)03:33
     暑さも和らぎ、風が体の火照りを冷ましてくれる秋がやってくると、ビクターの家には『妖怪靴下剥ぎ』が現れるようになる。サラサラした感触のラグの上でウィックの隣に腹這いで寝そべって雑誌を読んでいると、「シュポン!」と勢いよく靴下が足から引っこ抜かれた。
     肩越しに振り向くと妖怪はイタズラの成功に満足そうに笑い声をあげてからむき出しになったビクターの足の裏を優しくマッサージし始める。なるほど、今日は『そこまでではない』ようだ。ビクターは雑誌を読むのに戻って、読み終えてから足をモゾモゾさせて妖怪を捕まえた。
    「読み終わったのか?」
     両足で挟んでいた『妖怪靴下剥ぎ』ことガンジの腕を解放すると、ビクターはそのまま返事をせずにガンジに頭を擦り付ける犬猫のような頬擦りをした。背中や膝裏が支えられてクルリと体制が変えられる。ガンジがビクターを脚の間に入れて後ろから抱えるような姿勢になったところで適当にページを開いて見せた。初めての時こそ小さく声をあげてしまったが、なんてことはない。妖怪が現れるのは『特に何か用がある訳ではないが、なんとなく構いたくなった』時だともうわかっているので、ビクターも特に意味がある訳じゃない仕草をする。今日はそこまでではないが、ビクターに構い返してほしいときは振り向かせようとする悪戯をしてくるからだ。

     用事があるからではなく、呼びたくなったから名前を呼ぶような時間は、洗練されてはいなくても、秋の夜長にはとても似合う贅沢ではないだろうか。
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  • 七夕の牛飼い📮と機織り📮と牡牛⚰️とちょびっと🏏🧸(童話風の謎小ネタ)

    20230707(金)06:43
    あるところに、はた織りが上手で手紙と動物が大好きな、ちょっと変わった男の子のビクター・ベガが居りました。また、働き者で手紙と動物が大好きな、ちょっと変わった牛飼いの男の子、ビクター・アルタイルも居りました。神様は、きっと気が合うだろうと友達のいない二人を出会わせました。思った通り、二人は仲良くなり交換日記をつけ合う程になりました。

    しかし、問題がおこりました。ベガを気に入ったのはアルタイルだけではなかったのです。アルタイルのところの牛、イソップ・タウルスもベガを気に入り、幸せにしてあげようと難しい本を読みノートに計画を書き付けたり、プレゼント用に花壇の手入れにせいを出しました。人見知りな上こだわりが強いタウルスは、珍しく苦手じゃないビベガのために寝食を忘れて……ご飯は両ビクターが作ったのでちゃんと食べてくれるようになりましたが、寝る間をおしんで作業にかかったので動物が大好きな二人は心配で仕事が手につかなくなってしまいました。

    困った神様は天の川を挟んで離ればなれにし、一年に一度だけ会えるようにしました。文通もできるように手紙も預かることにしました。慌てて用意しても古びるだけだからとタウルスを宥め、プレゼントのために徹夜するのをやめさせました。

    文通できるからでしょう、二人が出会う前ののんびりと、でも仕事をちゃんとこなす日々が戻ってきました。ベガのところにははた織りの腕前を見込んで個人事業主の天女からの依頼が入りました。何でもグライダーの羽布のために丈夫な反物を織ってほしいそうです。
    アルタイルは、タウルスのために友達を用意しました。ちょっと鼻のあたりやおでこに傷のある羊の男の子です。体が大きいし怖い見た目をしているけれど、草花や音楽が好きでオモチャで遊ぶのが好きな子だとベガが手紙で教えてくれたのです。

    「お友達のウールちゃんだよ。草花好きなんだって」
    「タウルスだっけ?ウールだ。毛の収穫のために今日からこちらで飼われることになった。よろしく」
    「………………よろしく……」

    こうして、文通相手ができて仕事も以前より好調になりました。めでたし めでたし。

    ……ベガからウールの毛で編んだマフラーをプレゼントされたタウルスが「牛毛の収穫は!?」と言い出すのはまたしばらく後のこと
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  • ともぬい ポストマン

    20230409(日)04:04
     ガンジの部屋にはゲーム景品のぬいぐるみが置いてある。景品『ともぬい ポストマン』は猫耳が付いたビクターの姿をしていた。社交以外であれば何でも得意なビクターは早々に同シリーズ全て手に入れており、譲ろうかと声をかけたがガンジは自分で取りたいと主張した。苦労の末にようやく取れた1体をガンジは大切に持ち帰ったのだった。
     ある時、ガンジの部屋を訪ねたビクターはそれを見つけた。ゲームの参加予定など、ちょっとした覚え書き用のメモ紙がぬいぐるみの手元に置かれている。成る程、ぬいぐるみに持たせるようにすれば簡易掲示板かつディスプレイになるのか。感心したビクターが『センスが良い』と誉めたのだが、あまり嬉しくなかったのか、ガンジはやや挙動不審な仕種で礼を言った。

     それから数日。ビクターがガンジの部屋のぬいぐるみが持つメモ紙の向きが裏向きだったことに気付いた。独り言としてそれをこぼすとガンジは大きく肩を跳ねさせた。その驚きっぷりに逆にビクターが驚いていると、恥ずかしそうに顔を逸らしながらガンジが言った。

    「……だってお前、手紙読むの好きだろ?」

     ビクターの視界に映る『ともぬい ポストマン』は、ぬいぐるみの筈なのに破顔したように見えた。
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  • バツ配と運動デート

    20230327(月)04:14
    最近はずいぶんと暖かい日が続くようになり、公園も賑わうことが増えた。
    キャーキャーと楽しげな声が上がる方向では、ラケットを持ち長い髪を一つに纏め上げた若い女性が恋人に手取り足取り教えてもらって笑顔になっているのが見えた。

    いいなぁ。

    運動神経抜群のガンジである。あの二人のように、運動デートをしたらすごく楽しいのではないか? ビクターはガンジに約束をとりつけた。

    いつの間にか周りにはギャラリーが大勢いて拍手をされている。羞恥に顔を両手で覆ったビクターはガンジの体に隠れるように身を寄せた。スポーツに関しては天才のガンジと社交以外は何でも得意なビクターである。キャッキャウフフどころかガチに熱中し、その腕前は他人の目を引いた。

    次からは人気のない別のとこでするぞ。限界がきて腰を抜かしたビクターはガンジに背負われた状態で同意を口にした。
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