評議員のダメ出しを食ったアンヌは、意気消沈した。しかも、自分を連れてきたこのいかにも人のよさそうなジェダイは、すでに子供らしくないアナキンとかいう少年のマスターであるので、もう一人弟子をとることはジェダイの規則（オーダー）に背くのだと言われたのだった。彼女は、自分のマスターとなる人物はてっきりオビ＝ワンだとばかり思っていただけに、孤独感と悲しみを感じていた。また、評議員の辛辣な評価の裏にアンヌは確かな拒絶を感じ取っていた。それは家族や長年住み慣れた惑星から一人で離れることを決心した少女にとってはどんなものよりもつらいことだった。 　
　もういや。帰りたい。けど、今更帰れないよ。
　彼女の心はますます塞がってしまった。すると、その様子に気づいたオビ＝ワンが彼女のそばにやってきた。
「さっきはすまなかったね。評議員はいつも堅物ばかりなんだ。私のマスターもそれにはいつも飽き飽きしていたものだよ。」
「あなたのマスターが？」
「そうだよ」
オビ＝ワンはそういうと、少し懐かしそうに眼を細めて笑った。
「私のマスターはね、よく評議会の決め事に逆らっていた。」
「それって、悪いことじゃないの？」
当たり前のことを聞くアンヌに彼はまた笑った。
「ああ、たしかにそうだった。でもね、時には自らの主張や直感をしっかりと態度で示さなければならないことはあるだろう？」
「…うん。」
「だったら、逆らうことも間違いじゃない。…だろう？」
「うーん…“ときとばあいによる”。かな？」
アンヌは不思議に思った。なぜ彼はいまそんなことを自分に言うのだろうか、と。落ち込んでいる人間を慰めるのにはあまりに不向きな会話の内容ではないのか。まだ幼かった彼女にはオビ＝ワンの真意などわかるはずもなかった。
　彼女は彼に、ここから帰ろうと思うと切り出そうとした。だが、その言葉はアナキンの切迫した声によってかき消された。
「マスター！！大変だよ！！」
「どうしたんだ、アナキン」
「元老院の近くで爆破テロが起きてる！犯人たちは民間人も容赦なく傷つけてるって」
オビ＝ワンは事態の深刻さに考え込む暇などないと判断した。そしてアンヌにここで待っていなさいと一言言い残すと、アナキンと二人でコルサントの街へ駈け出して行った。後に残された彼女はただ、それを見ているしかなかった。