コルサントへ着くまでの間、アナキンとオビ＝ワン、そしてアンヌはお互いに一言も話さなかった。タリアスはアウターリムのかなり端のほうに位置していたので、コルサントまではかなり遠かった。船内には静音設計のエンジンの僅かな振動音と、三人の息遣いだけが音としてそこに存在していた。その空間のあまりの静けさに、そもそもそこに息をしている生命体などはおらず、ただ音だけがそこに生息しているかのような気分になるほどだった。しばらくすると、船はハイパースペースから抜け出した。そしてアンヌの目の前に広がったのは───
　美しい円を描いたような眩いほどの光の集まりだった。
「わぁ…………」
「コルサントだよ。」
「え？」
オビ＝ワンは聴かれてもいないこととは分かっていたが、息が止まりそうな程の沈黙を破りたかった。コルサントの美しい景色は、銀河系全ての理性ある生物が1度は訪れたいと思うようなものだった。しかし、過去にあった事故による大気汚染はこの惑星の空気を有毒なものに変えた。そのため、コルサントは空気の比較的綺麗な中流階級と、ろ過装置がついている上層階級（主に議員など）、そして最も危険な地上付近に住む下層階級とに分かれている。特に下層階級の住処は、アンダーワールドと呼ばれ、人々から明らかに差別を受けていた。オビ＝ワンはため息をついた。
────この美しさは、たくさんの人々の健康と環境破壊からなりたっているのに。
　
　ジェダイ聖堂の発着ベイに船をつけたオビ＝ワンたちは、その足で評議会室に向かった。アンヌはただただ聖堂の内部の美しさに声を失っていた。大理石でつくられた古代ジェダイの像、どこまでも伸びていそうな美しいアーチ型の回廊。そしてすれ違う伝説や物語の中でしか見たことがないジェダイたち。その全てにこれは夢ではないのだと思い知らされた。感動を顕にするアンヌをみて、アナキンはかつての自分を思い出した。そして恐らくこれから彼女を待ち受けるであろう評議員の酷評を想像し、すこし胸を痛めた。
─────僕らしくないな。
アナキンはそう心の中で毒づいた。彼は正直になるのが苦手だった。だからこの時も彼は
アンヌに真反対の態度を取った。
「何見とれてるんだよ。」
「え………だって、綺麗じゃない？」
「別に。僕はずっとここに住んでるから当たり前だし、それにそんなに落ち着きがなかったらジェダイになんか到底なれないからな」
「そういう君は、ここに来た時落ち着きがあったの？」
アナキンは図星だった。ここに来た9歳の時は本当に落ち着きがなかったのだ。もっとも、彼がはしゃいでいた訳は偶然出会った若き女王、パドメ・アミダラにあったのだが。
ともかくアナキンは動揺を悟られたくなかったため、アンヌにきつく言い返した。
「うるさいな。だいたい、僕は年上なんだぞ！君ってなんなんだ！！！」
彼の大声に、オビ＝ワンがとうとう一喝を入れた。
「アナキン、静かにしなさい。騒いでいたらみっともないぞ」
「それ、僕のせいじゃないですから！！ねぇ、ちょっとマスター！！？マスター！」
アナキンは慌ててオビ＝ワンのあとを付いて行った。そして三人は評議会室へと続く長い、長いエレベーターに乗り込んだ。