Drown in sweetness
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『ジョージっ!お待たせ…!』
「ナマエ!…うん、今日もかわいいな」
ホグズミード行きの生徒が溢れている中でも、皆よりも頭ひとつ高く飛び出した赤毛を見付けることはとても容易い。
白い息を漏らしてまっすぐに駆けてくるナマエを抱き留めると、ジョージは「俺のためにお洒落してくれてありがとう」と言って彼女のおでこに優しくキスを落とした。
確かに、大好きな彼に少しでも良く見られたいという一心で新しい洋服を用意したり早くから起き時間をかけて準備もしてきたナマエなのだが、
こういうことをさらりとやられてしまうのはなんとも恥ずかしい。
そしてそれがまたこれでもかと言うほどに様になってしまうのだから、最早反則ではないかと彼女は口ごもってしまう。
「じょ、ジョージも…!かっこいいよ…!」
「お褒めに預り光栄でございます」
飛び出してしまいそうな心臓をぐっと押さえてなんとか言葉を発したナマエの頬はすでに真っ赤になっていた。おそらく寒さのせいだけではないこともジョージには気付かれているだろう。
そんな彼女を愛しそうに見つめながら、ジョージはさりげなく手を差しのべて言った。
「さあ、お姫さま。今日はどこへいきたい?ナマエの行きたいところ案内してやるよ」
二人が付き合ってから既に幾月かは経っているものの、彼の優しいお姫さま扱いにはまだ少し慣れない。ナマエは嬉しい気持ちと気恥ずかしさで俯くと控えめに自分の手を重ねた。
一回り以上も小さくて温かい手のひらがやっと重なるのを確認してジョージは満足そうに口角を上げて笑う。そんな彼の人懐っこい笑顔に緊張が解けたのか彼女もふわりと微笑んだ。
『いつも私の好きなお店にばかり連れていってもらってるけど、本当にゾンコとか行かなくていいの?私に気を使わなくていいんだよ?』
「ん?ああ、俺たちは行きたいときにいくらでも行けるしな。それにゾンコなんかへ行ったら相棒たちに俺の可愛い姫が見つかっちまうじゃないか!俺は、今日くらい君を独り占めしたいんだ」
だから今日は姫の行きたいところ俺にエスコートさせて、と彼はウィンクを飛ばした。
『もう、私はいつだってジョージだけなのになぁ…』
「え?よく聞こえなかった!もう一回!」
『ば、ばか!聞こえてるくせに…!』
「あっはは!あまりにも可愛いこと言ってくれるからさ。では…、参りましょうか、姫?」
『…はい!よろしくお願いします!』
二人は重ねた手をぎゅうと握り直してホグズミード行きの馬車へと歩き出した。
ホグズミードに着いてから、ジョージのエスコートで文房具屋や本屋などナマエの好きなお店を何軒か見て回った。
ナマエお気に入りの雑貨屋ではジョージが二人お揃いのシンプルなネックレスを買ってくれた。彼の髪と同じガーネット色をした小さな石が光っている。学生でも気軽に買えるくらいなので本物の宝石とはいかないが、ナマエはこのネックレスを一目で気に入った。
『ふふ、いつでもジョージと一緒にいるみたい』
「本物がいつでも隣にいるのにそういうこというか?」
『授業でも夏休みでもネックレスならどこでもしていけるもん!ありがとう、大切にする!』
寝るときも肌見離さないようにしなくちゃ、と屈託のない笑顔で嬉しいことを言ってくれるナマエにやれやれ君には敵わないなとジョージも笑った。
「他に行きたいところは?」
『んーと、あ、そうだハニーデュークスに行ってもいい??学校で待ってる後輩たちにもお土産』
「もちろんさ!姫は優しいな。よし、ハニーデュークスへ行くなら、こっちの道からの方が…、ん?…なぁナマエ!みてみろよあの店、君好みなんじゃないか?」
『どこ?』
ジョージが指を指した脇道の奥を一緒になって覗き込むと、そこにはこじんまりと小洒落た喫茶店があった。入り口の看板にはコーヒーカップに寄り添う猫のシルエットが甘えるようにクルクル回っている。
『わぁ!こんなところにこんな可愛い喫茶店があったなんて知らなかった…!』
「俺も。折角だからハニーデュークスへ行く前に少しだけ休憩していこうか」
『賛成!』
カランカランとベルを鳴らして中へ入ると店内は糖蜜パイのような甘さとコーヒー豆の香ばしい匂いで溢れていた。
入り組んだ脇道の奥にあるせいかホグワーツの生徒は他に見当たらず、店内は落ち着いた雰囲気でとても居心地が良さそうだ。
「いらっしゃいませ」
暖炉からも近い窓際の席を選んで腰かけると味のある白髭をきれいに剃り整えた人の良さそうな中年男性が注文を取りに来てくれた。
二人は蜂蜜酒を頼み小さく乾杯する。芯まで冷えた身体にじんわりと染み渡るその温かい深みはとびきりに甘くて思わず頬が綻んでしまう。
『はぁ…美味しい…!』
「いい穴場みつけたな?」
『うん。店員さんも優しくてとってもいいお店』
「勿体ないから他のやつには内緒にしておこう」
『ふふ、二人だけの秘密の場所だね』
しばらく二人でゆっくりとした時間を過ごしていると、ふいに自分達が入ってきたときと同じようにカランカランと音が聞こえた。
ナマエが入り口を見ると身なりのきちんとした上品な格好の老夫婦が物珍しそうに入ってきた。老夫婦はそのまま手を取り合って一番暖炉に近いソファー席へと腰かける。
普段こういうお店へは来ないのか、キョロキョロと回りを見回したり少し照れ臭そうに注文をしていた。
(ふふ、デートかな?)
丁寧にエスコートをする老紳士と時折会話を交わしてはその度に微笑むご婦人。その笑顔はうっすらと赤みを帯びていてまるで初心な女学生のようになんとも可愛らしい。
そんな老夫婦を見ているとなんだかナマエの方まで暖かい気持ちになってしまう。
「なーに幸せそうな顔してんの?」
思わずひとりでに微笑んでいると、横からジョージが彼女の綺麗な髪を自分の人差し指でくるくると弄びながら声をかけた。どうやら暫く見つめられていたらしい。
ナマエは少しだけ恥ずかしそうに笑って再び老夫婦の方へ視線を投げた。
『ほら、あのご夫婦』
「ん?」
『いくつになっても仲が良いんだなって思って。とても素敵』
「ああ、ほんとだ」
『私もあんな風に素敵に歳を重ねられたらいいなぁ』
暖かい気持ちに目を細めて呟けば、そっと左手を絡めとられた。
『ジョージ?』
「なにも心配いらないさ。きっとおばあさんになったナマエも可愛いに決まってる」
『えー?』
本当?とナマエはくすぐったそうにクスクス笑う。
そんな彼女を嬉しそうに見つめながらジョージも因みに、と続けた。
「そんな可愛いおばあさんの手は俺に引かせてくれるのかな?」
『んー、じゃあ…』
『おばあちゃんになっても、大好きでいてくれる?』
「…!! もちろん!姫の仰せのままに、」
ナマエがいつもより少しだけ悪戯な笑顔で首を傾けると、ジョージは今日一番の笑顔を輝かせて、繋いだ左手に口付けた。
「まぁ、頼まれるまでもないんだけどね」
いつだって二人の間に流れるのは、まるで蜂蜜酒のように芯まで暖かくて甘い甘い特別な時間。
(ふふ、おばあちゃんでも姫?)
(これから先何歳になったって君は俺の可愛いお姫さまだよ)
そんな特別な甘さに溺れて。
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