Honey
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「ナマエっ!」
『わっ』
いつものようにナマエが月曜日一番の授業に向かっていると、突然進路を遮るようにして燃えるような赤毛が視界へ飛び出した。
彼女が驚いて瞬きをする間もなく目の前で色とりどりの小さな花火がいくつか煌めき、終わりにパンっと小さく弾けるとそれは白とピンクの数枚の花で拵った控えめな冠となってナマエの頭へ丁寧に着地した。
『わ…、わぁあ!フレッド!驚いたぁ!!』
彼女は頬を紅く上気させて何度も目をぱちくりとさせながら、自分の頭上の花冠と目の前の赤毛を交互に見やっていた。
「よお!」
フレッドが軽く手を上げて挨拶をすると、ナマエも慌てて挨拶を返し、そのあと丁寧に花冠を頭から下ろしてまじまじと見つめながら改めて新鮮な聞こえで言う。
『うわぁあ!すっごく綺麗…!』
顔を真っ赤にさせたまま大切そうに花冠を握りしめへらりと笑うナマエの姿に、ほぼ反射的にフレッドも口角をあげていた。
今の爆発で少し乱れたナマエの髪を手で軽く鋤くように整え直してやりながら言った。
「ナマエってよくもまぁ毎度飽きず気持ちの良いリアクションしてくれるよな」
『えぇ?そんなにかなあ?』
ナマエはフレッドの大きくごつごつした手をくすぐったそうにしつつも飼い猫のように目を細めて大人しく従っている。
「ほぼ毎日のようにやってんのに、そこまで新鮮に驚けるのはナマエくらいだぜ、多分」
そして「ま、だからやりがいがあるってもんだけどな」、と加えて彼女の頭をぽんと叩きそのまま手を離した。
『だっ、だっていつも突然だし、本当にびっくりするんだもん!』
ナマエがしかたないと言うように一生懸命に訴えるとフレッドは普段の彼女の驚きっぷりを思い出しながらその台詞と合わせて満足そうに笑った。
ナマエはそんな彼を見てに嬉しそうに笑い返し、続けた。
『でもねっフレッドたちの悪戯、っていうか魔法は本当にすごいと思うの!それにフレッドはいつも新しい悪戯用意してきてくれるし私も楽しいよっ』
「へぇ?嬉しいこと言ってくれるな?」
そう言って、もう一度フレッドが彼女の頭を撫でて、ナマエは先程の花冠を愛しそうに握り締める。
『えへへ、フレッドの悪戯は本当に面白くて素敵な魔法ばっかりだから私、大好き!』
「おっ!じゃあ姫のご期待に添えるようにこれからも目一杯励まないとだなー!」
『あ、あ、汚れたり痛いやつより断然今日みたいなやつの方が好きだけどね!』
ニヤリと笑うフレッドの顔を見て、ナマエが慌てて付け足す。フレッドはわざとらしく残念がるとすぐにまたおかしそうに笑った。
ふいに、フレッドが呟いた。
「汚れると言えば、ナマエにした初めての悪戯は誤爆したくそ爆弾だったっけか」
『あー、そうだったねぇ。あれにはかなりびっくりしたなぁ!』
「フィルチに向かって投げたはずだったのにまさか君が通りかかるなんて」
『ほんと、ひどいよ。あのあと一旦シャワーに戻らなきゃいけなくて結局次の授業遅刻しちゃったんだから』
ナマエは『魔法薬学でスネイプ先生だったのに』と当時を思い出し苦々しくぶつぶつとぼやている。
フレッドも「いやあ、悪かった」と口にしたが声色は変わらずけらけらと笑ったままだった。
「でも、あの時も最後にはやっぱり笑ってたな?」
『そうだったっけ?あー、うん、そうだったかも』
ナマエはそう答えると、思い出したようにくすくすと笑った。
『あの時ね、私本当にビックリしちゃって。そしたら大慌てでフレッドが走ってきてさ』
「そりゃ、話したこともなけりゃ何の罪もない大人しそうな女の子にくそ爆弾なんかお見舞しちまったんだぜ?キレられればまだしも泣かれちまった時にはどうしたもんかとひやひやしたもんだ」
フレッドは当たり前だろ?と肩をすくめる。
『そうなの。あの悪評高いウィーズリーの片割れが目の前で不安そうに私のことを必死にあやしてくるんだもん。悪戯がお母さんにバレて必死に言い訳を取り繕う子供みたいで、そう思ったらもう可愛く見えちゃっておかしくて堪らなくなっちゃった』
あの失敗と彼女の笑顔が二人の出会いだったとフレッドは思った。
あの日からずっとナマエはフレッドの悪戯に出くわしてはこれでもかというほど驚いて、
そして最後はいつも頬をほんのり紅く染めて屈託のない笑顔で笑っていた。
互いにそれが心地良い習慣になっていた自覚は間違いなく持っていた。
「おいおい、人が折角心配してたってのに、まるで子供扱いだとは…、ったく勘弁してくれよママ?」
『あはは!そっかー、そしたら私がお母さんみたいだね、あははは!』
おどけるフレッドの言葉にナマエが声を出して笑う。
フレッドも安心したような呆れたような顔でため息をつくように笑った。
『あ、その顔』
「え?」
自分が笑ったとたんに彼女が突き差すように見つめて呟いたため、フレッドは思わず緊張した。
『あの時もね、私が笑ったらフレッドもそんな顔して笑ってたなーって』
そう話すナマエがいつもの笑顔であることに気付き、フレッドはすでに緊張を解いていた。
安心した途端、あの日の記憶と感情が脳裏をかすめ口をついたようにフレッドは溢す。
「ああ。ナマエの反応が新鮮で面白くて、それからなんか、嬉しかったんだ」
嬉しいという気持ちになにがと聞かれればうまく答えられないかもしれないけど確かにあの時そう感じたハズだ。思考の隅でそんなことをフレッドが考えてると
『わかる気がする』、とあの日のあの瞬間に想いを馳せているのだろうナマエのかすかにぼやけた声が聞こえた。
ナマエはなんの気なしに見つめていた斜め上の天井からフレッドへと視線を移し、ちょっとだけ微笑んでから真っ直ぐ確信づいたように言った。
『私もそうやって笑うフレッドの顔みてなんだか嬉しい気持ちになったの覚えてるもん』
その瞬間、まるでお互いの中に答えが閃いたかのように二人は反射的に、そしてほぼ同時に口を開いた。
「俺さ」
『私ね』
「『あの瞬間、恋に落ちたんだと思う』」
顔を見合わせてお互いが言うと、
すぐにぷっと吹き出して二人して廊下で笑った。
『好きだよ、フレッド。あの時の悪戯からずっと』
「俺もさ。君の笑顔を初めて見たあの瞬間からずっと、ナマエが好きだ」
二人がそう言葉にし微笑み合えば、
まるでそうなることが自然であるかのようにそっと唇が重なった。
そっと唇が離れてナマエが伏せ目がちに彼を見上げる。
フレッドはまるで母親に誉めてもらうのを待っている子供のように不安と期待と自信を織り混ぜたような顔で笑っていた。
いつも悪戯を披露する時に彼女に見せるナマエの大好きな表情だった。
『ふふ、やっぱりその顔、好きだなぁ…』
顔を紅くしたままのナマエが思わずへらりと笑って呟くと、ふいに、今度は軽くリップ音を弾ませながらもう一度口付けが落ちてきた。
ナマエは思わず目をしばたたかせた。
「ナマエのその驚いた顔もそのあとに必ず見せてくれる真っ赤な笑顔も、」
フレッドが言いながら悪戯に笑う。
余裕が窺える顔ではあったが、彼の耳が真っ赤に染まっているのは、多分見間違いではないとナマエは思った。
「ほんと、骨抜きなほど愛してる」
その言葉に幸せを噛み締めて再び笑みを溢したナマエの頬もまた、いつもよりはっきりと紅く色付いていた。
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