ONE×ONE
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『ねぇ、私も相棒にしてよ』
今頃皆はきっと授業中。
だから多分、今この談話室には退屈な占い学をずる休みした私とフレッドの二人だけ。
「は?」
ソファの背もたれに首をかけ、真後ろのテーブルにいる彼に声をかけると、赤毛を揺らしてこちらに振り向く姿が逆さに映ってなんだか可笑しい。
「なんだって?」
『だから、相棒!!一心同体っ!みたいなの?羨ましいなぁって』
「…今まさにその相棒とは別行動なんだけど?」
『違うよ~、何て言うかな~、わかるかな~』
ソファの上に正座をして後ろ向きにさっと座り直す。背もたれを肘掛けみたいにして私が笑いながら勿体ぶるように言ってみれば、彼の方もわけがわからんとかいいながらちょっと笑ってる。
「だから、なんだよ」
『私はねぇ、フレッドとジョージみたいになりたいの』
「はぁ?なんだそれ」
『つまりは"中身"の話よ』
「中身、ねぇ」
フレッドは相変わらず私の言ってることなんて理解が出来ないって顔をしてたけど、それでもテーブルの上の作業をやめてきちんと私の話を聞いてくれる。
『二人はさ、いつもどこにいくのもなにもするのも一緒でしょ?あ、一緒に行動することを言いたいんじゃなくて、その行動に至るまでの"思考回路"っていうのかな??それが二人の中ではごくごく自然に共有されてるんだと思うの』
「あー、まぁなんとなく言いたいことはわかった」
『きっと感情も感覚もシンクロされててさ、どっちかが欠けたらうまく息も出来なくなるみたいな、』
『なんかもう自分の一部になっちゃうかんじ?それがいいなって、』
フレッドがなに、ジョージに嫉妬?って笑うから、
私はうん。と真っ直ぐに答えた。
『私さ、あなたとひとつになってしまいたい』
だってこんなに大好きなんだもん。あなたと私の間の1mmだって惜しいくらい。
だからもういっそ私、あなたに取り込まれてしまえたら、なんて思ったんだ。
「ふーん?」
フレッドは考えるように唸ってクスリと笑った。
私が何の気なしに返答を待っていると彼はソファまでやって来て私の隣に座り、続ける。
「俺は、嫌だね」
『えー?もう冷たいなー、って、…ん、』
別になにかを期待していたわけじゃないけれど、さらりとそう言われて私も口だけの落胆を言葉にするとふいに彼の顔が近づいて、ちゅっと唇が触れた。
『……』
「…ナマエと俺がひとつの存在だったら、こーゆーこと、出来ないだろ?」
『…そーだけどさ』
「それに、」
『?』
「ナマエが今なに考えてんのかなーって想像すんのとか、かと思いきや顔見てたら何を考えてんのかダダ漏れで可愛く思ったり、とか。俺、結構そーゆーの好きだけど」
フレッドは言葉を繋げながらその長い指先で私の頬や眉毛をゆっくりとなぞっていく。
触れるだけの優しい手つきがなんだか少しくすぐったい。
『…フレッドも意外に私のこと大好きだね?』
「うるせーな、俺にベタ惚れのナマエに言われたくないね」
『わ、ちょっと…!』
照れ隠しにそう言えば、フレッドにわざと髪の毛をボサボサにするように乱雑に頭を撫でくりまわされた。
「近くにいないと寂しくなったり、もっと触れたいとかお互いのこともっと理解したいって思えるからいいんじゃん?そんだけ夢中になれるのは"自分じゃない誰か"だからだろ?」
『…そうかな、』
「そうさ」
『うん、そうかも』
フレッドの言葉にいとも簡単に納得する私。それはこの先も一生彼の"相棒"にはなれないことを十分にわかっていたし、なにより、なんだかんだ今のこの"関係"が一番幸せだって実感しているから。
手櫛で髪の毛を整え直して、じゃあこのお話はもう終わりと私が手を打とうとすると、なにやらフレッドの視線を感じた。
『ん?なあに?』
「まぁ、ナマエちゃんがそんなに俺と"ひとつになりたい"ってなら俺は大歓迎だけどね」
『え?さっきは嫌って、』
フレッドはそのまま覆い被さるようにして私を押し倒すと、口の端でニヤリと笑った。
ああ、しまった。これは悪戯が思い付いたときの顔。
『フレッド、さん…?』
「昼間っから誘ってくるなんて、勿論覚悟はできてるんだろ?」
『へ?あ、ちょ…そう言う意味じゃ、んん、』
言いかけて強引に唇を塞がれた。それは優しくて意地悪な、濃厚だけど物足りないキス。
少しだけ唇が離れて、彼の顔を目だけで見上げれば全てを見透かしたような挑戦的な瞳。
『…ずるい、』
「な、もっと俺が欲しくなるだろ?」
ほら、それがいいんだよって彼に囁かれ首筋がぞくりとしたかと思えば私はすぐにまた深い口付けに呑み込まれた。
その甘過ぎる目眩に思考を奪われて、私たちはゆっくりと深く深くソファに沈んでいくのだった。
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