いざ新天地へ
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車道は相変わらずの渋滞地獄……
それを横目にしばらく走ると、おじさんが言っていた大きな交差点に辿り着く。
頭上を見上げた先にある表示板通りに右側へと曲がると、
「うわっ、こっちも渋滞してる……」
その先も赤いテールランプを灯した車の行列が目に入る。
その渋滞の中に烏野に向かうバスも巻き込まれていた。
あのバスに乗れば、高校の近くまで行けるのだが、
「進まなきゃ、乗っても意味ないよね。」
停車中のバスを追い抜き、ひたすら道なりに走り続けた。
もう、どのくらいまで走っただろうか。
演劇サークルで週3回は体力作りの為に走ってはいたが、いつも走る距離をとっくに超えてしまっている。
おまけに履いているローファーのせいか、走る度に踵がズキズキと疼く。
靴擦れするだろうと予想はしていたが、やはり走りにくい。
「痛い……っ!」
一旦、足を止めて歩道の端に寄り、俯いて踵の具合を見ていると、
「ねぇ、ママ……
あの人、こわいよ~」
前方から子どもの怯えたような声が聞こえてきた。
怖い?
ふと顔を上げると、金色の髪で視界が遮られる。
「ねぇ、ママ……
あの人、どうして髪の毛の色が黒とキンキラなの?
ねぇ、どうして~?」
「見ちゃだめ。
ほら、お医者さん待っているから、病院に行くよ!」
母親が抱き上げたのか、二人の会話はどんどん遠退いていく。
黒とキンキラ?
もしかして……私のこと?
慌てて身体を起こし、頭へと手を伸ばすと纏めていた髪がダラリと落ちている。
「……ピンがない。」
走っていた間に、髪を留めていたピンが外れてしまったようだ。
「……ってことは。」
近くにあったカーブミラーを見ると、そこには黒のコート、黒のパンツ姿で立ち尽くす黒と金のツートン頭をした長髪の女が映っている。
まるで某ホラー映画のお化け並みの不気味さに息をのむ。
……あ、私か。
「こりゃ……ヤバいですよねぇ……
っていうか、不審者扱いされて通報されちゃうよねぇ……ははっ。」
力なく笑いながら、肩から掛けていた鞄を下ろし、髪留めに使えそうな物を探るものの、
「ない……」
ピンも輪ゴムもヒモも。
こんなときに限って……本当に最悪。
唇を噛みながら、コートのポケットに手を突っ込むと財布とは違う手触りの物があることに気付く。
それを掴んで、取り出してみると、昨夜 ガクちゃんから借りたままの白いハンカチだった。
「あっ!」
その途端、片手で髪を纏めて、ハンカチを使って結い上げる。
広い布地に纏めた金髪を包むとうまい具合に隠すことが出来た。
カーブミラーにはさっきの不気味な女はいない。
「これでよしっ。」
私は、再び走り始めた。
制服はどうしようもないが、この金髪だけでも何とか出来た。
足は痛むけど、このまま走れば間に合うかもしれない。
そんなことを思いながら、烏野高校を目指した。
つばさが走り去った後、しばらくして病院から家路に向かう先程の親子連れが手を繋ぎ、歩道を歩いていた。
「ママ……
これ、誰かの忘れ物かな?」
娘は視線の先に落ちていた白い布を指差す。
その隣で母親が目を凝らすと丸まって落ちているハンカチに見えた。
「そうね。
慌てん坊の誰かさんが落としていったのね~」
そう言いながら、それを拾い上げ、近くのカーブミラーの支柱に結びつける。
目線の高さでちょうどいい位置で落とした者も見つけやすいだろう……
母親は満足そうに微笑み、
「これでよし。
じゃ、お買い物して帰ろっか。」
娘の手を取るといつも行きつけているスーパーマーケットへ向かい始めた。
「うん!
ねぇ、ママ……
さっきの怖い人、いなくなったねぇ。」
「そうね。
お家に帰ったのよ~」
「ほんと?」
「多分ねぇ~」
まさか、これを落としたのが、さっきの不審者とは思わずに。
この後、つばさが入学式でどうなったか、それはまた別のお話。
それを横目にしばらく走ると、おじさんが言っていた大きな交差点に辿り着く。
頭上を見上げた先にある表示板通りに右側へと曲がると、
「うわっ、こっちも渋滞してる……」
その先も赤いテールランプを灯した車の行列が目に入る。
その渋滞の中に烏野に向かうバスも巻き込まれていた。
あのバスに乗れば、高校の近くまで行けるのだが、
「進まなきゃ、乗っても意味ないよね。」
停車中のバスを追い抜き、ひたすら道なりに走り続けた。
もう、どのくらいまで走っただろうか。
演劇サークルで週3回は体力作りの為に走ってはいたが、いつも走る距離をとっくに超えてしまっている。
おまけに履いているローファーのせいか、走る度に踵がズキズキと疼く。
靴擦れするだろうと予想はしていたが、やはり走りにくい。
「痛い……っ!」
一旦、足を止めて歩道の端に寄り、俯いて踵の具合を見ていると、
「ねぇ、ママ……
あの人、こわいよ~」
前方から子どもの怯えたような声が聞こえてきた。
怖い?
ふと顔を上げると、金色の髪で視界が遮られる。
「ねぇ、ママ……
あの人、どうして髪の毛の色が黒とキンキラなの?
ねぇ、どうして~?」
「見ちゃだめ。
ほら、お医者さん待っているから、病院に行くよ!」
母親が抱き上げたのか、二人の会話はどんどん遠退いていく。
黒とキンキラ?
もしかして……私のこと?
慌てて身体を起こし、頭へと手を伸ばすと纏めていた髪がダラリと落ちている。
「……ピンがない。」
走っていた間に、髪を留めていたピンが外れてしまったようだ。
「……ってことは。」
近くにあったカーブミラーを見ると、そこには黒のコート、黒のパンツ姿で立ち尽くす黒と金のツートン頭をした長髪の女が映っている。
まるで某ホラー映画のお化け並みの不気味さに息をのむ。
……あ、私か。
「こりゃ……ヤバいですよねぇ……
っていうか、不審者扱いされて通報されちゃうよねぇ……ははっ。」
力なく笑いながら、肩から掛けていた鞄を下ろし、髪留めに使えそうな物を探るものの、
「ない……」
ピンも輪ゴムもヒモも。
こんなときに限って……本当に最悪。
唇を噛みながら、コートのポケットに手を突っ込むと財布とは違う手触りの物があることに気付く。
それを掴んで、取り出してみると、昨夜 ガクちゃんから借りたままの白いハンカチだった。
「あっ!」
その途端、片手で髪を纏めて、ハンカチを使って結い上げる。
広い布地に纏めた金髪を包むとうまい具合に隠すことが出来た。
カーブミラーにはさっきの不気味な女はいない。
「これでよしっ。」
私は、再び走り始めた。
制服はどうしようもないが、この金髪だけでも何とか出来た。
足は痛むけど、このまま走れば間に合うかもしれない。
そんなことを思いながら、烏野高校を目指した。
つばさが走り去った後、しばらくして病院から家路に向かう先程の親子連れが手を繋ぎ、歩道を歩いていた。
「ママ……
これ、誰かの忘れ物かな?」
娘は視線の先に落ちていた白い布を指差す。
その隣で母親が目を凝らすと丸まって落ちているハンカチに見えた。
「そうね。
慌てん坊の誰かさんが落としていったのね~」
そう言いながら、それを拾い上げ、近くのカーブミラーの支柱に結びつける。
目線の高さでちょうどいい位置で落とした者も見つけやすいだろう……
母親は満足そうに微笑み、
「これでよし。
じゃ、お買い物して帰ろっか。」
娘の手を取るといつも行きつけているスーパーマーケットへ向かい始めた。
「うん!
ねぇ、ママ……
さっきの怖い人、いなくなったねぇ。」
「そうね。
お家に帰ったのよ~」
「ほんと?」
「多分ねぇ~」
まさか、これを落としたのが、さっきの不審者とは思わずに。
この後、つばさが入学式でどうなったか、それはまた別のお話。