また会う日まで
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ガクちゃんの声にさっきまでの刺々しさはなく、その大きな手が動揺する私の背中を落ち着かせるように撫でる。
「つばさが宮城に行くだけで、他は何も変わらない。
どんなに遠くに行っても、今までと同じように付き合ってやるから。
お前が携帯持ってなくても、俺がじいさんの家に電話する。
長い休みになれば、会いに行く。
相談事なら、手紙をくれ。
少しの間 会えないからって、親友 やめる訳じゃないだろ?
しっかりしろよ、つばさ。」
背中に置かれた掌でポンポンと軽く叩かれた。
その瞬間、抑えていた感情が涙と共に一気に溢れていく。
「ごめ……っ……」
溢れる涙を手の甲で拭いながら、彼に謝ろうとするが言葉にならない。
「バカつばさ。
俺には遠慮すんな。」
「……うん……あ、りがと……」
それから2分後、住宅街行きのバスがガクちゃんを乗せ、走り去った。
子どものように手を振って見送る私の姿を窓越しに見ていた彼は、泣いているようだった。
強がるからな……ガクちゃんって。
人一倍、情に厚い彼のことだから、泣き虫な私を見て……ずっと我慢していたのかもしれない。
そういうところ、昔から変わらない。
「またね。」
別れ際、彼に呟いた言葉を再び 口にし、一人歩き出す。
歩き慣れたこの道、明日で最後になるのか……
そう思うと、また涙が溢れそうになり、慌てて上を向く。
「あっ……」
視線の先には星空が広がっている。
空気が澄んでいるからだろうか。
「綺麗……」
しばらく言葉もなく、空を見上げて立ち尽くす。
東京の夜空……
これから当分見ることはない。
「また……ね。」
独り言を呟きながら、母の待つアパートへゆっくりと歩き始めた。
「ただいま……」
玄関に入り、後ろ手に鍵を閉めながら 靴を脱ぐ。
いつもなら、お義理でも「お帰り」 くらいの返しがあるはずだが、室内は静まり返っていた。
「母さん?」
部屋はさっき出る前 同様、テーブルには空の土鍋やら食器が並んだまま、そこに母の姿はない。
私は奥の部屋に続く襖をそっと開き、中を覗くと母は毛布一枚被って横たわっていた。
久々に台所に立って夕飯を作り、アルコールも入ったせいか、疲れたのだろう。
再び、襖を閉めてテーブルの上の食器を片付けようとした瞬間、
「……帰ったの?」
目を覚ました母が声を掛けてきた。
「うん。
あ……そのまま寝てて。」
「大丈夫よ。
手伝うから。」
「いいって。
久々に早く眠れるんだから、身体休めて。
ほら、布団敷いて。
そのまま寝ると風邪引くから。」
襖越しだからか……
自分でも驚くほど、いつもより優しい言葉をかけていた。
「悪いわね……つばさ。
ありがとう。」
母からかけられた言葉に目頭が熱くなる。
『ありがとう』 だなんて母の口から聞けるとは思わなかった。
母も私と同じように感じたのだろうか。
「こっちこそ……ありがとう。
……今まで。」
小さく呟くと、重ねた食器を手に台所へ向かった。
「さて……やりますか。」
セーターを肘まで引っ張り上げて スポンジを手にし、皿を撫でるように汚れを落としていく。
いつもと同じように丁寧に。
何年も繰り返してきた日課 全てが、明日から母の仕事に戻るのか……
そう思うと、次第に視界が滲んでいく。
「……っく……」
明日から、私がいなくなる……
面と向かって聞けなかったけど、母はどう思っているのだろう。
怖くて、最後まで避けていたけど……
……私は寂しいよ、母さん。
「つばさが宮城に行くだけで、他は何も変わらない。
どんなに遠くに行っても、今までと同じように付き合ってやるから。
お前が携帯持ってなくても、俺がじいさんの家に電話する。
長い休みになれば、会いに行く。
相談事なら、手紙をくれ。
少しの間 会えないからって、親友 やめる訳じゃないだろ?
しっかりしろよ、つばさ。」
背中に置かれた掌でポンポンと軽く叩かれた。
その瞬間、抑えていた感情が涙と共に一気に溢れていく。
「ごめ……っ……」
溢れる涙を手の甲で拭いながら、彼に謝ろうとするが言葉にならない。
「バカつばさ。
俺には遠慮すんな。」
「……うん……あ、りがと……」
それから2分後、住宅街行きのバスがガクちゃんを乗せ、走り去った。
子どものように手を振って見送る私の姿を窓越しに見ていた彼は、泣いているようだった。
強がるからな……ガクちゃんって。
人一倍、情に厚い彼のことだから、泣き虫な私を見て……ずっと我慢していたのかもしれない。
そういうところ、昔から変わらない。
「またね。」
別れ際、彼に呟いた言葉を再び 口にし、一人歩き出す。
歩き慣れたこの道、明日で最後になるのか……
そう思うと、また涙が溢れそうになり、慌てて上を向く。
「あっ……」
視線の先には星空が広がっている。
空気が澄んでいるからだろうか。
「綺麗……」
しばらく言葉もなく、空を見上げて立ち尽くす。
東京の夜空……
これから当分見ることはない。
「また……ね。」
独り言を呟きながら、母の待つアパートへゆっくりと歩き始めた。
「ただいま……」
玄関に入り、後ろ手に鍵を閉めながら 靴を脱ぐ。
いつもなら、お義理でも「お帰り」 くらいの返しがあるはずだが、室内は静まり返っていた。
「母さん?」
部屋はさっき出る前 同様、テーブルには空の土鍋やら食器が並んだまま、そこに母の姿はない。
私は奥の部屋に続く襖をそっと開き、中を覗くと母は毛布一枚被って横たわっていた。
久々に台所に立って夕飯を作り、アルコールも入ったせいか、疲れたのだろう。
再び、襖を閉めてテーブルの上の食器を片付けようとした瞬間、
「……帰ったの?」
目を覚ました母が声を掛けてきた。
「うん。
あ……そのまま寝てて。」
「大丈夫よ。
手伝うから。」
「いいって。
久々に早く眠れるんだから、身体休めて。
ほら、布団敷いて。
そのまま寝ると風邪引くから。」
襖越しだからか……
自分でも驚くほど、いつもより優しい言葉をかけていた。
「悪いわね……つばさ。
ありがとう。」
母からかけられた言葉に目頭が熱くなる。
『ありがとう』 だなんて母の口から聞けるとは思わなかった。
母も私と同じように感じたのだろうか。
「こっちこそ……ありがとう。
……今まで。」
小さく呟くと、重ねた食器を手に台所へ向かった。
「さて……やりますか。」
セーターを肘まで引っ張り上げて スポンジを手にし、皿を撫でるように汚れを落としていく。
いつもと同じように丁寧に。
何年も繰り返してきた日課 全てが、明日から母の仕事に戻るのか……
そう思うと、次第に視界が滲んでいく。
「……っく……」
明日から、私がいなくなる……
面と向かって聞けなかったけど、母はどう思っているのだろう。
怖くて、最後まで避けていたけど……
……私は寂しいよ、母さん。