投げキッスはきみだけに

 そこで露わになる、鯉登の若く鍛えられた艶やかな黒い肌。
 突然のことに顔を真っ赤にする鯉登だが、月島のイケナイ手はさらに服の中へと入り込んでいき、胸を大きく撫でられ、武骨な手のごつごつした感触が皮膚に拡がり、思わず払ってしまおうとするが上手くいかない。
「……つきしま!!」
「こんな格好で男を煽って……自覚してください、自分の魅力を!」
「み、魅力?」
 何を言っているのかよく分からないが、何故か責められている気がする。負けん気の強い鯉登だ。すぐに言い返そうと口を開きかけたところで、ずいっと月島の顔が迫り額と両頬にまず、キスが落とされ、最後に唇に口づけられたことで急に羞恥心が湧いてしまい、反射で月島の顔を手で退けてしまう。
 だが、それで負けるほど月島も月島ではなく、唇を啄むように優しく何度も吸われ、だんだんと夢見心地な気分になってくる。
 この触れ合いこそが、心から求めていた鯉登の願いだ。そう思うと、つい口づけに乗ってしまい、鯉登からも月島の唇を吸ってしまう。
 すると吸い合いになり、ちゅっちゅと水音を立てさせながら二人は互いの唇を吸っていると、月島の手が頬を包み込んでくれ、その温かさについ、笑んでしまう。
 ふっと唇が離れると、今度は見つめ合いになり、柔らかく鯉登は微笑んだ。
「なんだ、月島はそんなに私が好きか」
 その言葉に、月島は顔を真っ赤に染めて顔を背け離れようとするが、鯉登はそんな月島の頬を両手で包み込み、逃げられないようにしてしまう。
「逃げるな。ここで逃げたら男じゃないぞ。私のことが好きかと聞いているんだ。答えろ月島」
 手の中の月島は完全に困り顔で、それでも真剣に見つめていると、とうとう観念したといった柔らかな表情に変わり、頬を包んでいる鯉登の手に被せるように手を重ねてきて、その手をぎゅっと握られる。
「本当に……あなたはどうしようもなく真っ直ぐで困ります。私の気持ちなんて、もう既に知っているでしょう? それをわざわざ言わせるなんて、悪趣味ですよ」
 その言葉に、鯉登は笑ってみせてちょんっと月島の唇へ自身のモノを軽く押し当てる。
「分かってるからこそ言わせたい私の気持ちも考えろ。こういうことはたくさん聞いておいて損は無いからな。私は軍人だ。もしかして万が一の時……お前にもらった言葉を思い出せるようにしておきたいんだ。そしたら、幸せな気分のまま逝けるだろう?」
 そう言ってまた月島の唇を奪うと、握られた手に力が籠められる。
「滅多なことを言わないでください。……あなたは、長生きしなくちゃならない。私のためにも、あなたのためにも家族のためにも。あなたは何でも手に入れている。それをどうか、手放すようなことはしないでくださいね」
 そう言って、自嘲気味に笑う月島だったが、鯉登は首を傾げるばかりだ。今そんな話をしていただろうか。
 思わず上目遣いで月島を見つめてしまうと、その顔はだんだんと柔らかな笑顔を浮かべるようになり、顔が近づいてきたのでゆっくりと眼を閉じると、唇に優しくて湿った感触が拡がる。
 月島の唇だ。見た目に反して柔らかい、大好きな唇。
 鯉登からも積極的に月島の唇を吸っていると、今度は吸い合いになり幾度も唇を吸っては吸われ、そのうちに互いに舌を出し合って唇を舐めたりと、まるで遊んでいるようなキスだが当人同士はかなり真剣に口づけ合っていて、月島のふわふわとした柔らかな舌を食むと歯が気持ちよく、舐めながら時折食んだりして口づけを愉しむ。
 だんだんとそれがエスカレートし、舌同士を絡ませ合い、食み合いそして互いの舌を擦り合わせるようにして舐め、濃厚な口づけになったそれに溺れる鯉登だ。
 月島の舌はぬるついていて、どこか香ばしい味がする。それもまたキスの醍醐味で、こういう時でしか感じられないその魅惑的な味も愉しみつつ、口づけに夢中になる。
 ふとした拍子に唇が解かれ、至近距離での見つめ合いになり、月島の手はさらに着物を脱がせようと動き回っては肌を擦られ、思わず身体を震わせてしまう。
「はっ……は、あっ、つき、しまっ……!」
 上半身に纏っていた着物の腕を抜かれると、とうとう下穿きだけの状態になり、背に畳が当たって少し痛い。
 それがいやで月島の背に腕を回し、上半身を起こして文句を述べる。
「月島、背中が痛いぞ。お前が脱がしたんならお前が何とかしろ」
「せなか……そんなに痛いですか?」
 こくんと頷き、鯉登も月島の軍服に手をかけ脱がせ始める。
「お前も寝転んでみたら分かる。結構痛いぞ。ほら、脱げ脱げ。私はお前の裸が見たい」
 と言いつつも、なかなか脱がせづらいそれに苦戦していると、月島がその手を制して自ら脱いでくれるそれをじっと見つめる。
 月島の裸はもう幾度となく見ているのだが、いつもこの瞬間に感じる胸の高まりはいつも鯉登を興奮させる。男の裸だが、月島の裸だけは何故か、鯉登の心を掴んで離さないのだ。
 ドキドキと心臓を大きく鳴らしながら見つめていると、上半身だけ裸になった月島が覆いかぶさってくる。
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