蜜蜂ノ針


 真っ赤な舌が次第に尾形の体液でてかてかと光る様は見ていてもとても卑猥で、そしてやらしかった。
「んっ……はあっ、あっ……勇作、どのっ……はああっ!!」
「兄様の味がする。美味しい、兄様の助平汁……」
 そのうちに舐めているだけでは物足りなくなったのか、以前尾形が勇作にしたようにこれまた時間をかけてゆっくりと亀頭を口のナカへと招き入れていく。
 そのじれったさたるや相当なもので、際どいところで口から出してしまうし、ぬるんっとカリまで飲み込んだと思ったらすぐに口から出したりと、絶妙の快感ラインで走り続ける勇作をもう止めることはできないと思った。
 尾形としても気持ちイイことには変わりないし、性的快感に飢えまくっていた身体にはこれくらいがちょうどいい。
 この焦らされている感がたまらないのだ。
 商売女は直接的な快感しか与えてこないが、勇作は違う。それが、何故かとても嬉しかった。
 大切にされているのは分かっているが、勇作の場合は次元が違う。商売女に愛もなにも無いが、勇作には愛がある。そして、その愛の深さには限度が無い。尾形はそう想っている。どこまで深く潜っても、勇作は深い愛で包み込んでくれる。
 その愛が、今はとてつもなく愛おしい。
 熱くなった胸を抱えたまま、勇作の頭を撫でると今度こそぬるりっと亀頭だけとは言わず、サオまで飲み込み、ゆっくりとしたストロークが開始される。
 生温かな咥内は唾液でぬるぬるしていて気持ちが良く、思わず腰が浮く。
「ああああっ!! ああっああっ!! ンッ! んっんっんっんっんっ!! あっあっ、やっあっ、ゆ、ゆ、さくどのっ!! 勇作殿っ!!」
 叫ぶように名を呼ぶと、すぐに口からペニスが出され、その代わりに尖らせた舌先で裏筋を辿り始める。
 これもまた悶絶モノの快感で、勝手に腰がビグンビグン跳ね上がってしまう。
「あっあっ!! ゆ、ゆうさく、勇作殿っ、あっあっ!!」
「あにさまは……とてもかわいいですね。かわいい人です。甘い声……もっと聞きたい、蕩けそうな声。兄様の陰茎を舐めるとね、助平な汁がたくさん出てきてくれて……それを舐め取るのが好きです。兄様、いま気持ちイイんだなって、分かる汁だから……」
「ゆうさく、殿……」
「もっと感じて欲しい。兄様に、たくさんイって欲しい。私にそれが、できますか……? いえ、やります。できますか、ではなく兄様がすっごく気持ちよくなるように、全力を尽くします。それが……私の今の幸せなんです」
 その言葉に、胸がぎゅうっと何かで鷲掴まれたような気分になり、何だか涙が滲んでくる。
 どうして勇作はこうなのだろう。
 自分にはない真っ直ぐさを、これ以上なく振りかざしてくる勇作が憎く、そして愛おしい。
 これが愛憎という感情なのか、その二つが激しくせめぎ合い、尾形の中で暴動を引き起こす。
「だったら、してみてください。俺をどこまで乱れさせることができるか、試してみませんか。俺は素直に声を出します。でも……勇作殿次第でしょうか」
 そう言ってわざと妖艶に笑んで見せると、ごぐっと大きく勇作ののどが鳴る。
「小悪魔だっ……兄様はっ」
 そう言い捨てるなり、ぱくっとペニスを早速咥え込み、舌で亀頭を縦横無尽に舐め回してくる。
 言葉でもう既に感じているのに、この刺激はもはや反則だ。感じて仕方がない。
 ぬるぬるしていて生温かく柔らかい舌が亀頭を這い回るたびに、勝手に「あっあっ!!」と声が出てしまう。
「ああっああっ!! あっあっ!! ゆ、ゆ、ゆうさくっ、勇作ッ!! ああっはああああああっ!!」
「助平、あにさま」
 正面から見ずに、横顔を晒して舌でペニスを舐めながらのそのセリフに、一気に身体が熱くなる。本当に一体、何処で覚えてきたのか。こんな煽り方など教えた覚えはない。
 誰かに抱かれたか。それなら納得できるが、勇作がそれを由とするとも思えない。
「はあっはあっ、ゆ、さくどの、どこでそんな真似っ……覚えてきたっ!」
 ともすると嫉妬とも取れる言葉を吐いた自分に驚くが、勇作が誰かに抱かれたと考えるだけで腸が煮えくり返りそうになる。
 だったら自分だって勇作の処女を奪ってもよかったはずだ。童貞に拘るのではなく、処女ならもらい受けることは可能だったはず。
 思わず勇作を鋭い眼光で睨んでしまうと、一瞬ポカンとした勇作だったが、すぐに頬を染めて笑顔になる。
「いえ、兄様といると自然と……何だか助平になってしまうんです。兄様があまりにかわいすぎるから、意地悪したくなってしまって……お気に召しませんか、こんな私は。それとも、嫉妬してくださった?」
 そう言ってまた小さく舌を出して上目遣いで亀頭を舐めてくる。
 その行動と言葉に、尾形は一気に顔に熱が上がるのを感じた。
「お、思い上がりをっ……!!」
「兄様顔真っ赤。……かわいい人ですね、兄様は本当に、かわいい……だから意地悪したくなるのでしょうか。不思議です」
 小首を傾げたと思ったら、急にぱくりっと亀頭すべてを口に含まれてしまい、唇にカリを引っ掛け、一番弱い亀頭をかなり強めに硬くした舌で舐めしゃぶり始め、悶絶の尾形だ。
「ああっ! あっあっあっあっ、んんっ、んんうっ、うああっ、はあっはあっはあっはあっ、ゆ、さく、どのっ!!」
 悔しいし、認めたくないが今までフェラチオされた中で、一番気持ちイイのは群を抜いて勇作だ。以前よりは上達したが、未だそれでも拙いというのに、次から次へと尾形の官能を引き出してきては、快感を与えてくる。
 こんな真似ができるのは今のところ、勇作しかいない。
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