蜜蜂ノ針


 勇作も尾形と同じく息が上がっており、甘い吐息が口に入って来てそれも心地が良く、痺れかけた舌を伸ばして勇作のモノと絡め、ぢゅっと吸うと大量の甘い唾液が口に溢れ、のどを鳴らして飲み下すとふわっと勇作の味が鼻に立ち上って気持ちがイイ。
 すると勇作も同じことをして尾形から唾液を奪い、のどに通している。ごぐっごぐっといったのどの鳴る音がする。
 そして暫く舌を絡め合い、そして擦り付け合ったりして口づけを愉しんでいるとふとした拍子に唇が離れ、鼻が擦り合う至近距離で、二人は熱く見つめ合う。
「兄様、泣いてる……それは、私の所為……?」
「勇作殿だって泣いているでしょう。俺は、歯痒い。何故、俺たちは兄弟なのでしょうね。でなければもっと……」
 言葉に詰まると同時に、訳の分からない涙が溢れてきて、鼻を鳴らすと勇作が鼻に鼻を擦り付けてきて、優しい口づけが施される。
「私も同じことを思ってました。……けれど、私は兄様が兄様であることを否定したくない。兄様だからこそ、私にだけ許された特権というものがあるでしょう? 私は……兄様を否定しない。兄様は、兄様です。わたしの、私だけの兄様です」
「そう、ですか……それを聞いて、安心しました。抱かなくていいから……俺のことを気持ちよく、してくれますか? 勇作殿に、できる? 疼くんです、身体がひどく疼いて……燃えそう」
 そう言って首元を寛げてみせると、まるでけだもののように勇作が鼻を鳴らして顔を突っ込んできて、しきりにかおりを嗅がれる。
 そしてまるで毟り取るように軍服のホックが跳ね上げられ、ボタンも同じく千切り取られるようにして次々に外され、あっという間に半裸を晒してしまい、早速勇作の驚くほど熱い手のひらが肌という肌を犯すように這い回り始める。
 触れた箇所から燃え出しそうに熱を持った手のひらは、尾形の肌を味わうように動き回り、荒い呼吸と共に甘い吐息もつき始め、すっかり愛撫に夢中になっている。
 こんな勇作が見られるのは今のところ、尾形だけ。その優越感が心に満ち溢れ、知らず身を捩ってしまうとごぐっと勇作ののどが鳴る。
「兄様は、すごく助平だ……でも、そういうところも好きです。好き、すき、兄様、あにさまっ……!!」
「んっ、ゆ、さく、どのっ」
 勇作のイケナイ手は、だんだんと尾形の胸を中心に動き回るようになり、胸筋を揉むようにして乳輪を撫でたり、乳首を親指の腹で押してみたりと少しずつ大胆になっていく様に、尾形も興奮を隠せず、自分から胸を突き出すようにして背を反らせてみるとまたしても勇作ののどが大きく上下する。
「悩ましいほどに、助平だ……!! うううっ、ああああ愛おしいっ……!! あにさま、兄様っ……!!」
 とうとう我慢できなくなったのか、勇作の口のナカに乳輪が消え、咥内で乳首と共に舐め回されてしまい、元々性的な刺激に飢えていた尾形には充分過ぎるほどの快感で、思わず声が出る。
「あああああっ!! うっんっ、あっあっ!! はあっはあっ、やっ、気持ちいっ!! ゆ、ゆ、さくっ、勇作っ勇作どのっ!! あ、はあっはあっ、あっああっ!!」
 ぢゅるぢゅると音を立てて吸われ、舐められ、そして乳首をコリコリと痛くない程度に噛まれるともうたまらない。
 今はなにをしても感じてしまうというのに、勇作のこの責めはかなり気持ちが良く、自然と息が荒くなり、胸が激しく上下を始める。
 嫉妬に燃える勇作は美しい。普通は醜いというところだろうが、実際こうして嫉妬されてみると分かる。あの美麗な顔が悲しそうに歪むと思うのだ。
 愛されていると。
 それほどの愛を充分に手に入れた上での愛撫は心地よく、そして気持ちイイ。
 手のやり場に困り、ガリガリと布団を引っ掻くとその手は勇作によって両手とも恋人繋ぎにされ、思わずぎゅうっと握ると同じくらいの力で握り返されてくる。
 その確かな力強さが今は心地が良く、快感から逃れようと必死になって握る。
 相変わらず乳輪も乳首も勇作のいいように愛撫され、あまりに気持ちが良くて腰が勝手に浮き上がる。
 それでも愛撫は止まることなく、寧ろ激しさを増しべろべろに乳輪を舐められ、かといえば丸い乳輪の縁を舌で辿ったり、乳首も思う存分愛される。
 軽くコリコリと勃った乳首を噛まれると勝手に「あっあっ!!」と声が出る。恥ずかしいなどといった感情など持ち合わせてはいないと思ったのに、何故かこの場では羞恥を感じる。
 思わず顔を赤らめると、上目遣いで勇作がこちらを見ておりいやらしく口角を上げ、さらに乳首に刺激を与えるべく、尖らせた舌で突き回したり、まるで遊んでいるかのように尖りを舌で舐め回したりとやりたい放題だ。
 だが、それがたまらなく気持ちがイイ。
 ぜいぜいと荒く息を吐きながら顔を横に向けると、勇作が身体を伸び上がらせてきて頬に口づけられ、反射で正面を向くとそのまま唇に食らいつかれるように唇を奪われてしまい、思い切り吸われたと思ったら、どろっと口のナカに大量の唾液が零れ落ちてきて、吐き出すどころかその甘い液体の心地いい生温さが気持ちよく、ついのどを鳴らして飲み下してしまう。
 すると、のどを鳴らすたびに勇作の甘い味が鼻にふわっふわっと立ち上ってそれも快感に繋がる。
 いつからこんなに色事に長けたのか。自分の教育とはまた別の方向に行っていることを、こういうことをされると感じる。
 どうやら、兄弟揃って助平だというのは本当のようだ。
 尾形は自分が他の人間よりも性欲が強いことは感じていたが、まさか勇作もだとは驚きだ。あの清潔そうな顔をしてからのこの淫乱さ。非常に愛おしく感じる。
 もしかしたら勇作の好きなところを上げると上位に入るかもしれない。自分と似たもの同士がこんなところに居た。
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