待チ焦ガレ
それを誤魔化すように、勇作の唇を少し吸った。
「俺も……すごくイイですよ、勇作殿は上手い。色事はとんとだめかと思ったら、意外と助平なんですね。おきれいなその顔からは想像もつきませんよ。先ほどの接吻だとか……」
そう言ってゆったりと笑うと、かあっと勇作の顔がどす赤くなり、眼に溜まった涙が零れ落ちそうになる。
もはや反射で動き、眼に唇を当てて涙を吸い取るとそれは幸せそうに勇作が笑い、ぎゅっと抱きついてくる。
「あにさまっ……!!」
切羽詰まったような呼び声と共に、さらに力強く抱かれ、ふわんと勇作の優しいかおりが鼻に掠る。
心地いいにおいだ。まるで、勇作の人柄のようなにおい。温かくて、優しくて、そして甘い。
思わず目を閉じて抱擁とかおりに溺れてしまう。
「兄様から、いいにおいがする……」
その勇作の言葉に我に返り、思わず身体を離して押し返そうとするが、それ以上の抱擁にあってしまい、ぎゅうぎゅうとまるで潰さんばかりの勢いで身体を抱きしめてくる。
あまりのその力強さに、何故か感じ入ってしまい尾形からも勇作の背に腕を回してさらに身体を寄せると、すんすんと勇作が鼻を鳴らし、さらに抱きついてくる。
「もっと兄様に触りたい……触れたいです」
「何処に触れたいですか? 胸? 首かそれとも……」
「ぜ、全部。全部です。兄様の全部に触れたい……兄様を、感じたいです」
笑いが止まらない。とうとう本格的に堕ちてきた。これでもう、逃げることはしないだろう。そう高を括り、尾形は身体を起こして上半身に纏っていた服をすべて脱ぎ捨て、ぱさっと布団に沈む。
そしてさらなる押しとして、下穿きのボタンも二つ外し、改めて勇作に向き直る。その後、両手を拡げて笑むと、恐る恐る勇作の手が伸び、その手は尾形の身体と布団の間に入り、抱き寄せられると首の辺りに勇作の顔が埋まり、すうっとかおりを嗅がれたのが分かった。
「あにさま……はあっ、いいのでしょうか。本当にこんなこと……」
未だ言うか。ここまで来て、未だ迷うとは意外だが、その苛つきを抑えて尾形からも勇作の背に腕を回してぎゅうっと抱きつく。
「今さら逃げるのですか。ここまでしておいて、今から帰るとでも? もう引き返せませんよ。ほらココ、触ってみて……」
勇作の背から腕を外し、自分の身体に回っている片手を取って股間へと導くと、その手がビグッと跳ねる。
「すごい、勃ってる……」
「勇作殿はどうなんです? 俺に教えてください」
にまにまと笑いながら片手を勇作の股間へと持って行くと、そこは下穿きの上からでも分かるほどに膨らんでおり、思わずくすっと笑ってしまった。
「勃ってます。勇作殿も男ですね……すごくでっかくなってますよ。これは、かなり立派なモノをお持ちのようで」
「あ、あにさまっ……手、手を、離してくれないと……」
そのままもみもみと股間を揉むと、勇作の身体が細かく戦慄き始める。
「手がどうしました? 気持ちイイ?」
勇作は真っ赤な顔をしてこくこくと頷き、さらに身体を震わせる。
「あ、兄様の……その、股間も触りたい……い、いいですか。私が触っても」
このまま直接いってしまってもいいが、もう少し焦らしたい気持ちが勝り、勇作の軍服に手をかけて脱がし始める。
「まずは、脱ぎましょう。まだまだ朝まで時間があるんです。ゆっくりいきましょうよ。じっくり……時間をかけて」
勇作は戸惑っている風だったが、尾形には関係が無い。どころか、性急な手つきで軍服を脱がせ始めると、勇作の手が動き、自ら脱ぎ始める。
それを、ほくそ笑みながら手伝う尾形だ。
そして二人とも上半身裸になると、まるでそれを尾形以上に待っていたかのような余裕のない勇作がいきなりきつく抱きついて来て、その身体の熱さに驚いてしまう。
熱でもあるのではないか。
それほどまでに勇作の身体は火照っていて、汗でもかいているのか肌がかなりしっとりと潤って、触れ合っている部分が気持ちイイ。
「あ、はあっ、勇作殿……!!」
「あに、あにさまっ、兄様っ……!!」
抱きしめることしか能がないのか、ひたすらにぎゅうぎゅうと力強く抱きしめるだけでまったくその先へ行こうとしない勇作に焦れ、尾形は隣に見える耳に口づけを落とし、耳の中へ舌を挿れると、まるで弾かれたように勇作が顔を上げ、ゆるりと笑んで両手で勇作の頬を包み込む。
「もっと、いろいろして……さっき教えてあげたこと、たくさんしてみて……待てない」
最後の言葉は耳に囁きかけるようにして小声で吹き込むと、途端耳が真っ赤に染まり、尾形自ら近づいて勇作の形のいい唇に口づける。
「んっ……あ、兄様っ……!!」
それを合図のようにして、いきなり積極的に勇作が唇に吸いついてきたと思ったら、角度を変えて何度も唇を啄まれ、だんだんと深くなっていくキスに興奮が隠せない。
尾形も息を荒くして勇作の唇を奪うと、逆に奪い返される勢いで唇を吸われ、そして舐めたくられる。
「んンッ、んっんっ、くすぐったいですよ、勇作殿っ、あっンんっ!!」
そう言って開いた口へ舌が捻じ込まれ、咥内に勇作の柔らかな舌が入り込んでくる。そしてナカをベロッと大きく舐められ、感じたくもないのについ感じてしまい、身体が勝手にぶるっと震えてしまう。