待チ焦ガレ


 どうやら、かなり興奮しているようだ。頭や頬に擦り寄られている重なった肌が熱い。
「ん……兄様っ……!」
「胸、舐めてくれますね? 先ほど俺がしたように」
「舐めたいっ……!!」
 熱の篭った声色でそう言われ、尾形は微笑みながらそっと身体を離し、指の腹で乳首辺りを撫でると、いきなりその手を強く握られ、真っ赤な顔をした勇作が乳輪にむしゃぶりついてくる。
 思い通りにコトが運んでいることが嬉しくて仕方が無く、この先の行為を促すように勇作の頭を優しく撫でると、さらに情熱的に胸を舐められ、そして吸ってくる。
「あ、はあっ、んっんっ、あぁっ……ん、上手です、勇作殿っ……!! はあっ、はあっはあっ、んっ」
「あにさま、兄様っ……!! 兄様のココ、美味しい。不思議な味がします。美味しい、美味しいっ!!」
 口のナカで乳輪ごとしゃぶられ、じわっとした微量の快感が流れ込んでくる。遊女にもソコを舐めたがった女は居たが、こんな感覚だっただろうか。何故か、体温が上がるような感じがする。
 それに、こんなに気持ちがよかっただろうか。勇作の舌が柔らかすぎて、感じ方が違うとかそういったことでもないだろうし、そこまで尾形は考えたが勇作の情熱の塊のような愛撫に、次第に思考が薄ぼんやりとしてくるのが感じられた。
 このまま、身体だけになってしまえと誰かが言う。
「あ、はあっ……んん、勇作、どのッ……あ、あぁっ……!! んっあっ!!」
 指導してもいないのに、いきなり硬く勃った乳首を柔らかく齧られ、勝手に腰が浮いてしまう。そして明らかな快感が胸からぶわっと身体に拡がり、股間がおかしなことになっていくのが感じられる。
 感じてはだめだという自分と、身体だけになって勇作に溺れてしまえという自分が交錯して、頭がおかしくなりそうだ。
 それに加え、勇作の熱の入った愛撫に思考が蕩けていく。蕩けさせられていく。
「は、はあっはあっはっ……んんん、んんっはあっ、ま、待っ、ゆ、さく、どのっ……! あ、待っ……!! んんあっ!!」
 乳首を齧ると尾形が大きめの声を上げることが分かったのか、コリコリと優しく痛くない程度に噛まれた乳首はこれでもかというほどに快感を拾い上げ、尾形を啼かせる。
 気持ちが良すぎる。
 教えてもいないことでこんなに感じるのは屈辱だが、確かに気持ちがイイ。
 その間も勇作の手は尾形の身体を這い回っており、しきりに手のひらで味わうように肌を撫で擦られ、それもまた気持ちがよく、もはや悶絶の尾形だ。
「はああっ!! んあっああっ、ああっあっあっ、やっあっ、ゆ、勇作ッ、勇作殿っ!! ああっあっあああああ!!」
 前戯でこんなに感じてしまうとは予想外もいいところで、勇作は色事に関して飲み込みが良すぎるのか、今度は尖らせた舌先で乳輪の縁を辿ったり乳首を突いてみたりと、やりたい放題のソレだが、気持ちがよくて声が止まってくれない。
「兄様、あにさまの声、すごく興奮するっ……!! イイ声ッ……!! はあっはあっ、兄様、あにさまっ!!」
 喋るたびに勇作の吐息が唾液で濡れた胸に当たって冷えたり温まったりを繰り返し、それも刺激になって、さらに股間が怪しくなってくる。というより、もはや勃っていると言ってもいいだろう。
 屈辱だが、気持ちイイものはどうやったって気持ちがイイのは変わりなく、勇作の舌はさらに大胆になって、胸の中央だったり首だったり鎖骨だったり、肩だったりといろいろな部分を舐めたり口づけたり、そういったことを始めてしまい、ますます感じてしまう尾形だ。
 勇作の愛撫などで感じたくないのに、身体はそうは言っていない。どころか与えられる快感をしっかり受け止めようと勝手に身体が開く感覚までする。
 素直じゃないのは尾形の思考だけで、身体はしっかりと感じ取っているのだ。気持ちイイと。誰だって快感には弱い。特に、尾形は感じやすい身体を持っているのか性的な快感に弱いことは確かだ。それは認めるが、こんなところで発揮されなくてもいい。そうは思っても、感じるものは感じる。
 くっと唇を噛むと、すぐに勇作がそれを追って口づけてきて、驚いているとこれ以上なく優しく吸われ、ちゅっと音を立てて離れていく。その形のいい唇を見ていると、笑みの形に変わる。
「唇噛んだら、切れてしまいます。兄様が痛い思いをするのはいやです。だから、噛まないで声、出してください」
 そしてもう一度口づけられる。それはかなり濃厚なもので、勝手に気分が昂ってくる。
 口のナカを大きく舐め上げられ、生温かくぬるつく舌が咥内を縦横無尽に動き回り、さらに官能が引き出されてくるようだ。
「んっ、んむっ……んは、はあっはあっ、あっ……!!」
 ごくごく柔らかく舌を食まれ、突然の刺激に身体が勝手にビグッと跳ねてしまい、後じんわりとした少しの食むという行為のスパイスが快感として口から立ち上って来て、思わず熱い吐息をついてしまうと、勇作はそれに気を良くしたのかしきりに舌を食み始め、痛くもなく絶妙な食み加減のそれは尾形に大いなる快感を運んできて、つい背中に腕を回してしまいガリガリと背を引っ掻くと、勇作がかすかに笑ったようだった。
 その余裕が気に食わない。
 何とか反撃に打って出ようとするが、また今度は少し力を入れて舌を食まれ、あっという間に返り討ちに遭い、舌を絡め取られて舐められ、そこでもまた緩く食まれてしまい、咥内から快感という快感が湧き上がってくる。
「はあっ……あにさま……気持ちイイ」
 唇を合わせながらそう言われ、眼の前の勇作を見ると眼は潤み、頬を真っ赤にして少し汗をかいているようだ。その色気たっぷりの表情と雰囲気に、ついのどを鳴らしてしまう。
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