待チ焦ガレ
ついうっとりと感じ入ってしまい、互いに角度を変えて柔らかな口づけを愉しむ。キスは深ければいいというものではなかったと、知らされた気分だ。このままでも充分に気持ちがイイし満たされる。
そこでふと、自分の気持ちに微量の変化が起こっていることに気づいた。満たされるとは一体、なんだろうか。
他の人間では埋められなかった尾形の心に空いた穴が、勇作では塞げるということなのか。
少なからずその事実に動揺し、唇を放そうとするが勇作がそれを許してはくれず、今度こそ咥内に舌が入り込んでくる。
その思考ごと奪う勢いで口のナカを舐めたくられ、上顎のざらざらした部分を舌で擦られ、思わず身体が快感でぶるっと震えてしまう。
「んっ、ンんっ、んんんっ、は、あっ……んむ、ゆ、さく、どのっ……!」
「はあっ……あにさま」
互いに名を呼び合うと、さらに口づけは激しさを増し、尾形からも舌を伸ばして勇作の舌を絡め取ると逆に絡め取られてしまい、ぢゅっと音を立てて唾液が持っていかれてしまう。
ごぐっごぐっと男らしく動く勇作ののど。
そしてさらに舌に舌を擦りつけられ、べろべろに舐められてしまい、角度を変えてまた舌を舐めてくる。果ては、柔く舌に噛みついてきたりもして、口づけで尾形を責め立ててくる。
悔しいが、とんでもなく気持ちがイイ。快感で頭の芯がぼーっとしてくるようだ。
またそれも許さないとばかりに、今度は緩急つけて舌を食まれ、痛いほどに噛まれたと思ったら噛んだ部分を丁寧に舐め、謝っているように柔らかく舌を食み、またきつく噛む。
それを交互に繰り返されるとだんだんとクセになり、快感がさらに増す。口のナカが感じて仕方がない。すっかり、咥内を性感帯に変えられてしまったかのようだ。
だがそれも、勇作だから許せることだと気づき、複雑な気持ちになって、それから逃れたく思い口づけを解こうとするが許されず、さらに勇作の舌技が炸裂する。
つい先ほど初めて濃厚なキスを交わしたとは思えない飲み込みの速さで尾形を翻弄してくる勇作に、少しの恐れすら感じてしまう。
このままペニスを舐められれば、一体どうなってしまうのか。
期待と、後は少しの不安が過ぎる。感じすぎるのが怖い。勇作の前ではしたなく乱れてしまいそうで、それにも抵抗があるが、きっと勇作はそんなことを気にせず愛してくれるだろう。
妙な確信を感じながら未だ続くディープな口づけに溺れているとふっと、唇が離れ、また額に勇作の額が当たる。
「は、はあっ、はあっはあっ、んっ、はあっゆう、さく、どの……」
「はあっは、はあっ、あにさま……愛しい兄様……かわいくて愛おしい、私の兄様」
甘い吐息が顔に触れ、くすぐったくてつい笑んでしまうと頬に添えられた両手が動き、やわやわとマッサージするように撫で擦ってくる。
「んっんっ、ちょ、ゆう、勇作殿っ」
「兄様は世界一かわいい。私は兄様よりかわいい人を知らない。そんな兄様がこうして私に身体を開いてくれて……とても嬉しく思ってます。愛おしい……兄様」
またしても言葉が出ない。
成人男性に対し、しかも自分の兄に対してかわいいという言葉をまさか、使うとは思ってもみなかった。
勇作は何処か少しおかしいのではないか。しかし本人は至って本気のようだし、そう言われて少しくらいはいい気分になってもいいだろう。何しろあの『勇作殿』の特別なのだ。その特別の地位を独占しているという優越感が尾形の気を大きくさせる。
「勇作殿、身体が疼きます。早く愛して欲しい……できますね? 先ほど教えたとおりに……」
「はいっ、兄様が満足してくださるまで、奉仕します。それが、私の悦びです。無防備な兄様はとても、かわいらしいので好きです。好きなんです、兄様」
「そうですか。……では、ふんどしを解きますね」
勇作が少し身体を離したのでふんどしに手をかけると、その手は勇作によって制されてしまい、額に一つ、口づけが落とされそして唇にもキスされると、嬉しそうに頬を染めて笑んで見せてくる。
「兄様は、そのままでいてください。私にさせてください。兄様の何もかもは、私がしたい」
「おねがいします。……しかし、勇作殿は本当に……」
「はい?」
「いいえ、なんでもありません。続けてください」
危うく余計なことを言うところだった。まさか「本当に俺のことが好きなんですね」なんて言ってしまったらどんな答えが返ってくることか分かったものじゃない。
下手なことを言われ、これ以上情が移るのは危険だ。
心を無にするつもりで勇作の行動を見ていると、すぐにでもふんどしを脱がすかと思いきや、先ほどと同じくふんどしの上からペニスをいきなり食まれ、結構力の入ったそれに未知の刺激が加わって変な声が出てしまう。
「うあっ!! はんあああっ!! ああっ、あうっ、うああああっ!!」
「はあっはあっ、はあっ、はっ、あにさま、兄様っ……!! 助平なにおいがする、すごく、助平なにおい……!!」
その言葉に、顔に熱が集まってくる。いちいち報告などしなくてもいいのに、何故羞恥を煽るようなことを言うのか。
「す、助平なのは勇作殿でしょう……!!」
「それでも構いません。兄様が、私に向かって身体を開いてくださるならもう、なんだっていい……!!」
そのまま食み続け、悶えるところまで行ったところで漸くふんどしに手がかかり、ゆっくりと焦らすように解かれていくその様はどうにも恥ずかしい。
こういったことなど、誰にも教わっていないはずなのだが、勇作はかなり飲み込みがいい。というより、良すぎる。