待チ焦ガレ


 これで一気に勇作の余裕がなくなるはず。元々、余裕はなさそうだが追い詰めるには充分な刺激と言えるだろう。
 尾形の読みは当たり、勇作の顔が赤いを通り越してどす黒くなり、必死にイクのを我慢しているような苦しげな表情の中にも、快感による恍惚としたものも混じり、何とも色気のある顔をして口は半開き、まるで艶の塊だ。
「んんっ、んっんっんっんっ、んぐ、んっく、ふっく、んぐんぐ、んはあっ!」
 ひたすらのど奥で亀頭を潰してやる。するとのどの奥にカウパー液が流れ込み、あまりの苦しさに思わず口を放そうとするが、上手くいかず無理やり飲み下すとそれも刺激になるのか、勇作の身体がビグビグと跳ね上がり、足が意味なくバタバタと動く。
「はあっ! はあっはあっ、ああっあっ!! 兄様、あにさまっ!! うあっあっあっ!!」
 これはもうすぐ根を上げるか。最後は、高速のストロークでキメる。
 頭を上下に激しく動かし、口元が汚れるのも厭わずにひたすらに唾液を溜めた咥内で滑りを良くした上で、ぬるぬるとサオを撫でるように窄めた口を使い、出し挿れを繰り返す。
「んぶ、んっぶ、んくんく、ふっふっふっふっ、はあっはあっはあっはあっ、んっく、んぶんぶっ!!」
 必死になって追い詰めにかかると、まるでそれに応えるように勇作が喘ぎ出し、とうとう禁断の言葉を口にした。
「い、い、イクッ……!! ああっああっ、兄様イクッ!! イキそうっ……!! だめですっ!! ああっ、あああああああ!! い、イクッ!!」
 禁句が出たことだ。尾形は余裕の表情でずるずると口からペニスを取り出し、手首で濡れた口元を拭う。
「はあっはあっ、あ、あ……? あにさま……?」
「勇作殿だけ気持ちよくなるのはズルいでしょう? 俺のチンポ、触ってみたかったんですよね、勇作殿は。嬉しそうにふんどし越しに噛んでいたじゃないですか。口淫の仕方は先ほど教えたとおりです。……できますか? というより、したいかと聞いた方がよろしいか」
 そう言って身体を起こしたところだった。いきなり勇作が覆いかぶさってきて、腹回りに抱きつかれ、荒い呼吸を吐きながら擦り寄ってくる。
「あにさま、兄様っ……!! はあっはあっ、兄様の陰茎に触りたい。舐めたい。愛してあげたいっ……!! 許して、もらえるんですか」
「優しく、接吻してくれたら」
 何故自分でもそんなことを言い出したのか分からないが、どうしても感じている勇作とキスがしたいと思ってしまったのだ。
「接吻……しても? いいならっ、兄様っ……!!」
 さらに抱きつかれ、後ろに手をついて倒れないようバランスを取っていたが、とうとう勇作の重さに負け、どさっと布団の上に転がされるとずいっと勇作が迫り、両手で頬を包み込まれる。
 その手のひらの熱さに驚く尾形だ。これは、かなり熱持っている。そういえば、舐めていたペニスも熱かった。アレは熱いものだが、勇作のモノは特に熱かったように思う。
 その熱さに蕩かされるよう、近づいてくる美麗な顔を眼を細めて見つめ、唇が降ってくるのを待つ。
 ここまで、やっと堕ちてきてくれた。これで自分がイって、そして勇作をイかせれば後はなし崩し的に童貞が奪えるはず。
 その目論見は後で考えるとして、今は今で愉しみたい気分の方が勝ち、尾形からも勇作の頬に手を伸ばして包み込むと、あまりにすべすべした肌はしっとりと潤ってもいてかなり触り心地がいいことに今さらながら気づき、親指の腹ですりすりと撫でると、少しくすぐったそうな顔をした後、幸せそうに笑みながら顔を近づけてくる。
「眼、瞑らないのですか……? ちょっとその、は、恥ずかしいです……」
「ずっと、勇作殿を見ていたいのです」
 甘い雰囲気づくりも大切だ。
 すると勇作はかなりその言葉が嬉しかったようで、頬を真っ赤に染めながら照れたように笑い、額と額を合わせてくる。
「あにさま……愛おしい、私の兄様……」
 今、勇作はなんと言ったのか。愛おしいと言わなかったか。
 驚きで声が出ない尾形を放り、勇作はさらに額をごりごりと擦り付けてきて甘い吐息をついた。
「あにさま……兄様、あにさま……!!」
 ものすごい熱量で名を呼ばれ、勝手に顔と身体が熱くなってくる。こんな風になったのは初めてで、いま自分がどんな気持ちを抱いているかすらも分からない。
 ただただ、心臓の鼓動が早く打ち、それが勇作にどうか聞こえないようにと願うだけだ。
「ゆ、ゆうさく、どの……」
「愛しい……あにさま、兄様……!!」
 大きな手のひらで頬を擦られ、ますます身体が熱くなる。
 勇作の目尻には何故か涙が溜まっていて、思わず親指を伸ばしてそれを拭うと、それは幸せそうな笑顔を見せ、そのあまりの美麗さに言葉を失ってしまう。
「……あにさま?」
「え、ああ。いえ、なんでも……」
「兄様の顔、真っ赤……かわいい。兄様のそんな顔、初めて見ました。……すごく、何ていうか……兄様はかわいいのですね」
「は……? 俺が、かわいい……?」
 まず最初に湧いたのは怒りだったが、すぐに羞恥心が襲い掛かって来てつい俯こうとしてしまうが、さらに勇作の額が強く押し当たることで阻止されてしまい、眼の前で勇作が幸せそうに笑う。
 じわっと、心に何か温かなものが拡がっていく。それが何なのか分からないまま、尾形は自分から勇作に口づけていた。
 唇にふわっと優しい感触が拡がる。次いで、甘い味を感じそれが気持ちよくてちゅっ……と音を立てて唇を啄むと、すぐに勇作が応戦してきて唇を吸われてしまい、ほぼ同時に眼を閉じ、唇に感じる温かくて優しい口づけに溺れる。
 こんなに他人を深く感じる口づけなど、今までの経験ではないことだ。必要ないと思っていた。ただ、キスしたという事実があればいい程度だったものが、こんなに気持ちイイとは知らなかった。
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