All love forgotten


 そこに微量の快感を感じ取ってしまい、慌てて制止の言葉を吐くが、彼は笑うばかりだ。
「ま、待て月島! それはっ、そんなことをお前がっ……」
「なんです、咥えられるのは初めてですか? こうして欲しかったんでしょう? 寧ろ、こうされたかったのでは? だから私を茶屋へと誘ったのでしょう。今さら……逃げるなんてそんなこと……許されると思いますか。だからいけないと言ったのに、あなたが守らないから……私に、手なんて出すから」
 そう言ってさらにすりすりと股間を撫でられ、布切れ一枚越しの手による刺激にぐんぐんと自身が勃ってくるのが分かる。
 ふんどしを締めているわけではなく、洋風の下着なので見れば一目瞭然で激しく反応しているのが彼には丸わかりだ。
 それが恥ずかしく、そして自分がやけにやらしい生き物のように思え、彼の手を振り払うがそれでもしつこく、布地の上から撫で擦ってくるその手に、やけに反応してしまう。
「はっ、あっ……ん、つきしまっ、だめだ。手を離せ。……離してくれないと」
「なんです? 襲ってしまいそう? 男同士には手順がありますからね。それを踏んでもらわないと……けれど、止しましょうか。あなたには未だ早いようだから……これで」
「これ……? これとは何だ。なんなのだ、さっきからお前はっ……!」
「あなたがしたかったことをしてあげているのですよ。こうして欲しかったのでしょう? そして、こうされたかった。違いますか。それとも、私にしたかった? 助平なこと、たくさん……こうして」
 そういった口で、西洋風の下着を口で咥え、ずるっと引き摺り下ろされてしまい、勃ったアレが引っ掛かってびいんっと勢いよく飛び出てきたそれは月島の顔を打ち、恥ずかしい汁が愛しい顔に飛ぶ。
「つきっ、しまっ!! 止せっ!! 止めてくれそんな、そんなことっ」
「あなたが悪いんです、私をソノ気にさせるから。だめだと言ったのに、迫るからっ……!! 全部、あなたの所為ですよ。ん、助平なにおいがする……」
 咄嗟に止めようと思ったが、その前に私のアレの先端に彼の舌が乗り、滲んだ体液を丁寧に舐め取られ、舌が離れていくと先端と彼の舌が糸を引き、ぺちゃっと音を立てて彼が唇を舐めた。
「きらいじゃないです、あなたの味……すごく、やらしい味がしますね。とっても、官能的な味がします」
「や、止めっ……止めてくれ月島、おねがいだっ……!」
 あまりにも卑猥すぎて、見ていられずせめて顔だけでも背けて、眼だけで月島を見て懇願したが、聞き入れられず、さらに先ほどの刺激でじゅわっと溢れ出してきた私の体液を、愛おしそうに舌先を使って舐められ、初めて与えられたあまりの快感に腰が震える。
「そんな期待の篭った眼で言われても説得力ありませんよ。……気持ちイイのでしょう? 鯉登少尉殿は。私にこうされて、嬉しいはず。言ってください、イイと一言。言えば……もっとイイコトして差し上げます。……言って、イイと」
 ごぐっと勝手にのどが上下して、思わず生唾を飲み込んでしまう。
「はあっはあっ、い、い、イイッ……イイ、から……ん、もっと……はあっ、もっと」
「イイコは好きですよ、鯉登少尉殿。あなたはとても、イイコですからね。ココまで来てくれると思ってました」
「こ、ココ……?」
「そう、ココです。この場所……身体しかない、身体だけにあるための時間を共に過ごす、それがココです。この茶屋なんです。あなたとココへ来るとは思いませんでしたけど。私を、あんな眼で見るからっ……!!」
「つきし……まっ!! あうぅっ!! うあぁっ!!」
 名をきちんと呼びたかったが、それは私のアレの先端をすべて口に含まれてしまったことで掻き消され、出したくもない恥ずかしい声がのどの奥から飛び出してくる。
 熱い咥内はぬるぬるしていてひどく気持ちがよく、初めての快感に声すら抑えられない。
「は、ああっ……や、待っ、待って、待ってくれっ……! うぁっ!! や、あっ……!! ああっああっ、つ、つきしま!!」
 彼は亀頭を中心にカリに唇を引っ掛けて容易に外れないようにして、その上で縦横無尽に舌を使って舐めしゃぶってきて、そのあからさまな快感にもはや声を出すしかない。
「はあっ、は、は、は、はああっ!!! んっ、うっ、ああっ!! うああっ!! はあっはあっ、つき、つきしまっ……!!」
「随分とイイ声出ますね。そんなに私の口はイイですか。助平な人……でも、きらいじゃないです。好きです、助平な人……」
「す、好き……? 好きって、月島」
 だが月島は返事をせず、さらに亀頭を刺激してきた。のど奥までぐぶっと音を立ててアレを飲み込み、苦しそうな表情をしながらもどこか笑っているようでいて、その表情に見惚れていると、いきなりのど奥の狭いところで亀頭を上顎と舌で押し潰してきて、あまりの快感についイってしまいそうになる。
 腰が勝手にビグンッと跳ね上がり、意識せずとも勝手に身体が震えてしまう。
「はああっ、はあっはあっはあっはあっ、あ、はっはっはっはっ、んんっ、んはあっ……!! だ、だめだ月島、イキそうっ……!!」
 それでも月島は離そうとせず、さらに責め立ててくる。先ほどと同じく、のど奥で亀頭が潰され、そのたびに身体を跳ねさせてしまって恥ずかしいことこの上ない。
 これが、私の望んでいたことなのか?
 ふと我に返り、股座に顔を突っ込んでいる月島を見つめながら、苦しそうにしている彼の顔を見つめる。
 こんなことを、私は望んだか?
 こんなにつらそうにして、男のアレを咥えさせることが私の望みだった? 違うだろう、それは違う。
 そんなこと、望んでいない。
 してほしいことは確かにたくさんあったが、私は彼を苦しめたいわけじゃなくて、ただ……ただ、なんだろうか。
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