デキる月島は今日も憂鬱~金曜日の夜編~
そのうちにだんだんと、唇の吸い合いから舌同士をちょんちょんと遊んでいるみたいに触れ合わせてはまた唇を吸うという口づけに発展し、彼の舌はやはり身体同様に熱く、まるで焼けた生肉のような、意味合いとしてはおかしいがそんな表現がぴったりくるような、そんな感触がして、ヨダレでぬるついた舌先を小さく食むと、彼も食み返してきて今度は食み合いになった。
けれどただ食むだけではなく、食んだ後は丁寧にその凹凸を舐め、きついものを施しては優しく舐めるという飴と鞭のようなキスを味わう。
彼は相変わらずキスは下手くそだが、それでも相手が音之進さんというだけでもう既に、充分な興奮材料だ。
彼は舌も甘く、じっとりとしたその甘さは俺の思考をトロトロと蕩かしていく。
片手を彼の後頭部へと回し、ぐいと引き寄せるとさらに唇が強く押し当たり、甘い味も強くなる。
「んっ……ん、んン、ふっはあっ……は、は、あっんむ、つき、し、まっ……んんっンッ!」
さらに声が甘くなった。そして、艶っぽくもあるそれに興奮し、強く舌を噛んでしまい、慌てて凹凸を尖らせた舌で舐めると、その舌を絡め取るように不器用に彼の舌が動いたのでそれに乗るようにして、自分から積極的に舌を絡め、彼の舌を蹂躙してやる勢いで舌を動かす。
手にさらさらとした髪が絡まり、優しく撫でながら激しいキスを繰り出すと、彼の身体が小刻みに震え出した。
それを無視し、さらに手で後頭部を引き寄せ、咥内を深く探るように舌を動かしてナカをべろべろに舐め、そこでも舌を噛んだし舐めたし、上顎も丁寧に時間をかけてじっくりとしゃぶり、頬の裏側に舌の下まで舐め尽くして最後の仕上げとして舌をかなりきつく噛み、できた凹凸を丁寧に舌先で慰めてから口を離すと、そこには眼に大量の涙を溜めた音之進さんが甘い息をしきりに吐きながら唇をヨダレで光らせていて、思わずのどがごぐっと鳴ってしまう。
もはやそのままの勢いで両肩を掴み、乱暴にベッドに押し付けるとスプリングが大きく軋んだ。それも無視し、本能の赴くがまま首元に顔を埋め、すんすんとにおいを嗅ぐと、ボディーソープと彼のにおいの混じった所謂、チンポに響くような甘くていいにおいがして、必死になって鼻を鳴らし、舌を使って首筋を下から上へと何度も舐め上げる。
すると、舌にも甘い味が拡がって心地よく、自分の味になるまでしゃぶり続けると、ぐすっと鼻が鳴った音がしてふと、我に返った。
そろりと顔を上げると、音之進さんは泣いていて、唇が細かく震えている。
「お、音之進さん……?」
「つ……つきしまが、怖い。怖い月島に、なってしまった……私の好きな月島は、何処に行った……返せ」
ああ、あれか……初速が遅いってヤツかこれが。しまったな……どうフォローを入れていいものか迷う。
素直に謝るべきか、強引に先へ進めるべきか。そうすればいずれ彼の理性は飛ぶだろうし、俺も謝らなくて済む。
だが、かといってこのまま進めるのも気が引ける。
俺は、前者を選ぶことにした。
今から気持ちイイことをするのに、怖がらせるなんて以ての外だ。こういう時は、優しく謝るに限る。
未だ細かく震えながら涙を零す彼のほっぺたにキスを落とすと、いやがって首を振られるが諦めず、何度も額や唇に軽い口づけを落とすと、漸く身体が解れてきたらしい。
大きく吐息をついた彼が腕を上げたと思ったら、ぽこんと拳で軽く頭を叩かれた。
「怖いぞ、月島ぁ。もう、こんなことするんなら止める。私は寝てしまうぞ。それでもいいのかお前は。何か言ってみろっ」
「……ごめんなさい」
「ん、よろしい。それは、ちゃんと心の底からの謝罪だな? そう取っていいんだな? だったら、優しくしろ。精一杯優しく、抱いて欲しい……抱くなら、そうしてくれると嬉しい……相手が月島なんだ。だからこそ、優しくして欲しいと思う私の気持ちも分かれ!」
「はい、ごめんなさい。……本当に、済まなく思っています」
真正面からそうやって眼を見つめて謝ると、ゆるっと彼の表情が緩み、途端に甘いものへと変化し、その両腕は俺の首に引っかかった。
「優しい、キスが欲しい。奪うようなアレじゃなくて……もっと、包み込んでくれるような、そんなキスがいい。月島には、そういうキスが似合う」
まいった。これにはまいったぞ。この人の言うことはなにか、言われぬ重みがある。そして、説得力もあれば言葉の端にこってりした甘さもあってこれは……もはや降参するしかないじゃないか。
両手で彼の頬に触れ、そっと包み込んで親指の腹で撫でると、すりっと右手に擦り寄ってきて、あまりあるそのかわいさに理性が飛びそうになるが、なんとか堪え、彼が落ち着くまですべすべの肌を親指で撫で続ける。
そしてそっと顔を近づけ、ゆっくりと唇を彼のソレに押しつけるだけ押しつけてそっと離すことを、何度も繰り返す。
するすると手を耳の方へと持っていって親指を耳の中へと入れてくしゅくしゅと掻き混ぜると、彼の身体がぶるっと震え、ぎゅっと硬く目を瞑ってしまった。
「怖い、ですか? 耳、止めたほうがいい?」
「んっ、違っ……き、気持ちイイから困ってる。はあっ……身体が、熱い。ビールの所為だ」
「本当に、ビールの所為だけでしょうか。それにしては、身体が熱すぎます。ビールの所為は良くない。欲情、しているんでしょう? いや、違うな。発情してますよね」
すると彼の顔がカッと赤くなり、慌てて口元を手で隠してしまうが、それを退けて手をベッドへと縫い留め、またキスを施した後、彼の首に顔を突っ込んだ。
目の前には、男らしい大きな喉仏の姿がある。口を開け、思い切ってその出っ張りを食むと、彼の身体がビグッと跳ね「あっ……!!」と声を出し、彼の体温が上がったのが確実に分かった。
触れている手が、じわっと熱持ったのだ。